(当初投稿、2023年7月)
都心に用事があって、東京駅で下車した。以前から東京駅には大正10年、当時の首相、原敬(はら たかし)が暗殺された現場にその印があると聞いていたが見たことはなかった。良い機会なので是非見てみたいと思い、探してみた。
場所は丸の内側の南口改札を出た駅舎の中、右側の壁に「原首相遭難現場」のプレートがあり、そこに遭難の事実関係が記載され、その下の床に小さい丸い輪に6角形の印が入っているマークが埋め込まれていた。あまりに小さいので驚いた。
このプレートの説明を読むと、ただ事実関係が書いてあるだけで、暗殺された首相を悼む言葉は無く、逆に犯人の言い分が書いてある。ことの重大性に鑑み、事実関係を忘れないためにつくったものなのか。これをつくったのは当時の国鉄であろう。同じ東京駅の構内には浜口雄幸首相の遭難現場もあり、原敬と同様なプレートと小さい印があるそうだが、こちらは時間が無かったので見られなかった。
さて、7月8日は安倍元首相の一周忌であった。奈良市は事件現場に慰霊碑を建立しようと検討したが「事件を思い出したくない」「税金を使いたくない」などの声が出たため断念した。「事件を思い出したくない」という理由が通るなら、広島や長崎の平和記念館、東日本大震災の慰霊碑なども残せなくなるのでは。
同じ日のある新聞の社説は、卑劣な行為を非難してるが、大部分が安倍氏や岸田首相の政治手法への批判で、「分断に満ちた荒々しい政治」とした。この死者をも批判する新聞が「分断」を生み出しているのではないか。非業の死を遂げた故人の命日には、故人を悼み、功績を称え、批判は最小限にする良識あるメディアであってほしい。
(2023/9/19 追記)
東京駅で下車する機会があったので、前から見たいと思っていた浜口雄幸首相の暗殺現場を確認してきた。
場所は駅構内の新幹線中央改札口のすぐ前にある。暗殺現場は地上のホームの上だが、直下の新幹線中央改札口近くの柱に事件の概要を記したプレートと、床にマークが設置されている。
この場所は今まで何回も通ったところであるが、このプレートやマークに全く気づかなかったのは恥ずかしい。
原敬の時も感じたのだが、事件の概要を記載したプレートには暗殺犯の犯行動機が書かれている。そんなことを書く必要があるのだろうか。しかも浜口首相の場合には「・・・といわれている」と犯人が本当にそう言ったのかも不明確な書き方である。存命中の偉業は書かず、暗殺犯の言い分は書く、というのは不適切ではないか。