(承前)
山口氏の作品を鑑賞して大いに感心したが、違和感を覚えたものもある。
例えば、「当世壁の落書き 五輪パラ輪」という作品だ。これは2020東京オリンピック・パラリンピックのポスター制作を国から依頼されたとき、引き受けるべきか断るべきか、氏の心の葛藤をメモしたものだ。オリパラの政治利用に協力したと言われたくないようだ。
国から依頼された仕事をするのが画家の立場を危うくすると思っているようだが、そのような考えを持っているなら断るべきでしょう。引受けておいてこのような言い訳がましいことを展示することの方が画家の評価を下げるでしょう。
また、愛知トリエンナーレについて、「平和の少女像」をめぐって悪質な曲解による妨害等相次ぐ、などのメモが展示されている。慰安婦像を少女像と言い、昭和天皇の写真を焼いて足で踏みつけるビデオを流してそれらが芸術として展示された。これは芸術の政治利用ではないのか。
さて、同時開催の展覧会は「創造の現場、映画と写真による芸術家の記録」と「石橋財団コレクション選」だ。これらも全部観て歩いたが、鑑賞時間は2時間になり疲れた。1,200円でここまで見せてくれるのだから有難い。が、全部ゆっくり観ていたら1日つぶれるでしょうが、それも現実的ではないだろう。当日券は1日の中で入退場自由にしてくれたら、昼食を挟んで午前と午後に分けて観られるのだが。
1,200円で十分楽しめた展覧会であった。
(完)