3月10日 東京大空襲に我が家の家族五人が遭遇し、我が家も喪失してしまいました。
近所の人々は、ほとんどは親戚などに疎開していて、ほとんど居ません。
我が家は、焼け跡の端の空家に荷物を入れて仮住まいにしています。
前回にこんな書き出しで記事が始まり、最後のほうの記事では焼け跡整理で半焼した家屋の取り壊しを頼まれ。
壊した材木やトタン類を我が家の近くに運んで整理し、材木から抜いた釘類をバケツにまとめておきました。
或る日、雨がふりました。
私が「今日はゆっくり休めるなと思っていたら、親父から声がかかりました。」
親父「おい、釘などの小物を入れたバケツを、玄関の土間に持って来い。」と言う。
前回は、ここで終わっていますが、今回はこの話の続きです。
私 「このバケツでしよ。」と親父に見せますと。
親父「このバケツの中の釘を再生するのだ。」と言う。
「今日は、これがお前の仕事だぞ。」「一生懸命やれよ。」
私 「どんな風に、やればいいのかよ。」半分不貞腐れて親父に突っかかる。
親父「見本を見せるから、よく見ていろ。」と言うと。
土間に、15センチほどのレールの切れ端を土間に置いて、その上にバケツから数本の曲がった釘を取り出して、くの字に曲がった釘をレールの上に乗せてカナヅチで叩いて、直線になるように数回叩きます。
なるほど見事に、これなら使えるなと思われる「釘」に再生されています。
親父「今日のお前の仕事だ。」「バケツの中の釘を全部再生し、始末しておけ。」
私 「今日全部やるの。」
2時間ほどして、親父が進み具合を見に来た。
親父「どうした。どの位始末できたか見せろ。」
私 「バケツの1/3程度かな。」
親父「どれどれ、残っている釘のバケツと、整理始末したものを見せろ。」
「まあまあか。もう少し急いでやれよ。」「まだ、これからも壊す家があるので、早く始末しないと間に合わなくなるぞ。」
「では、出来たのをみせろ。」
「おい、始末した釘はな。」「大・中・小に入れ物を用意して置いて、振り分けて置かなければ。いざ、使う段になった時に困るだろ。」
「仕事というのは、その先々を考えながらやるものなのだぞ。」
「もう一つ、釘を再生するときにはな。」「大きい釘と、小さい釘の時では、叩くカナヅチを変えろ。」
「小さい釘には、カナヅチも小さいものを使い。大きい釘の時には大きめのカナヅチにする。」
「こう使い分けすることで、仕事も速くなるし、出来上がりも綺麗に出来るのだ。」
「よく考えながら何事もやること。」「いいな。」
私 「親父に威張られても仕方ないか。」なるほどと思い、感心する。
このような、家屋の取り壊しと、その整理作業が数日続きます。
親父「今日は、水道の水が吹き出しているところで、水止めをするからな。」
「ツルハシとゲンノウ(かなづち)とスコップを持って、付いて来い。」
と私に声を掛けて、親父は焼け跡の中に踏み込みました。
親父「これは酷いな。道一杯に焼け後の残骸が散らばっていて、素直に歩けないぞ」
「先ず、大きな焼け跡の、ものを道の上から、脇に寄せて歩けるところを作れ。」
「先に、水を止めてから、多少通れるように道路整理をしなければ仕方が無いな。」
やっと、水道が壊れて吹き出している場所に辿り着きます。
親父「ツルハシを貸せ。」と言って、水が吹き出している水道管の周りを少し深く掘り進み、水道管をツルハシとスコップで露わにしました。
「このようにやるのだぞ。といいながら水道管の下側にツルハシの元側の太い所を入れて、水道管をゲンノウ(かなづち)で叩き潰します。」
「やがて、水がふきだしていたものが、静かになりとまりました。」
私 「なるほどな。」
「なぜ、水道管を叩いて潰すと水がとまるの??。と」親父に聞く。
親父「この時期の家庭に引き込まれている、水道管はな。」
「鉛管(えんかん)と言って、鉛の管で出来ているからな。」
「鉛の管を叩いて潰すことで、とりあえずの水は止まるのだ。」
「完全にとめるには、バーナーの火を使う必要がある。しかし、私はその技術と、道具を持っていないのでな。」
「ここまでだ。」
さあ、帰るか。
親父「しかし、此処に来る途中で、まだ壊れた家屋が燃え燻ぶっているところが、数箇所あったな。」
「あれが火元になってまた大火事になると困るので、火元を掘り起こして火を消してしまわなければ仕方ないぞ。」とぶつぶつ行っている。
親父「誰に頼まれなくとも、整理する。こんなところが、日本人の真面目さと勤勉なところだな。」
次回は、「仕事が増える。」です。
近所の人々は、ほとんどは親戚などに疎開していて、ほとんど居ません。
我が家は、焼け跡の端の空家に荷物を入れて仮住まいにしています。
前回にこんな書き出しで記事が始まり、最後のほうの記事では焼け跡整理で半焼した家屋の取り壊しを頼まれ。
壊した材木やトタン類を我が家の近くに運んで整理し、材木から抜いた釘類をバケツにまとめておきました。
或る日、雨がふりました。
私が「今日はゆっくり休めるなと思っていたら、親父から声がかかりました。」
親父「おい、釘などの小物を入れたバケツを、玄関の土間に持って来い。」と言う。
前回は、ここで終わっていますが、今回はこの話の続きです。
私 「このバケツでしよ。」と親父に見せますと。
親父「このバケツの中の釘を再生するのだ。」と言う。
「今日は、これがお前の仕事だぞ。」「一生懸命やれよ。」
私 「どんな風に、やればいいのかよ。」半分不貞腐れて親父に突っかかる。
親父「見本を見せるから、よく見ていろ。」と言うと。
土間に、15センチほどのレールの切れ端を土間に置いて、その上にバケツから数本の曲がった釘を取り出して、くの字に曲がった釘をレールの上に乗せてカナヅチで叩いて、直線になるように数回叩きます。
なるほど見事に、これなら使えるなと思われる「釘」に再生されています。
親父「今日のお前の仕事だ。」「バケツの中の釘を全部再生し、始末しておけ。」
私 「今日全部やるの。」
2時間ほどして、親父が進み具合を見に来た。
親父「どうした。どの位始末できたか見せろ。」
私 「バケツの1/3程度かな。」
親父「どれどれ、残っている釘のバケツと、整理始末したものを見せろ。」
「まあまあか。もう少し急いでやれよ。」「まだ、これからも壊す家があるので、早く始末しないと間に合わなくなるぞ。」
「では、出来たのをみせろ。」
「おい、始末した釘はな。」「大・中・小に入れ物を用意して置いて、振り分けて置かなければ。いざ、使う段になった時に困るだろ。」
「仕事というのは、その先々を考えながらやるものなのだぞ。」
「もう一つ、釘を再生するときにはな。」「大きい釘と、小さい釘の時では、叩くカナヅチを変えろ。」
「小さい釘には、カナヅチも小さいものを使い。大きい釘の時には大きめのカナヅチにする。」
「こう使い分けすることで、仕事も速くなるし、出来上がりも綺麗に出来るのだ。」
「よく考えながら何事もやること。」「いいな。」
私 「親父に威張られても仕方ないか。」なるほどと思い、感心する。
このような、家屋の取り壊しと、その整理作業が数日続きます。
親父「今日は、水道の水が吹き出しているところで、水止めをするからな。」
「ツルハシとゲンノウ(かなづち)とスコップを持って、付いて来い。」
と私に声を掛けて、親父は焼け跡の中に踏み込みました。
親父「これは酷いな。道一杯に焼け後の残骸が散らばっていて、素直に歩けないぞ」
「先ず、大きな焼け跡の、ものを道の上から、脇に寄せて歩けるところを作れ。」
「先に、水を止めてから、多少通れるように道路整理をしなければ仕方が無いな。」
やっと、水道が壊れて吹き出している場所に辿り着きます。
親父「ツルハシを貸せ。」と言って、水が吹き出している水道管の周りを少し深く掘り進み、水道管をツルハシとスコップで露わにしました。
「このようにやるのだぞ。といいながら水道管の下側にツルハシの元側の太い所を入れて、水道管をゲンノウ(かなづち)で叩き潰します。」
「やがて、水がふきだしていたものが、静かになりとまりました。」
私 「なるほどな。」
「なぜ、水道管を叩いて潰すと水がとまるの??。と」親父に聞く。
親父「この時期の家庭に引き込まれている、水道管はな。」
「鉛管(えんかん)と言って、鉛の管で出来ているからな。」
「鉛の管を叩いて潰すことで、とりあえずの水は止まるのだ。」
「完全にとめるには、バーナーの火を使う必要がある。しかし、私はその技術と、道具を持っていないのでな。」
「ここまでだ。」
さあ、帰るか。
親父「しかし、此処に来る途中で、まだ壊れた家屋が燃え燻ぶっているところが、数箇所あったな。」
「あれが火元になってまた大火事になると困るので、火元を掘り起こして火を消してしまわなければ仕方ないぞ。」とぶつぶつ行っている。
親父「誰に頼まれなくとも、整理する。こんなところが、日本人の真面目さと勤勉なところだな。」
次回は、「仕事が増える。」です。