めぐるの日記

めぐるの日記

新津由衣 その19 傑作展

2024年05月06日 | 新津由衣 Neat's
ソロではおよそ5年ぶりのライブが、『傑作展』と銘打ってこのゴールデンウィークに行われた。2年前のクリスマスにリリースされたシンガーソングライター(SSW)“新津由衣”名義の最新2ndアルバム『傑作』を中心に、“Neat's”として始まったソロ活動13年間の軌跡を体験できるステージだ。これまでの作品達は、ファンタジーでいながら、壊れてしまいそうな繊細な心情を優しい言葉選びで表現するものが多かったが、新作アルバム『傑作』は、自身のエッセイ的な作品で、よりストレートな表現の歌詞が多く、ちょっと特別なものになってる。とは言えそこは“新津由衣”。独特の“ワールド”は歌詞のかけら、メロディーで健在だ。そしてライブでも、ただ演奏し歌うのではなく、企画の段階から“ひとり妄想会議”フル回転で最高、最上のものをファンに届けようとしてくれる(これはいつものことだけど)。

今回の2DAYSライブは、イベントスペースを美術館に見立て、その中に使用する楽器を点在させ、そこを移動しながら演奏する。観客はヘッドフォンを着け、観客席とステージの垣根のないスペースを、座っても、立ってでも、場所を移動しながらでも、何処で鑑賞してもOKなものだった。もうこれひとつとっただけでも、誰もやったことのない独創的、個性的なライブだってことが分かってもらえると思う。ヘッドフォンを外せば会場に楽器の音は全く聞こえず、彼女の生声“アカペラ”だけが聞こえる。で、それも充分ありだった。
昼夜2公演で行われたことも理由があった。天窓から射し込む自然光を活かした昼公演、照明やスモークで演出される夜公演と会場の造りもフルに利用していた。特に夜公演の深いブルーとイエローの照明は“悲しみ”と“希望”を表現しているかのようだった。

DAY1『Bedroom Orchestra』は、宅録女子のパイオニア“Neat's”の面目躍如、ひとり舞台だ。キーボードは勿論のこと、Eギター、オムニコード、テルミン、ルーパー、バイノーラルマイクを操ってヘッドフォンライブならではのステージを展開する。何せ久しぶりのライブ、これまでの馴染みのある1曲1曲が、感動の渦となって押し寄せてきた。私的にグッときたのは“菜の花”だった。トイピアノで演奏した曲だが、あえてヘッドフォンを外して聴いた。囁くような優しい歌声に、もう自然と涙が溢れてきた。

DAY2は『合奏』で、数多くのアーティストを支えるファースト・コール・ミュージシャンのキーボーディストejiさん、アルバムをプロデュースされた石崎光さんを迎え、『傑作』を再現する日だった。おふたりをこれほど間近で観られるだけでも貴重なステージだ。
演奏を任せたこの日の彼女はパフォーマーになりきり、表情豊かに、自由にのびのびと舞い踊り、会場をところ狭しと移動し、観客ひとりひとりに感情を込め、時に優しく語りかけるように、時に魂を震わせ力強く歌い上げてくれた。SNSで見せてくれる飾らない姿からは想像できないくらい、何かに突き動かされてるかのように、歌とパフォーマンスを繰り広げた。演奏するおふたりの様子も、彼女につられて乗ってきていることがありありとわかった。曲作りの過程で口ずさむ“La La La…”に似た独特の「YUI語」をそのまま作品にしてしまった“IDEA”では、配信で語っていた通り、感情の赴くままに圧倒的な表現で、ワルツのステップを舞った。その姿はとても素敵だった。「YUI語」であるがゆえにこの曲には「日本語」の対訳があって、その歌詞の通り“あたらしいなにかがはじまる”予感を力強く感じた。本当に凄かった。『傑作』ライブのアレンジはどれもスタジオバージョンを超えたと思えるほど感情移入出来た。“芸術家ハピソライ”、“黎明”、“祝祭のアンテニー”、“だからぼくは”、“暴露”など、今回の音源をライブ作品としてぜひ残して欲しい。ライブ作品を音だけで勝負出来るミュージシャンは、日本では彼女しかいないと思う。

こうしてぶっ飛びの驚きと感動の2DAYS、4公演は、あっという間に終わってしまった。
まさに前代未聞、唯一無二の妄想ステージだった。この場に立ち会え、目撃者になれたことに誇りに感じた。そして彼女の描く夢の“妄想”暴走は無論のこと、今回この妄想を支えながら理解し、昇華させて形作り、この現実世界に再現してくれた様々な分野の強力なクリエイターの皆さんにも敬意を表したい。新津由衣とNeat'sのクロスロードや、ゆらゆら浮かぶ雲とキラキラな鳥たちの空間は間違いななく“YUIワールド”だった。
みなさん、お疲れさまでした。
本当に素敵なステージを、ありがとう!!


(使用した写真は許可の出たタイミングで写したものです)
新津由衣 2nd アルバム「傑作」
配信はこちらから。

Kessaku by Yui Neats

Album • 2024 • 10 Songs • 40 mins

TuneCore Japan




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« エマーソン・レイク・アンド... | トップ |   
最新の画像もっと見る

コメントを投稿