かりんとうの小部屋Z

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茨木のり子「花の名」の一節

2007年05月30日 11時07分15秒 | ことば
父親の葬儀を終え、電車で帰る際の出来事を記した詩である。

物心ついてからどれほど怖れてきただろう
死別の日を
歳月はあなたとの別れの準備のために
おおかた費やされてきたように思われる
いい男だったわ お父さん
娘が捧げる一輪の花
生きている時言いたくて
言えなかった言葉です
棺のまわりに誰も居なくなったとき
私はそっと近づいて父の顔に頬よせた
氷ともちがう陶器ともちがう
ふしぎなつめたさ


私も、いつも怖れている。
私は両親とは精神的同一体であるような気がしている。
それが欠けるということは、自分が半分死ぬということと同じ。

もし両親がいなくなったら、私は心の防波堤を失うだろう。
それによりもたらされる結果は
世を捨てるか自殺するかのどちらかしかないと思う。