困難な結婚 著者:内田樹 出版社:アルテスパブリッシング
★本来結婚は「誰でもできる」を基準に制度設計されていたはずなのです。(3P)
★「それなしでは集団が立ちゆかない」というような根源的に重要なことは「誰でもできる」という条件で制度設計されている。だから、教えることも、結婚することも、子どもを育てることも、「誰でもできる」のでなければならない。(4P)
★「もっといい人」は現れません。(16P)
★結婚は男が成長するための最良の機会。(22P)
★舞い込んできた縁談というような「ご縁」を大事にする人はわりとすぐに結婚してしまう。
手持ちの資源だけで何を創造できるか、それを楽観的に考えられる人は結婚に(あまり)逡巡しません。(23P)
★病気になったり、失業したり、そういう困難に直面したときに支え合うために人間は結婚するのです。結婚というのは、そういう人生の危機を生き延びるための安全保障なんです。(24P)
★目の前にいる人よりももっとましな相手がいるんじゃないか、ここで手を打ったらあとで後悔するんじゃないか……というのは「自分はこんな程度の人間じゃない」という自負の裏返しです。ですから、縁談の釣書が来たら、「ああ、自分の外部評価はこのくらいなのか」と思うほうがいい。(25P)
★自分が「父性愛」という遺伝子的傾向を持つ個体であるか、持たない個体であるかなんて、
子供を持ってみない限り、絶対にわからない。(33P)
★結婚は誰としてもいい。(35P)
★自分が感じている「仕事つらいなあ」という身体実感が「生きる力がひたすら衰えてゆく煉獄的状況」なのか「成長のために必要な負荷がかかっている過渡期」なのか、判定しなくてはいけない。(43P)
★仕事については、シンプルな基準で判断を下さない方がいい。悩んだ方がいいんです。できるだけ葛藤した方がいい。葛藤の中で人間は成長します。(50P)
★男女雇用機会を均等にするということは、平たくいえば「求人数に対して求職者数が二倍になる」ということです。雇用する側からすれば、より低い雇用条件で、より能力の高い労働者を採用することができるようになる。(58P)
★お金が「ないから」結婚する。(64P)
★結婚したらどんな「いいこと」があるかなんて、結婚する前にはわかりません。結婚して人は大人になる。大人になってはじめて、結婚してどういう「いいこと」があったのか、事後的・回顧的にわかる。(75P)
★結婚を通じて幸福になろうとしているのが、間違い。そう思っているからみんな結婚できないんですよ。今より不幸にならないように結婚するんです。(76P)
★結婚式の本質は公に「誓う」こと。(84P)
★とにかく大事なのは宣言です。断定と宣言。誓言というのは思いのほか有効です。「神さまを前にして約束しちゃったからな」という「気後れ」が「最後の一歩」を踏みとどまらせるということだってあるんです。(102P)
★「どうしていいかわからない」場合にでも、わかるひとは「とりあえず何をすればいいか」がわかります。それは「失ったもの」を数え上げるのではなく、「まだ手元に残っているもの」を数え上げることです。(109P)
★僕の個人的意見は、結婚したら即入籍です。「入籍しなかった」という自分の判断が適切であったということを証明するために一番いい方法は「やっぱり別れた」という事実だからです。人間というのは、自分の判断の正しさを証明するためなら自分が不幸になっても別に構わないと思う、そういう生き物なんです。(117P)
★誰かのことをしみじみ「家族だなあ」と感じるのは、その人が「いない」ときに、「誰かが欠けている」感じがするということです。(131P)
★アイデンティティーって、ある種の「バランスの取り方」のようなものなんです。(156P)
★自分にはよくわからない人といっしょに暮らせるということが結婚のおもしろみです。(161P)
★他者というのはとっても遠いところにいるんです。声も届かないし、手も届かない。その「遠いところにいる人」に触れることができる。その人の声を聴くことができる。その人を抱きしめることがきでる。それだけでみごとな達成だと僕は思います。それ以上のことが起きたら、それは「ボーナス」だと思ってありがたく頂けばいい。(167P)
★結婚生活に限らず他者との共同生活を適切に営む上でいちばん大切なことは「機嫌がよい」ということです。(168P)
★家族全員が、それぞれ自分の悩みを包み隠さず語り合ったり、気の利いたジョークで爆笑したり、一つの話題で熱く語り合ったりするのが「一家団欒」だと思っている人はひどい勘違いをしていると思います。そんな家庭ありません。あったらその方が異常です。(177P)
★家族崩壊のリスクを真剣に恐れる気持ちがある人は自分が思っていることをそのまま口走ったりしません。窮屈なもんなんですよ。他者と暮らすということは。(178P)
★敬意というのは要するに、距離感の表明のことです。(190P)
★結婚生活を愛情と理解の上に構築してはならない。(206P)
★「大好きな家事」のリストをだんだん長くしてゆくと、ほんとうに家事が楽しくなってくる。(216P)
★昔、ある女の子の部屋を見せてもらったことがあります。するとみかん箱の上にトランジスタラジオとやかんが置いてあった。その組み合わせがシュールに思えたので、聞いてみたら「夜中にトランジスタラジオで深夜放送を聞いている途中で水が飲みたくなったらやかんから飲むの」ということでした。別にシュールでも何でもなくて、きわめて実利的な配列だったのです。(226P)
★小遣いをもらっている男は、「奥さんから小遣いをもらっています」っていう「ぱっとしない感じ」が日常の所作に出てしまうんです。その「貧乏臭さ」というのは何とも言いがたいものなんです。(229P)
★生活水準を自分の収入に合わせていれば、金で困るということはまず起こりません。みんな自分の経済的実力の「ちょっと上」を演じてしまうんです。僕たちの羨望を激しく搔き立てるのは、いつも行くそば屋でこちらが「たぬきそば」を食べているときに「天ぷらそばにお銚子付けてね」というようなことを気楽に言える人とかなんです。(233‐234P)
★倦怠というのは、自分で自分の人生に飽きている人間が感じることです。自分で自分の人生に飽きているのだけれど、それを認めてしまうと「後がない」ので、倦怠の原因を外部化して、「誰かのせいで人生に飽きている」というストーリーを作って、それにすがりついているのです。(242P)
★母親という生き物の特徴は「自分のテリトリーからあまり遠くには出ない」ということです。遠くに逃げると母親はわりと簡単に子どもへの干渉を諦めます。だから、母親の干渉を嫌う娘たちはよく海外留学します。「遠くに行ってしまった娘」については母親があっさり干渉を断念することが経験的に知られているからだと思います。(246P)
★相手の親に会ってみたら、これはヤバい、ちょっとやっていけなさそうだ、と思ったときはさっさと逃げていいと思います。(247P)
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