かりんとうの小部屋Z

このブログでは趣味や仕事や生活について、まったりと語っています。

この花をあの人に

2008年05月22日 17時54分31秒 | 創作
あの人に花をあげよう。
そう思い立って、私は街に出ました。
商店街は相変わらず人通りも少なくてさびしかったですが、
それでも5月のやさしい風が通り過ぎると、心がはずみます。
私は花屋の前で店員を呼びました。
とてもきれいなカーネーションを見つけたのです。
これをあの人に贈ろう、きっと喜んでくれる。
「すみませーん。」私はもういちど店員を呼びました。
しかし中から返事はありません。
おかしいな、誰もいないのかな。
私は店の奥を覗き込みました。人の気配はありません。
「留守か・・・」そうつぶやいて、私は帰ろうとしました。
くるりと入口の方に向きを変えると、信じられない光景が広がって
いました。
さっきまで色とりどりの美しさを競い合っていた花たちが
全て枯れているのです。
「何これ!?全部枯れてる・・・!」
私はカーネーションを見ました。赤は色を失っていました。
あの人にあげようと思っていたカーネーション・・・。
私は仕方なく店を出ました。
店を出て、すぐ気づきました。商店街に誰もいないのです。
何の音もありません。人びとが生活していたにおいも何もかもしない。
ただ、模型のような街があるだけです。
そして私は、すさまじい臭気を感じました。鼻をつまんでも皮膚が匂いを吸い込んでしまうので、どうしようもありません。
「何この臭い」
臭いは街全体から出ているものでした。
「もしかして街が腐りはじめてるの」
私の予感はどうやら当たったようです。街は火であぶったするめのように、ありえない方向に伸びたり縮んだりして、段々と腐敗しています。花も木も、黒や茶色に変色しています。
「私、死ぬのかしら」
腐りゆく街の中で、私だけが元のままでした。しかしいつ私も腐ってしまうかわかりません。
「お願い、今日はあの人の誕生日なの。最後にこの花をあの人に」
私が手にしていたのはもはや美しいカーネーションではありませんでした。ぼろぼろに枯れて腐った、花ともいえない代物でした。
私は突っ伏して泣きました。誰もいない街で、声をかぎりに泣きました。
そしていよいよ最期の時が来ました。私は、突然体が持ち上げられるような感覚を覚えました。空に向かって引っ張られるような感覚です。
「なっ、何」
私は自分の体を見ました。そして悟りました。私の体は引っ張られているのではない、体が溶けていってるのだということを。溶けた体の一部が灰のように、空に飛んでいきました。
たった数分の出来事でした。私の体はあらかた消えてしまいました。あと残っているのは右手だけです。右手にはまだ花があります。それは私に残された希望でした。なんとかしてこの花をあの人に届けたい。最期まで私は、そんなことを考えていたのです。

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もくとう

2008年05月19日 23時55分29秒 | 仕事
2:28分

遠くでサイレン音が聞こえる。

全員起立。

3分間の黙祷。

一生忘れないだろう。

全ての魂が安らかに天にのぼってゆきますように。

四川地震のこと。
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小魚山公園

2008年05月03日 16時14分25秒 | 近い旅遠い旅
ここは小魚山公園。
青島市内を一望できる場所・・なんだけど。

あいにくの霧!キリ!KIRI!

何も見えなかった・・珍しい!
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