原発が立地されている13道県では、それぞれ法定外普通税として核燃料税条例というものを制定している。
今日の新聞では、新潟県も福井県に倣って停止中の原発にも核燃料税を課す条例を検討すると報じられている。これがどんな意味を持つか少し考えてみたい。
原発を誘致すると莫大な電源三法交付金や固定資産税が入り、自治体財政が潤うと言われている。確かに立地した市や町はその通りなのだが、実は県の税収へのメリットはそんなに大きくない。
その一方で、原発は次々とトラブルを起こし、国任せでは住民は納得しないため、原発関係の様々な安全対策、防災対策に県は独自の上乗せ出費が迫られたのである。
私たちが、お粗末な中身と批判してきた原子力環境安全管理協議会の開催も、県費で賄わなければならない。安全対策は国の一元的管理が建前だから、県が勝手にやってる会議に交付税措置はないのである。
これでは何のための原発誘致かということになる。そこで考えだされたのが核燃料税である。1976年の福井県を皮切りに次々と制定され、石川県も志賀原発稼動前の1992年に制定している。
なぜ、運転開始前に制定されたかといえば、核燃料の挿入に対しての課税だからである。試運転前の、最初に圧力容器に新燃料を装荷する前に条例を制定する必要があったのである。
税率は、挿入された核燃料の価格の7%。志賀1号機は54万KWと小さいこともあって、5年間で17億円を見込んでいた。
さて、原発に反対していた私はこの条例案に賛成すべきかどうか迷ったうえで、1992年の当初議会で以下のような一般質問をおこない、反対の姿勢を打ち出した。
次に、核燃料税条例についてお尋ねします。
志賀原発の試運転開始がいよいよ近づいてまいりました。その危険性については依然不安が解消されず、係争中の志賀原発建設差しとめ訴訟においても、具体的な問題点が次々と指摘されています。また、万が一の事故に備えた防災計画も、大事故は起きないという前提に立った非現実的な計画であり、その実効性を確認する防災訓練もいまだ行われていません。
こうしたときに、運転開始を前提とした核燃料税条例を提出し、既成事実を積み重ねていこうとする姿勢は、多くの県民の不信感を買うものと言えるでしょう。したがって、このような条例は到底認めることはできないと考えます。
さらに、その内容についても数多くの疑問点がありますので、以下、質問をさせていただきます。
まず、必要性についてであります。本条例の提案理由は、原子力発電所の立地に伴う財政需要に充てるためとされています。しかし基本的に、電源立地に伴う地域振興資金としては電源三法に基づく国からの交付金があり、原子力防災に必要な予算も国からの補助金で対応できるというのが建前となっています。
「ジュリスト」という法律専門誌に、核燃料税を最初に制定した福井県のその当時の税務課長さんが、制定の理由、背景について書かれた文章が掲載されています。少々長くなりますが、引用させていただきます。
「次々と核発電所が運転を開始するに伴い、故障などの発生、周辺の海産生物などへの放射性物質の蓄積、県や市町村への連絡通報体制への不満など、さまざまな問題を生じるに至り、このことが地域住民の原子力発電への不信、安全確保に対する不安、地域振興政策への不満などを顕在化させる要因ともなり、地域住民の健康と安全を確保するという立場から、県及び市町村独自の安全対策、放射能調査、温排水調査、広報対策など、原子力発電所の立地地域及び周辺地域の住民の理解と協力を得るため、県及び市町村は膨大な財政支出を迫られたわけである。しかしながら、小さい財政規模しか有しない本県にとっては、その円滑な原子力行政を行うに足る財源のめどが立たなかったことが本条例創設の最大の理由となったのである」
九年前ですが、このように述べておられます。
そこでお尋ねします。まず、本県の場合、原子力発電所の立地によって具体的にどのような財政需要が生じたのでしょうか。そして、それは電源三法交付金その他の国の予算措置、あるいは現在の本県の財政では賄えないものなのでしょうか。
私は、原子力発電所の立地は、本当の意味での地域振興につながるものではないと考えます。しかしながら、短期的には自治体の財源が潤うことも、また事実であろうと思ってはいました。恐らく原発に賛成してこられた人たちも、この点については同様であろうと思います。新しい財源を求めなければならないとは、一体どうしたことなのか、わかりやすい説明をお願いしたいと思います。
次に、条例の内容について四点お尋ねします。
まず、税率七%とのことですが、単に他の立地県の税率にそろえられたということはないと思います。この数値の算定根拠を示していただきたいと思います。なお、今後の財政需要によって増減の可能性があるのかどうかも、あわせてお聞かせ願います。
二点目、五年間で税収十七億円を見込んでいるとのことですが、この額は志賀原子力発電所の平均稼働率を何%として算出されたのでしょうか。
三点目、課税客体を核燃料の挿入としていますが、この規定では発電所の故障、トラブルなどによって稼働率が低下した場合、税収もダウンすることになると思われます。当初の税収見込み額確保のためにチェック体制が甘くなることが懸念されますが、いかがでしょうか。
四点目、なぜ核燃料に対して課税するのかという疑問とともに、それ以外のものにも課税できるのではという疑問も生じます。地方税法第四条第三項の規定を無原則的に利用すると、原発はまさに金のなる木になります。今後、例えば放射性廃棄物など、ほかのものに対する課税もあり得るのでしょうか。
さて、発電所には固定資産税はもちろんのこと、国税である電源開発促進税も課税されます。化石燃料を使う火力発電所、特に大気汚染の原因となる石炭に対して課税するのならともかく、核燃料にまで課税しては、知事の口ぐせであるクリーンエネルギー原子力の普及促進にマイナスではないでしょうか。知事の原発推進の姿勢と矛盾するようにも思いますが、いかがでしょうか。
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議事録はこちら
原発依存財政にはまり込んでいくことを懸念し、私はこの条例案に反対した。
全国各地で原発に反対している議員の間では、実は対応は割れていた。
現実に安全対策の強化も必要である。取れるものはとって、原発のコストを高めていくことも脱原発の戦略としてありうる。
実はこのとき緒税率は7%だったが、その後2002年には10%へ、2007年には12%へと税率を上げている。現在、一番高いのは新潟県の13.5%である。
まさに原発はカネのなる木である。
今回、この質問の後半の3点目、動かない原発、つまり新たな定期検査で核燃料が挿入されなければ税収はないという事実に直面し、入っている状態の核燃料に課税する案が浮上したのである。
ちなみに志賀原発2号機は稼働率50%を切っている。全国最下位の稼働率である。税務課や財政課から見れば税率をあげなければやってられないというお粗末な原発であった。
そこで谷本知事も6月22日、「原発が立地しているだけで行政は(防災対策など)対応が必要になる。核燃料税について勉強したい」と述べ、運転停止中の原発も課税対象にする福井県の条例案を参考に、石川県も核燃料税を見直す考えを明らかにしたそうな。
県は、2011年度予算で6億7300万円の核燃料税の収入を見込むが、1、2号機ともに運転停止中で減額はほぼ間違いなしである。
さて、長々と書いたが、この核燃料税条例の見直しで、安易な再稼動への動機付けは若干後退するのでは? そんなメリットはある。
だけど、廃炉という観点ではどうだろうか。いつまでのそこに存在するだけで税収がある原発。廃炉に向かって、という意味では逆向きの税制と言えるのではないか。
今日の新聞では、新潟県も福井県に倣って停止中の原発にも核燃料税を課す条例を検討すると報じられている。これがどんな意味を持つか少し考えてみたい。
原発を誘致すると莫大な電源三法交付金や固定資産税が入り、自治体財政が潤うと言われている。確かに立地した市や町はその通りなのだが、実は県の税収へのメリットはそんなに大きくない。
その一方で、原発は次々とトラブルを起こし、国任せでは住民は納得しないため、原発関係の様々な安全対策、防災対策に県は独自の上乗せ出費が迫られたのである。
私たちが、お粗末な中身と批判してきた原子力環境安全管理協議会の開催も、県費で賄わなければならない。安全対策は国の一元的管理が建前だから、県が勝手にやってる会議に交付税措置はないのである。
これでは何のための原発誘致かということになる。そこで考えだされたのが核燃料税である。1976年の福井県を皮切りに次々と制定され、石川県も志賀原発稼動前の1992年に制定している。
なぜ、運転開始前に制定されたかといえば、核燃料の挿入に対しての課税だからである。試運転前の、最初に圧力容器に新燃料を装荷する前に条例を制定する必要があったのである。
税率は、挿入された核燃料の価格の7%。志賀1号機は54万KWと小さいこともあって、5年間で17億円を見込んでいた。
さて、原発に反対していた私はこの条例案に賛成すべきかどうか迷ったうえで、1992年の当初議会で以下のような一般質問をおこない、反対の姿勢を打ち出した。
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次に、核燃料税条例についてお尋ねします。
志賀原発の試運転開始がいよいよ近づいてまいりました。その危険性については依然不安が解消されず、係争中の志賀原発建設差しとめ訴訟においても、具体的な問題点が次々と指摘されています。また、万が一の事故に備えた防災計画も、大事故は起きないという前提に立った非現実的な計画であり、その実効性を確認する防災訓練もいまだ行われていません。
こうしたときに、運転開始を前提とした核燃料税条例を提出し、既成事実を積み重ねていこうとする姿勢は、多くの県民の不信感を買うものと言えるでしょう。したがって、このような条例は到底認めることはできないと考えます。
さらに、その内容についても数多くの疑問点がありますので、以下、質問をさせていただきます。
まず、必要性についてであります。本条例の提案理由は、原子力発電所の立地に伴う財政需要に充てるためとされています。しかし基本的に、電源立地に伴う地域振興資金としては電源三法に基づく国からの交付金があり、原子力防災に必要な予算も国からの補助金で対応できるというのが建前となっています。
「ジュリスト」という法律専門誌に、核燃料税を最初に制定した福井県のその当時の税務課長さんが、制定の理由、背景について書かれた文章が掲載されています。少々長くなりますが、引用させていただきます。
「次々と核発電所が運転を開始するに伴い、故障などの発生、周辺の海産生物などへの放射性物質の蓄積、県や市町村への連絡通報体制への不満など、さまざまな問題を生じるに至り、このことが地域住民の原子力発電への不信、安全確保に対する不安、地域振興政策への不満などを顕在化させる要因ともなり、地域住民の健康と安全を確保するという立場から、県及び市町村独自の安全対策、放射能調査、温排水調査、広報対策など、原子力発電所の立地地域及び周辺地域の住民の理解と協力を得るため、県及び市町村は膨大な財政支出を迫られたわけである。しかしながら、小さい財政規模しか有しない本県にとっては、その円滑な原子力行政を行うに足る財源のめどが立たなかったことが本条例創設の最大の理由となったのである」
九年前ですが、このように述べておられます。
そこでお尋ねします。まず、本県の場合、原子力発電所の立地によって具体的にどのような財政需要が生じたのでしょうか。そして、それは電源三法交付金その他の国の予算措置、あるいは現在の本県の財政では賄えないものなのでしょうか。
私は、原子力発電所の立地は、本当の意味での地域振興につながるものではないと考えます。しかしながら、短期的には自治体の財源が潤うことも、また事実であろうと思ってはいました。恐らく原発に賛成してこられた人たちも、この点については同様であろうと思います。新しい財源を求めなければならないとは、一体どうしたことなのか、わかりやすい説明をお願いしたいと思います。
次に、条例の内容について四点お尋ねします。
まず、税率七%とのことですが、単に他の立地県の税率にそろえられたということはないと思います。この数値の算定根拠を示していただきたいと思います。なお、今後の財政需要によって増減の可能性があるのかどうかも、あわせてお聞かせ願います。
二点目、五年間で税収十七億円を見込んでいるとのことですが、この額は志賀原子力発電所の平均稼働率を何%として算出されたのでしょうか。
三点目、課税客体を核燃料の挿入としていますが、この規定では発電所の故障、トラブルなどによって稼働率が低下した場合、税収もダウンすることになると思われます。当初の税収見込み額確保のためにチェック体制が甘くなることが懸念されますが、いかがでしょうか。
四点目、なぜ核燃料に対して課税するのかという疑問とともに、それ以外のものにも課税できるのではという疑問も生じます。地方税法第四条第三項の規定を無原則的に利用すると、原発はまさに金のなる木になります。今後、例えば放射性廃棄物など、ほかのものに対する課税もあり得るのでしょうか。
さて、発電所には固定資産税はもちろんのこと、国税である電源開発促進税も課税されます。化石燃料を使う火力発電所、特に大気汚染の原因となる石炭に対して課税するのならともかく、核燃料にまで課税しては、知事の口ぐせであるクリーンエネルギー原子力の普及促進にマイナスではないでしょうか。知事の原発推進の姿勢と矛盾するようにも思いますが、いかがでしょうか。
===========================
議事録はこちら
原発依存財政にはまり込んでいくことを懸念し、私はこの条例案に反対した。
全国各地で原発に反対している議員の間では、実は対応は割れていた。
現実に安全対策の強化も必要である。取れるものはとって、原発のコストを高めていくことも脱原発の戦略としてありうる。
実はこのとき緒税率は7%だったが、その後2002年には10%へ、2007年には12%へと税率を上げている。現在、一番高いのは新潟県の13.5%である。
まさに原発はカネのなる木である。
今回、この質問の後半の3点目、動かない原発、つまり新たな定期検査で核燃料が挿入されなければ税収はないという事実に直面し、入っている状態の核燃料に課税する案が浮上したのである。
ちなみに志賀原発2号機は稼働率50%を切っている。全国最下位の稼働率である。税務課や財政課から見れば税率をあげなければやってられないというお粗末な原発であった。
そこで谷本知事も6月22日、「原発が立地しているだけで行政は(防災対策など)対応が必要になる。核燃料税について勉強したい」と述べ、運転停止中の原発も課税対象にする福井県の条例案を参考に、石川県も核燃料税を見直す考えを明らかにしたそうな。
県は、2011年度予算で6億7300万円の核燃料税の収入を見込むが、1、2号機ともに運転停止中で減額はほぼ間違いなしである。
さて、長々と書いたが、この核燃料税条例の見直しで、安易な再稼動への動機付けは若干後退するのでは? そんなメリットはある。
だけど、廃炉という観点ではどうだろうか。いつまでのそこに存在するだけで税収がある原発。廃炉に向かって、という意味では逆向きの税制と言えるのではないか。
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