北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

「脱成長の地域再生」

2010-12-18 | 雑感
 標題の本を数日前から読み始めている。NTT出版発行で、高橋伸彰氏と神野直彦氏の編著、辻山幸宣氏ら6氏が執筆している本である。

 冒頭の「はじめに」で高橋氏は、地域は衰退しているが、企業誘致や公共事業で地域経済の発展や回復を図れば地域は再生するのかという疑問を投げかけ、「日本経済の発展に遅れをとったから地域が衰退したのではなく、地域社会で育まれた人と人の繋がりや自然と人間の関係が、戦後日本の成長過程で次々と断ち切られたから地域は衰退したのです」と指摘している。

 その観点から地域の再生に向けて、地方税制の改正やセーフネットの整備、自治体行政の改革などのテーマで各氏が論じている。
 
 それぞれ中身が濃く、熟読しないと(熟読しても)私には理解できない内容も多く含まれているが、辻山氏の様々な問題提起に特に興味を引かれる。

・多くの自治体が「地域活性化」や「観光立国」などに関わっているが、地域の発展は果たして行政の課題なのか。
・自治体は所得再分配をしない(中央政府の仕事だ)という議論でいいのか。
・自治体行政が地方衰退の原因になっていることもあるのではないか。
などなど。
 
 多くの自治体が行革の名の下で経営主義的改革を進めているが、地域の再生から逆行する施策も多々見受けられる。自治体は何をなすべきかを根本から問う刺激的な論文である。

 もう一冊、いま手元にあるのがこれまた今秋出版されたばかりの「里山復権 能登からの発信」(創林社)である。
 言うまでもなく、金沢大学が珠洲をはじめとした奥能登を拠点として展開する里山里海の再生の取り組みの報告である。

 それぞれの本の執筆者にはおそらく深いつながりはないと思うが、書かれている内容はまさに理論と実践でピッタシのつながりである。

 長年の原発誘致をめぐる議論、そしていまなお地域活性化の呪縛の中にある珠洲市の今後のあり方を考える必読書ではないかと思う。お勧めの2冊である。



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