ビキニ環礁の水爆実験で被ばくした第五福竜丸事件の真相に迫る「ブラボー 隠された水爆実験の真実」(平凡社・高瀬毅著・1800円)を紹介したい。
ここでいうブラボーとは賞賛の意を表す感嘆詞ではなく、1954年3月1日にアメリカがビキニ環礁でおこなった水爆実験のコード名のことである。
第五福竜丸事件については2011年8月31日に「アーサー・ビナードさんが語る『第五福竜丸』」として紹介し、翌月9月21日には「第五福竜丸展示館を訪れて」として少しずつ紹介してきた。
昨年が60年の節目の年であったが、ここ10年あまりだろうか、生き残った乗組員の方々の証言が相次ぎ、さらに新しい資料も発見され、第五福竜丸事件の歴史的意義についての研究が進んでいる。
アメリカの原水爆実験による被ばくは日本の漁船だけでも千隻近くにのぼること。
汚染された大量の魚が国内で流通、消費されたこと。
さらに久保山愛吉さんより早く被ばくによって亡くなった人がいたと思われること。
第五福竜丸事件はヒロシマ、ナガサキに次ぐ日本人の第三の被ばくにとどまらず、核廃絶運動のスタートに積極的な役割を果たした。
単なるきっかけという意味ではなく、乗組員の皆さんの果たした役割がいま大きく評価されている。
一方で日本の原子力開発が「核の平和利用」としてスタートする時期と重なり、第五福竜丸事件は国策に翻弄され、被ばく者は2重の意味で犠牲者になっていったことも忘れてはならない。
これまでも第五福竜丸の甲板員だった大石又七さんの「ビキニ事件の表と裏」(かもがわ出版・1500円)は読んでいたが、本書は操業の責任者である漁労長・見崎吉男さんの証言をつぶさに追って事件の真相にさらに迫る力作である。
著者の知人(珠洲市在住の方)からぜひ読んで!薦められて読んだが、ヒロシマ、ナガサキ、ビキニ、フクシマと核被害を重ねながら、いまだ国策の誤りを正せない私たちにとって、原子力開発の歴史を紐解く意義は大きい。
自らを漁師ではなく漁士(海に生きるサムライという意味が込められている)と語る見崎さんの生き様から学べることも多い。
そして今年は被ばく70年の節目の年でもある。
多くの方にぜひ読んでもらいたい。
…とは言え全世界に放射能がまきちらかされたわけで、当時に現在の測定技術での監視網や法の整備があったなら世界的な大犯罪に相違ないですね。