昔し あったどな
山ん中に ちっちゃこい写真屋さん あったどな
写真屋のおんちゃんは(おんちゃん=おじさん)たいそうな働き者ではあったども なんとしても写真屋の場所が悪かったんだな
山道の 狸や狐はよく通るけども 人は中々通らねぇ 淋しい場所だったもんな
写真屋のおんちゃんは 腕は良かったんだけれども 困った事に 人が嫌いだった
人が嫌いだもんで 山の中に写真屋さんを開いたんだね
たまぁ~に 麓の村から人が来て おんちゃんに写真の仕事を頼むくらいで 客はなかったんだね
あるとき おんちゃんは食う物が無くて 店の前の道端に生えていた ぺんぺん草を喰ったんだね
ぺんぺん草は煮ても茹でてても美味いもんではなかったけれども 腹ぁ減ってたもんで 喰ったんだね
おんちゃん また腹減ったんだけれども もうぺんぺん草も無くなっちまって 食う物が無かったんだと
そん時 裏山で鳥が鳴いていたんだと カンコ カンコって鳴くのは 閑古鳥だなや
それにしても今日は喧しいな 鳴き声もいつもより貧乏臭いし どれ 閑古鳥がナニしたもんだか と 裏山に見に行ったと
そしたら 誰が仕掛けたもんだか トリモチに絡んで暴れている閑古鳥を見つけたと
ありゃぁ おめ トリモチに掛かっちまって嘆いていたったのか? そーかぁ そりゃぁ丁度良かった おら腹減ってるで おめこと喰ってみんべぇ と、閑古鳥を持って帰ったと
どれ 閑古鳥には可哀想だけれども おんちゃんもおめとこ食わねぇと死んじまうで 喰わせてくれろ と、竃に火をくべた と
どれ と言って煮立った湯に閑古鳥こと突っ込むべと思って握ったら 痩せてるんだねぇ
おめ こんなにガサばかりで 中身が無ぇで 喰うとこ無かんべよぉ と、閑古鳥に言うと
おんちゃん オラは閑古鳥でやんす 閑古鳥は貧乏神の御先棒担ぎでやんす 貧乏神の小間使いが肥えて美味いわけがあんめ・・・わかるかなぁ? わかってくれろ と、言ったと
なるほどなぁ~ おめの羽根ば毟ったら骨しか無さそうだな ンでも 他に喰う物は無ぇから やっぱし鍋にブチ込んで煮て喰う と言ったと
そしたら閑古鳥が おんちゃん そんな惨い事しねぇで オラとこ逃がして見てくれろ きっと良い事があるから~ と、言ったと
いや 鶴の恩返しのようなのは要らねど おら人が嫌いで女子(おなご)も嫌いだから と、言うと 閑古鳥が いや おんちゃん 写真屋が流行って お客が店に列成して困る程繁盛させっから・・・なっ、と、言ったと
ンだがぁ? おめとこ喰っちまうよりも後でもっと鱈腹食わせてもらえるってか?
よし それならお前を逃がしてやるべ と 閑古鳥を逃がしてやったと
その夜はとうとう何も食う物が無く 鍋に沸かした白湯を飲んで おんちゃんは寝たんだと
そして 翌朝 未だ朝靄も晴れて無い時間だと言うのに表で戸を叩く音がしたんだと
なんだべやぁ~ と 表に出てみると まるで昔の校長先生のような髭の紳士が燕尾服を着て立っていたと
そして 写真を撮ってくれぃ と 店に入って来たと
へいへい 写真でやんすね 撮りましょう 撮りましょう と 電気をつけて準備して
そんでは そこの椅子に腰掛けて下さい 特別良く撮りますからね はい 大きく息を吸ってぇ 止めてぇ~ パチっ と
そのとき ファインダーを覗いていたおんちゃんは 椅子に座っている紳士の本当の姿が見えちまった と
ありゃぁ~ これは、裏山のもっと奥の山に住む古狸じゃないか さては 閑古鳥に頼まれて化けてやって来たんだな と
校長先生のような紳士は ああ ナンボだね? と 料金を尋ねた と
へい 100万円でやんす 特別良く撮りましたから 少し高くなってます と おんちゃんは言った と
ナントまず 100万円とは安いもんだ 前金で置いて行くから受け取れ と 札束を出したと
へぇ~ 現金でやすんかぁ~ コリャァ魂消た と おんちゃんが言うと 古狸は 後で私の娘も写真を撮りに来るから と もう一束懷から取り出して置いて行ったと
こんな物貰ってもなぁ~ どうせクヌギの葉っぱなんだから と 思っていると ゴメンください と 若い娘が入って来た と
ありやぁ~ 狸の娘だな しかし よく化けたもんだ メンコイしな と 思いながらも 気付かぬ振りして はいはい 写真ですね お父様から承っておりますよ と 狸の娘を招き入れて写真を撮った と
写真機を構えて 暗幕を被って ファインダーを覗くと そこに居たのは狸の娘ではなくて 川向こうに住む若い雌ギツネであった と
なんとまぁ~ 閑古鳥のやろうは顔が広いもんだ 古狸の後は雌ギツネか・・・
古狸と雌ギツネでは 貰えるお金は 木の葉のお金 暇つぶしにしか成ら無いんだがなぁ と 少し面白いけれども 腹は減ったままだし と 呟いたと
やべっ・・・写真の修整の仕事が入った 続きは後で
山ん中に ちっちゃこい写真屋さん あったどな
写真屋のおんちゃんは(おんちゃん=おじさん)たいそうな働き者ではあったども なんとしても写真屋の場所が悪かったんだな
山道の 狸や狐はよく通るけども 人は中々通らねぇ 淋しい場所だったもんな
写真屋のおんちゃんは 腕は良かったんだけれども 困った事に 人が嫌いだった
人が嫌いだもんで 山の中に写真屋さんを開いたんだね
たまぁ~に 麓の村から人が来て おんちゃんに写真の仕事を頼むくらいで 客はなかったんだね
あるとき おんちゃんは食う物が無くて 店の前の道端に生えていた ぺんぺん草を喰ったんだね
ぺんぺん草は煮ても茹でてても美味いもんではなかったけれども 腹ぁ減ってたもんで 喰ったんだね
おんちゃん また腹減ったんだけれども もうぺんぺん草も無くなっちまって 食う物が無かったんだと
そん時 裏山で鳥が鳴いていたんだと カンコ カンコって鳴くのは 閑古鳥だなや
それにしても今日は喧しいな 鳴き声もいつもより貧乏臭いし どれ 閑古鳥がナニしたもんだか と 裏山に見に行ったと
そしたら 誰が仕掛けたもんだか トリモチに絡んで暴れている閑古鳥を見つけたと
ありゃぁ おめ トリモチに掛かっちまって嘆いていたったのか? そーかぁ そりゃぁ丁度良かった おら腹減ってるで おめこと喰ってみんべぇ と、閑古鳥を持って帰ったと
どれ 閑古鳥には可哀想だけれども おんちゃんもおめとこ食わねぇと死んじまうで 喰わせてくれろ と、竃に火をくべた と
どれ と言って煮立った湯に閑古鳥こと突っ込むべと思って握ったら 痩せてるんだねぇ
おめ こんなにガサばかりで 中身が無ぇで 喰うとこ無かんべよぉ と、閑古鳥に言うと
おんちゃん オラは閑古鳥でやんす 閑古鳥は貧乏神の御先棒担ぎでやんす 貧乏神の小間使いが肥えて美味いわけがあんめ・・・わかるかなぁ? わかってくれろ と、言ったと
なるほどなぁ~ おめの羽根ば毟ったら骨しか無さそうだな ンでも 他に喰う物は無ぇから やっぱし鍋にブチ込んで煮て喰う と言ったと
そしたら閑古鳥が おんちゃん そんな惨い事しねぇで オラとこ逃がして見てくれろ きっと良い事があるから~ と、言ったと
いや 鶴の恩返しのようなのは要らねど おら人が嫌いで女子(おなご)も嫌いだから と、言うと 閑古鳥が いや おんちゃん 写真屋が流行って お客が店に列成して困る程繁盛させっから・・・なっ、と、言ったと
ンだがぁ? おめとこ喰っちまうよりも後でもっと鱈腹食わせてもらえるってか?
よし それならお前を逃がしてやるべ と 閑古鳥を逃がしてやったと
その夜はとうとう何も食う物が無く 鍋に沸かした白湯を飲んで おんちゃんは寝たんだと
そして 翌朝 未だ朝靄も晴れて無い時間だと言うのに表で戸を叩く音がしたんだと
なんだべやぁ~ と 表に出てみると まるで昔の校長先生のような髭の紳士が燕尾服を着て立っていたと
そして 写真を撮ってくれぃ と 店に入って来たと
へいへい 写真でやんすね 撮りましょう 撮りましょう と 電気をつけて準備して
そんでは そこの椅子に腰掛けて下さい 特別良く撮りますからね はい 大きく息を吸ってぇ 止めてぇ~ パチっ と
そのとき ファインダーを覗いていたおんちゃんは 椅子に座っている紳士の本当の姿が見えちまった と
ありゃぁ~ これは、裏山のもっと奥の山に住む古狸じゃないか さては 閑古鳥に頼まれて化けてやって来たんだな と
校長先生のような紳士は ああ ナンボだね? と 料金を尋ねた と
へい 100万円でやんす 特別良く撮りましたから 少し高くなってます と おんちゃんは言った と
ナントまず 100万円とは安いもんだ 前金で置いて行くから受け取れ と 札束を出したと
へぇ~ 現金でやすんかぁ~ コリャァ魂消た と おんちゃんが言うと 古狸は 後で私の娘も写真を撮りに来るから と もう一束懷から取り出して置いて行ったと
こんな物貰ってもなぁ~ どうせクヌギの葉っぱなんだから と 思っていると ゴメンください と 若い娘が入って来た と
ありやぁ~ 狸の娘だな しかし よく化けたもんだ メンコイしな と 思いながらも 気付かぬ振りして はいはい 写真ですね お父様から承っておりますよ と 狸の娘を招き入れて写真を撮った と
写真機を構えて 暗幕を被って ファインダーを覗くと そこに居たのは狸の娘ではなくて 川向こうに住む若い雌ギツネであった と
なんとまぁ~ 閑古鳥のやろうは顔が広いもんだ 古狸の後は雌ギツネか・・・
古狸と雌ギツネでは 貰えるお金は 木の葉のお金 暇つぶしにしか成ら無いんだがなぁ と 少し面白いけれども 腹は減ったままだし と 呟いたと
やべっ・・・写真の修整の仕事が入った 続きは後で
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