のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

仔羊の巣 / 坂木司

2006年08月01日 22時30分48秒 | 読書歴
■ストーリ
 僕、坂木司とひきこもりの友人、鳥井真一の間にも
 変化の風はゆっくりと吹き込んでいた。
 ある日、僕は同僚から同期の女性の様子がおかしいと
 相談を受ける。また、木工教室の講師をすることになった
 木村栄三郎さんの家に通うようになった僕たちは
 地下鉄の駅で見掛けた少年の謎を解くことになる。
 そして僕自身にも町で出会った見知らぬ女性たちから
 悪意が降りかかってくる・・・。
 ひきこもり探偵リーズ第二弾。

■感想 ☆☆☆☆
 第一弾「青空の卵」の感想はコチラ

 はやみねかおるさんの解説がとにかく印象的だった。
 と、本作よりも解説の感想から伝えるのは
 どうかと思うけれど。覚えておきたい言葉なので
 以下に抜粋を書き留めておく。

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 「心はどこにあると思いますか?」
 質問の意味を深く考えずに、「心」と聞いて、僕は
 ハートをイメージしました。だから、なんとなく
 心臓あたりにあるんじゃないかと思いました。

 「心は、自分の胸にあるのではなく、自分と相手の
  間にあるのです。

  だから、ひとりの子どもの心が痛いという状況は、
  まわりの子どもたちが作っているんですよ。」

 坂木先生の物語を読むと、ぼくは、いつも考えます。
 心ってなんだろう。
 ぼくの心はどこにあるんだろう。
 ぼくは、誰かの心に痛みを与えてないだろうか?
------------------------------------------------------
 
 今作でも、坂木君はよく泣く。
 周囲の人の寂しさに共感して。
 周囲の人の哀しさを思いやって。
 そして、鳥井君はそんな坂木君を心配する。
 まるで母親の心配をする幼子のように。

 鳥井君にとって、坂木君はそれだけ大きな存在なのだ。
 その存在の大きさは前作と変わらない。
 けれども、前作では鳥井君にとって
 坂木君=世界、だったことを考えると
 今作では、鳥井君はわずかながらに外の世界や
 外の世界の住人とコンタクトを取り始め
 坂木君が広い世界の一部(というよりは
 「大部分」ではあるけれど)になっていることが見て取れる。
 窓から外を眺める勇気が身についている。

 それはきっと、坂木君の優しさのおかげなのだ。
 困っている人を見かけたら、どうすればいいのか。
 全員を助けられるわけではない。
 自分の力ですべてを解決できるわけでもない。
 けれども、だからといって見てみぬふりをするのは
 あまりにも哀しすぎる。

 自分にはどうにもできないことであっても
 ただ傍にいるだけ、自分が見ていることを
 相手に伝えるだけで、救われることもある。
 自分はひとりではない、という思いだけで
 どうにか踏ん張ることができるはず。

 そういった作者の思いが坂木君というキャラクターを
 作り上げ、傷ついている鳥井君も見守らせているのだろう。

 このシリーズ、あと1作で完結らしい。
 次を読むのが楽しみのような、寂しいような気分だ。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
また読みたい本が増えちゃったじゃないかー。笑 (ぽこり)
2006-08-03 12:41:39
そういえば、人って絶対一人ぼっちじゃないから

自分勝手に痛くなることってないんだね。

そう考えたら、心を痛めたり思いやれる相手がいるって

とても大事なことなんだね。



もちろん相手に痛めつけられるのは嫌だけど、

痛みすら感じられない一人ぼっちの世界の方がもっと辛いね。
返信する
相手に痛めつけられるのは (虚仮)
2006-08-03 19:41:11
>もちろん相手に痛めつけられるのは嫌

それすらも喜びなんだよね。



最近、高3の娘が町立図書館通いをしている。

町内巡航バス(無料)で40分かけて行き

1時間ほど滞在して40分かけて戻る。

いつも、本を10冊(限度)借りてくる。

返信する
お返事☆ (のりぞう)
2006-08-03 23:51:15
■ぽこり

 読みたいと思ってくれた?

 だとすれば、嬉しいです。

 本当に好きな作品なので。



 うんうん。この作品を読んでいると

 トモダチっていいなーとしみじみ思えます。

 一番怖いのは「孤独」なのかもしれないね。



■虚仮さん

 おお。娘さんも図書館通いしてらっしゃるんですね。

 10冊を選ぶ瞬間も幸せなんです。

 あと、帰りのバスで本を読み始める瞬間も。
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