yoosanよしなしごとを綴る

つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

17500の島で成り立つインドネシアは多民族国家、タマンミニは部族ごとの多様な建築表現を展示

2017年04月07日 | 旅行

1985 インドネシアの部族様式
                             
 私のようなごくごく一般的な給与生活者は、飛行機といえばエコノミークラスが相場になる。たまに、成り行きでビジネスクラスに乗ることがあり、エコノミークラスとの雲泥の差を思い知らされて今度こそビジネスクラスと思うのだが、いざとなると、節約すればもう一回海外に行けると思うとエコノミークラスになってしまう。相場とはよくいったものだ。
 エコノミークラスの最大の難点は狭いことだ。必要最小限のスペースにともかく5時間も10時間もじっとしていなければならないのは耐え難いことで、しかも前の席の客が思いきりイスを傾けようものなら身動きもままならず、ただひたすら神の救いを祈るように、食事になるか前の客がトイレにでも立つのを待たねばならない。
 そんなときは高いびきをかいて寝てしまえばいいものをじっと我慢しなければいけないと思った途端、いくら眼をつぶってもあちこちの寝息や話し声が次々と耳元に迫ってきて却って眼がさえてしまう。
 最近は椅子ごとにモニターがつき映画などを楽しめるが、夢想にふけるには機内誌の世界地図を広げ、飛行ルートを辿るのがいい。

 たとえば、マレー半島周辺に点在する島々で構成されるインドネシアはオーストラリアやニュージーランド、フィリンピンにも近く、それらの国々と行き来もしやすかっただろうから、日本のような単一民族と違っていろいろな多民族が集まっているのではないか、島は部族を統率するのに都合がいいから、たぶん島単位で部族国家が成立しているはずであろうし、とするとそれらを連合して国家をつくるためにはそれぞれの部族の独自性をかなり容認しなければならないのではないかなど、勝手に想像をふくらませたりする。
 ところがそんなときに限って、むかし勉強したはずの地理や歴史がほとんど思い出せず答えがみつからないまま想像が堂々めぐりすることも多い。帰国したらもう一回じっくり勉強しようと思ったりするのだが、大概の場合、帰っても忙しさを理由に次から次と棚に上げたままになってしまう。

 しかし、インドネシアの場合、幸いにもジャカルタの国立博物館部族地図が展示してあり、疑問が一気に解けた。その地図には地形や道路網などは一切書かれておらず、代わりに部族の居住地ごとに色分けされていて、地図の周囲に部族長夫婦の肖像が42枚、つまり21部族の夫婦が描かれていた(写真、外務省ホームページ・インドネシア版では27部族とある、21部族は数え間違いかもしれない)。
 よく見ると帽子や衣服は少しずつ異なっている。思い過ごしかも知れないが、離れた島ほど特異性が目立つ。およそ17500の島が5000kmに及ぶ海に分布しているそうで、きっとそれぞれが独自の部族文化を主張した結果と思う。

 さらに幸いだったことは、ジャカルタにタマンミニと呼ばれる民家博物園があって、そこに部族文化を象徴する住まいが展示されていたことだった。
 21部族の民家が展示されていたかどうかは確認できなかったが、園内を横断するロープウェイがあり、そこから見比べると各部族が木造・高床を基本として、独自な建築表現をとっていることがうかがえた。
 たとえば、ミナンカバウ族の住まいは背を少し越えるぐらいの高床の上に2階建てに相当する住まいが乗っていて、屋根は勇壮な牛の角を思わせる反り上がりのついた草葺きである(写真)。外壁は板張りで窓は少なく、壁板には植物をモチーフにした華麗な彩色が一部の隙もなく施されている。
 ほかのトババタック族、カロバタック族、トラジャ族・・のどれも建物の独自な形と紋様のモチーフが特異で、つくづく文化とは民族の独自性の象徴が原動力になっていることを知らされた。

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