<栃木を歩く> 2021.12 塩原を歩く /佐野ラーメン もみじ谷大吊橋 七つ岩吊橋 仙人岩吊橋
佐野ラーメン
「心」「身」の活性化は水分、食事、日光とともに健康な暮らしに不可欠である。2021年12月早々、コロナウイルス感染対策を熟慮して、マイカーでシーズンオフの塩原温泉、那須高原に出かけた。
所用を済ませ、12:00ごろ出発し、東北自動車道・佐野SAで昼食にする。下り線SAは改修工事中で、売店を併設したレストランは仮設だった。
佐野ラーメンはよく聞く。もともと佐野は繊維産業が盛んで、繊維産業の主役だった婦人が昼食の時間も惜しんですぐ食べられるラーメンの出前を利用したことから、ラーメン店が増えたそうだ。佐野ラーメンは醤油ベースの縮れ麺が特徴らしい。外食でラーメンを滅多に食べないので味の違いは分からなかったが、チケットを購入するとすぐにラーメンができあがり、するすると食べ終えられる。周りを見ても回転が速い。繊維産業を担っていたのだから昼食ぐらいのんびりしたい、などと思うと上司ににらまれる、そんな時代だったのであろう。こちらもさっと食べ終え、車に戻る。
箒川もみじ谷大吊橋
東北自動車道・西那須野塩原ICから国道400号線=通称湯の香ラインを西に走る。片側1車線で途中何度か道路整備が行われていたが車は少なくスムーズに流れ、15:00過ぎに那珂川水系の箒川に架かる「もみじ谷大吊橋」に着く。
大吊橋は1999年に完成した全長320m、幅員1.5mの吊り橋で、多くの吊橋は補剛桁で強度を高めるのだが、もみじ谷大吊橋は横にワイヤーロープを張って強度を高める無補剛桁の珍しい構造である(写真、手前に向かってカーブしながら水平のワイヤーロープが張られている)。
もみじ谷の名前から想像できるように、紅葉の時期は大勢が訪れるそうだが、この日は先客の2人連れ、帰りしなの2人連れに会っただけだった。チケット売り場は閉まっていて、隣の「道の駅 湯の香しおばら」の店員が代わりに午後4時閉門ですよと言いながらチケット200円を販売してくれた。
幅1.5mの大吊橋を歩いていると、箒川をせき止めた塩原ダム湖が目に入り吸い込まれそうな気分になる(写真)。無補剛桁だが橋の左右の横に張ったワイヤーロープが効いていて、ほとんど揺れを感じない。中ほどまで歩き、塩原ダム湖、背景の山並みを遠望する。箒川を吹き抜ける風は強く、冷え込んでいる。
大吊橋を渡った先はダム湖公園が整備されているが、柵で囲われていてダムには近づけない。塩原ダムは1979年、「洪水を防ぐ、農業用水を確保する、水量を調節する」ことを目的につくられた重力式コンクリートダム、ダム高さ60m、堤頂長さ240mなどと書かれた説明板が立っていた。見晴台からダムを遠望する。・・10月に多摩川・鳩の巣渓谷の白丸ダムを訪ね魚道を見たばかりなので、塩原ダム湖の魚道が気になったが見晴台からは確認できなかった・・。
「恋人の聖地」と彫られた木板があり、羽を広げた鷹と羽を閉じた鷹の彫刻が見つめあっていた。陽気がよければ恋人たちが訪れるのかもしれない。
風が冷たくなってきたので大吊橋を戻り、道の駅の店員に声をかけ、大吊橋をあとにする。
七つ岩吊橋
箒川に沿った国道400号線=湯の香ラインを西に走る。
塩原温泉街便利地図には、見どころとして回顧の吊橋、七つ岩吊橋、山ゆりの吊橋、紅の吊橋、留春の滝、竜化の滝、天狗岩などが紹介されている。塩原温泉はずいぶん昔に泊まったことがあり、箒川沿いの主だった見どころを散策したが、七つ岩吊橋は記憶になかったので寄ってみた。
駐車場には修復工事中?で重機が置かれていた。七つ岩吊橋の説明板は重機に隠れていたか、見落としたらしい。吊橋は全長87mと短く、構造はシンプルである(左写真)。
吊橋の中ほどから箒川をのぞく(右写真)。川は白波を立てて流れている。川床がでこぼこしているようだ。七つ岩といわれるほどの大岩は見つからなかったが、大小の岩がごろごろしている。川幅が狭いから、大雨では激しい流れになりそうだ。
対岸まで渡ると林のなかに階段が設けられていたが、かなり冷えてきたので車に戻る。
宿から遠くなるが国道400号線=湯の香ラインをさらに西に走ると、温泉街を外れた左に以前来たときに見学した鍾乳洞源三窟があった。この先は町並みが途切れるので、Uターンする。
今日の宿であるかんぽの宿塩原をナビに入れると、国道400号線の信号で右折を案内され、県道56号線に入るとすぐに宿に着いた。
今日はあまり歩いていない。歩数計は9000弱で足の疲れはないが、体が冷えたので温泉でたっぷり暖まる。
和食会席で栃木県南の利き酒セット(惣誉、門外不出、四季桜、)、県北の利き酒セット(南仁沢、旭興、男の友情)をいただいた。県南、県北の大きな違いは分からなかったが、総じてさわやかな口当たりだった。
仙人岩吊橋
翌朝、目が覚めると窓ガラスの向こうでちらちらしている。なんと雪が降っていて、木々は雪化粧(写真)、駐車場はうっすらと積もっている。・・今シーズン2度目の雪だそうだ・・。
チェーンは用意していない。降り続くようなら予定をキャンセルして戻ろうと思っていたら、朝食ごろには雪は止み、薄日が射し始めた。一安心する。
宿の隣は塩原温泉ビジターセンターである(写真)。春夏秋にガイド付きのネイチャーウオークを企画しているそうで、ちょうど20名ほどのガイド研修が行われていた。
散策プランのコーディネートもしてくれるので、1時間ほどの散策を聞いたら、前山八方ケ原線歩道が整備されているので、鹿股川に架かる仙人岩吊橋あたりまで歩いて戻るコースを勧めてくれた。
塩原温泉ビジターセンターを出た先に「前山八方ケ原線歩道」の案内板が立っている。鹿股川は箒川の支流で上流は南の八方ヶ原になり、塩原温泉ビジターセンターを起点に鹿股川に沿って八方ヶ原・学校平まで、直線で8kmほど≒260分の遊歩道が整備されているようだ。
・・2020年6月、八方ヶ原を歩こうと「山の駅たかはら」を訪ねたが濃霧でウオーキングをあきらめたのを思い出した(「2020.6 栃木 八方ヶ原・黒羽・大谷寺を歩く1 八方ヶ原」参照)・・。
林のあいだの遊歩道に雪は積もっていない。風はなく、鳥も啼いていない。ほかに人はいない。静かな遊歩道の落ち葉を踏みながら歩く(写真)。
「下塩原矢板線」という案内板があり、仙人岩吊橋まで0.17+0.13+0.73kmと記されている。緩い起伏の林を歩いていくと、林が途切れ、足下にうっすらと雪が残り、ほどなく鹿股川が見え、仙人岩吊橋に着く(左写真)。全長60mの吊橋なので、構造は七つ岩吊橋よりもさらにシンプルである。
2cmほど積もった雪に刻印を押すように吊橋を渡る。鹿股川も白波が立ち、大小の岩がごろごろしていて、大雨のときの流れの激しさを想像させる(右写真)。
少し汚れているが仙人岩のいわれが説明されていた・・如葛仙人が空を飛んでいるとき山深い谷間に赤サビ色の沢を見つけ、降りてみると温泉が湧いていたので気に入り、少し離れた鹿股川の大岩をねぐらにして暮らした、その後、その大岩が仙人岩と呼ばれたが、崖崩れで仙人岩は埋まってしまった・・そうだ。
川沿いを見渡すが仙人岩とおぼしき大岩は見当たらない。温泉の湧いている赤さび色の沢も見えない。かんぽの宿塩原の温泉は赤サビ色ではなかったから、大岩も赤サビ色の温泉も崖崩れで埋まってしまったのかもしれない。
遊歩道を戻る。結局誰とも出会わなかった。 (2022.2)