白石川堤一目千本桜は、宮城県柴田郡大河原町金ヶ瀬と同柴田町船岡土手にかけて、総延長8kmにわたり1200本の桜並木が続いているそうだ。まさに千本桜である。
JR東北本線は白石川につかず離れずで走っていて、JR大河原駅とJR船岡駅のあいだは白石川に沿って遊歩道が整備されている。二駅のあいだは直線で2.5kmぐらい、桜並木の遊歩道は3.5kmぐらいだから歩けない距離ではない。車窓からも遊歩道を歩く花見客が見える。
白石駅14:20発のJR東北本線仙台行きに乗り、14:33、JR大河原駅で降りる。大河原駅は片流れ屋根の簡潔なつくりである(写真)。三角形全面がガラス張りで明るい。花見に向かう人がぞろりと下りた。
駅前広場には桜まつりのはっぴを着た人が見える。その向こうには花見を終えた人が駅に向かってくる。満足げな顔の酔客もいる。こちらの気分が高まってくる。
桜まつり案内人に桜マップをもらった。表面は上半分が大河原町の観光情報、下半分が柴田町の観光情報、裏面上段が大河原町金ヶ瀬から柴田町船岡土手のかけての桜並木全景マップ(写真)、左下半分に大河原町、右下半分に柴田町それぞれの桜まつり会場、トイレ、パーキング、名所旧跡などが紹介されている。
全景マップには白石川ぞいの絶景ポイントが12ヶ所記されている。
桜マップを片手に、大河原駅から西にまっすぐ、花見客の雑踏を抜けると白石川に架かる尾形橋にぶつかる。尾形橋の右手、白石川の土手下に大河原町桜まつり会場が設営されていて、このあたりが絶景ポイント③である(写真)。
土手上からピンク色に染まった枝を土手下に大きく伸ばした桜はまさに満開、絶景である。毎年、各地の桜を楽しんでいて、それぞれに見事さがあるが、一目千本桜は枝振りの見事さといい、まさに満開の見事さといい、川沿いに延々と続く見事さといい、枝垂れる桜の下を歩きながら間近で鑑賞できる見事さといい、折り紙付きの名所といえる。
絶景ポイント①および②は白石川の上流になり、船岡駅方面とは逆になるのであきらめ、船岡駅にむかって土手をゆっくり歩く。
白石川堤一目千本桜の見どころの一つは、対岸の桜と背景の山並みの雄大な景色であろう(写真)。白石川は川幅もあり、ゆったりと流れている。その川面が手前に光さざめく水平線をつくり、対岸の土手が緑の水平線を引き、満開の桜がもこもとしたピンクの水平線となり、その後に濃い緑茶の山が低く水平線をつくり、その背景に残雪を光らせた雄大な山並みがそびえている。
遊歩道のどこもが絶景ポイントといえなくないが、桜マップには絶景ポイント④両岸に咲き誇る一目千本桜、絶景ポイント⑤韮神堰が特記されている。
絶景ポイント⑥は対岸の韮神山の眺めである。対岸までは足が伸ばせないので⑥はパスする。
遊歩道にはかわいらしい道しるべが置かれている(写真)。絶景の見どころ案内と大河原、船岡両駅までの距離と時間が彫られている。残り時間の目安にもなる。形のいい自然石に彫られた見どころの絵はほのぼのとしている。韮神堰きあたりまでで1.5km弱、桜を見ながらの歩きだから30分ほどかかった。船岡駅まであと2.0kmほどになった。道しるべを眺めながら、一息する。
ほどなく展望ポイント⑦しばた千桜橋についた。JR東北本線をまたぐ橋が新設されていて、橋から一目千本桜を見下ろすことができる。
橋の右手は展望ポイント⑧の船岡城址公園で、満開の桜が見える。ここはまた、山本周五郎著「樅の木は残った」(b263参照)や大河ドラマに登場するゆかりの樅の大木が保全整備されているそうだ。樅の木はパスして、遊歩道に戻った。
このあたりから白石川、桜並木、東北本線が並行していて、線路際は満開の菜の花が目を奪う。桜のピンクと菜の花の黄色の絶妙な組み合わせが絶景ポイント⑨である(写真)。
すぐ先が船岡駅である。すでに1時間以上歩いたので、白石川下流の絶景ポイント⑩さくら歩道橋、絶景ポイント⑪柴田大橋、絶景ポイント⑫日本一のソメイヨシノの巨木はあきらめた。
船岡駅15:54発の仙台行きは花見客で混雑していた。16:25に仙台駅に着いた。改札を出た先の2階ステンドグラスに楽団員がずらり並び、音合わせをしていた。
会場整理のスタッフに聞くと、「仙台駅杜の都コンサート」が開かれると教えてくれた。
2006年から春と秋、池辺晋一郎氏の音楽指導で開催されていて、この日は17:00から、キハラ良尚指揮、仙台フィルハーモニー、ソプラノ守谷由香、テノール糸賀修平で、
モーツアルト「フィガロの結婚より序曲、恋とはどんなものかしら」、
ヴェルディ「リゴレットより女心の歌」、
ロジャース&ハマースタイン「サウンドオブミュージアムより前奏曲、エーデルワイス、全ての山に登れ、ドレミのうた」「南太平洋」「王様と私よりshall we dance」、
マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナより間奏曲」、
プッチーニ「ジャンニ・スキッキより私のお父さん」「トゥーランドットより誰も寝
てはならない」が演奏されるそうだ(写真、開演後の風景)。
すでに特設のパイプ椅子は満席で立ち席しかない。まだ30分ほど時間があるので、ぐるりと見渡したらガラス張りのビアホール「キリンシティプラス」が目に入った。
カウンター席が空いていたので、さっそくお勧めのブラウマイスターとハートランドの味比べをした(写真)。味の違いは分かるが、このまま飲み続けたいと思うほど、どちらも美味しかった。
演奏が聞こえてきたので、ビールを飲み終え、立ち席で演奏を楽しんだ。さすが立ち席はしんどいので、6時半近くに演奏をあきらめ、駅近のこぢんまりした寿司屋に入った。
蛍イカがおいしいというので、握りに加え、中落ちももらって、まず日高見、次に北辰をいただいた。
いい気分でアパヴィラ仙台駅五橋に向かう。 今日の歩数計は17800、天然温泉で足の疲れを癒やし、ベッドに入った。(2019.7)