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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
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イリアーヌ・エリアス/私の中の風と海と空

2005年07月10日 01時21分31秒 | Jobim+Bossa
 「風はジョビン」に続くサムシング・エルス・レーベルでの第2作です(1990年録音)。前作が全編ジョビンのカバーだったのに比べると、今回はジョビンの作品もとりあげていますが、他にミルトン・ナシメント、カネロス・リラ、そしてイヴァン・リンスといったよりコンテンポラリーなブラジルのアーティストな作品を取り上げているのが特徴です。また、メンバー的にはあくまでも前作ラインのゴメス&デジョネットによるトリオがベースになっているものの、一部、マーク・ジョンソンとピーター・アースキンと組んだフォーマットやパーカス、ヴォーカルが入ったトラックも収録されており、より音楽的な広がりを求めて制作されたことがわかります。

 主要な曲を拾っておきます。1曲目はジョビンの「イパネマの娘」からスタート。前作はジョビン集だったのにどうして入ってなかったのって疑問に思っていたんですが、ひょっとしてこのアルバムのためとっておいたかもしれません。前半はミディアム~スローのテンポで、ゆったりかつエレガントに美しく演奏され、終盤近くからサンバ風に賑やかなっていく構成。
 3曲目はナシメント・メドレーで、冒頭はイアーヌの娘アマンダのヴォーカルをフィーチャーして親バカぶりを発揮してますが、本編はマーク・ジョンソンとピーター・アースキンにパーカスをプラスした変則トリオでちょっとフュージョンっぽいリズム・パターンを使って演奏がおもしろい。
 4曲目カルロス・リラの「サービ・ヴォセ」は前作のバラード路線に準じた、キース・アラ・ブラジルみたいな演奏....なんていったら、イリアーヌに怒られるかな(笑)。続く「バイーア」はある意味で一番イリアーヌらしい演奏で、ブラジル的な躍動感とジャズ的なインプロを丸みを帯びた躍動感で表現。
 リンス自身のヴォーカルをフィーチャーしたラストのイヴァン・リンス・メドレーは、とりあえずこのアルバムのいいところを凝縮したといってもいい力作で、アルバム掉尾を飾るに相応しい仕上がりといえましょう。滔々とした流れの中、まるで楽器の如くリンスのスキャット風なヴォーカルがフィーチャーされ、その合間をイリアーヌのピアノが埋めていくといった感じですが、次第に高揚していく後半はなかなか聴き物です。
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イリアーヌ・エリアス/風はジョビンのように

2005年07月10日 00時00分02秒 | Jobim+Bossa
イリアーヌ・エリアスはブラジル出身のジャズ・ピアニスト。ステップス・アヘッド周辺のNYフュージョンの人脈から出て来た人ですから、どちらかといえばキーボード奏者というべきかもしれませんが、やはりこの人、ジャズ・ピアニストでしょう。このアルバムは1989年にサムシング・エルスというブルー・ノート傘下の日本のレーベルに録音された彼女のジョビン集です。彼女はこの前に自分名義の作品としては、同じく日本のデンオンから2枚のフュージョン・アルバムを出していますが、こちらはサムシング・エルスの意向でしょうが、エディ・ゴメスとジャック・デジョネットとのトリオによる、ジャズ・ピアニストとしての彼女を全面に出したアルバムになっています。

 内容は前述のとおりジョビン集。彼女の真面目な性格を反映してか、こうした企画物っぽい日本製舶来ジャズにありがちな、安易に企画に迎合したふやけた演奏ではなく、ジョビンという素材に非常に生真面目に対峙しつつ、自らのジャズ・ピアニストとしての技量を思う存分開陳しているという感じで、聴き応えは充分だし、音楽的感興にも不足しない、なかなかのアルバムになっていると思います。基本的なスタイルとしては、ゴメスとデジョネットを呼んでいることもあって、エヴァンス~ジャレット流儀のピアノ・トリオといってもいいでしょう。
 とりわけ「あなたのせいで」や「アンジェラ」、あと「ジンガロ」といったバラード演奏で、こうした雰囲気が濃厚で、キース・ジャレットがジョビンに挑戦したらこうなるんじゃないか....みたいな感じがするほどです。一方、「ディサフィナード」や「ワン・ノート・サンバ」のような大スタンダードは、ちょっと考え過ぎなというかトリッキーに過ぎたところはありますが、テーマを思い切って変形、込み入ったリズムにのっけて演奏するなどして、「ありきたりボサ・ノヴァにだけにはすまい」という彼女のブラジル人としてのプライドのようなものを感じさせるスリリングな演奏になっています。

 ついでに書くと、個人的にはこのアルバムで気に入っているのは、なんといっても「ジンジ」。アルバム中でも珍しくスレートに演奏していますが、とにかくメロディアスでノスタルジック、もうとろけてしまあそいうなほどロマンティックな演奏が絶品です。ついでに「サビア」はほとんどピアノ・ソロのようなトリオで、これもキース・ジャレット風ではあるんですけど、もう少し女性的なアンニュイな情緒があって、しっとりとした美しさが印象的。ジャズ的な演奏としては、「チルドレンズ・ゲーム」の変形4ビートにのって、お馴染みの旋律が見え隠れしつつ、ホットにインプロを展開させていくあたりの展開が見事で、聴き応え充分です....という訳で、コレ、いわゆるボサ・ノヴァ・アルバムという感じの音楽ではありませんが、夏になると聴きたくなるアルバムであります。
コメント (4)
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