第1試合の興奮冷めやらぬ体育館が、更に湧き上がる。
牧率いる白金学院、そして準々決勝圧倒的な力を見せつけ、勝ち上がってきた慶徳義塾の試合のためである。
場所は東京代々木、舞台は大学、観客に牧、藤真の伝統の一戦を知るものは少ない。
だが、両者から、ただならぬ雰囲気を感じているものは、多かった。
アップをしている両校。
静かに淡々とボールの、リングの、コートの感覚を確認している白金学院。
対して、慶徳は、藤真が指示を出し、5on5の簡単な動きを確認していた。
記者席。
「いよいよですね・・・。」
「チーム力としては、ほぼ互角。いや、わずかに慶徳優勢と見ている。だけど、PGの調子で、それも変わってくる。
藤真君が、どれだけ牧君に追いついたか、はたまた牧君が、藤真君をどれだけ引き離したか。
そこが、チームの勝敗を分けるはずよ。」
「牧君の強さをずっと見てきた僕としては、このまま勝ち続けてほしい気もしますけど、
藤真君や赤木君の想いも知っているからこそ、彼らにも勝ってもらいたかったり・・・。
複雑ですよ。あははは。」
「そうね。私も少し感慨深い試合だわ。」
観客席に、ある一団が現れた。
「おー。ベストタイミングだぜ!席もちょうど空いているし!」
と三井。
お決まりのサングラスをかけている。
「ダンナには勝ってもらいたいが、牧は倒すのはこの宮城リョータ率いる神体大だ。」
「何が宮城率いるだ。打倒牧は、1軍のスタメンをとってから、口にしろ。」
「へい。」
新庄にたしなめられる宮城。
「相変わらずだな。宮城。はっはっは。」
観客席の1列目に座ったのは、白金学院に敗れた横学大の三井。
そして、名稜に敗れた神体大の新庄、宮城であった。
『サッ。』
2列目に腰をかけたのは、拓緑のイケメン3人、花形、大和、織田、そして横学大の品川であった。
「三井も宮城も桜木に似てきたな。」
1列目の3人のやりとりを笑っている。
『プシッ!!』
3列目には、ブラックコーヒーを開けた仙道の姿があった。
ここにいるのは、白金や牧、慶徳や藤真など、第2試合の出場選手に、
何かしら関わったことのある選手たちだった。
「まさか、声をかけた全員が集まるとはな。」
と花形。
「それだけ、みんながこの試合に注目しているということだ。」
大和が答える。
「みなさんは、どちらの応援でしょうか。俺は、一応大さんがいるんで、慶徳です。」
苦笑う織田。
「みんな、身内のいるほうを応援するんじゃないかな。」
と品川。
「となると、俺と三井、宮城、織田は慶徳。新庄、大和と品川、仙道は、未確定・・・。
白金の応援はいないことになるな。」
「こういうことは、先にちゃんと聞いたほうがいい。応援にも力が入るからな。一人ひとり聞くぞ!」
三井が仕切る。
結果・・・。
「おいおい。おめーらちゃんと答えろよ・・・。」
「お前もだろ!」
白金・・・・・・・・・・新庄
慶徳・・・・・・・・・・花形、織田
河田・・・・・・・・・・品川
どっちでもいい・・・大和
眠い・・・・・・・・・・仙道
俺・・・・・・・・・・・三井、宮城
「三井と宮城が同じこといっているのは、ウケるな。さすが、湘北。桜木の性格が移ったな。」
と新庄。
「・・・。宮城のばかやろう!」
「・・・。三井サンこそ!」
「品川の河田もおかしいぞ!!」
「俺の目標だから。」
「・・・。」
「観戦にきたのに、仙道の眠いもおかしいぞ。」
「どーも。少し寝不足気味なんで。」
といって、仙道は昨晩のことを思い出した。
-----------------------------------------------------------------------
<<回想>>
時刻は、0時。
「ふぁーーー。」
(眠い・・・。)
今にも潰れてしまいそうなコンビニのレジに立っている大きな男。
学業、部活と忙しい合間を縫って、アルバイトを始めた仙道彰だった。
『ウィーーーン。』
「いらっしゃ。」
「よぉ。」
「・・・。牧さん。」
「バイト始めたんだってな。」
「えぇ。なぜこんなところに・・・。」
「バイト、何時までだ?」
「もう終わりますよ。」
「外で待ってるぞ。」
「・・・。」
バイトから上がった仙道。
『シュ。』
『パシ。』
「飲め。」
「いただきます。」
牧は、仙道に缶コーヒーを投げた。
コンビニの駐車場、車止めに座る仙道。
壁に寄りかかる牧。
しばしの沈黙。
雲の隙間から、月の光が2人を照らし出したとき、仙道が最初に口を開いた。
「明日、試合でしたよね?早く帰らなくていいんですか?」
仙道は、缶コーヒーを一口飲み、牧に尋ねた。
「・・・。お前の眼から見て、俺たちは、慶徳に勝てると思うか?」
「・・・。」
牧の消極的な発言を聞いた仙道は、少し驚いたが、思っていることを素直に述べた。
「慶徳80%ってところでしょうか。」
「ふっ、少しは気を遣ったらどうだ。」
「そんな話を聞きたいわけじゃないでしょう。」
と仙道は微笑み返す。
「白金に藤真さん、諸星さんを止められる選手はいても、赤木さんを止められる選手はいない。
なにより、牧さんが弱気なら、勝つのは間違いなく慶徳です。」
「・・・。」
再び、しばしの沈黙。
「弱気に見えるか?」
「えぇ。」
真剣な眼差しの仙道。
「そうか・・・。」
「白金が勝つには、120%の牧さんが必要ですよ。前半からね。」
「前半からか・・・。俺は体と心が温まるのが遅いからな。
だが、お前に会って、少し温まった気がする。明日は最初から飛ばせそうだ。」
「神奈川出身者は、みんな打倒牧さんを目標としている。
決して負けるわけにはいかない・・・。トップでいるのも大変ですね。」
「挑戦者のほうが、楽に思えることある。だが、あいつらの想いを中途半端な気持ちで受け止めるわけにはいかない。
明日は、全力で叩き潰すだけだ。」
眼に力の入る牧。
「楽しみにしてます。」
「試合、観に来いよ。」
2人は別れた。
仙道は疑問に思う。
(なんで、俺のところに来たんだろ。)
その真意は、仙道にはわからない。
(慶徳80%・・・。俺と同じ考えか・・・。
だが、それも先程まで。今は、白金が100%勝つと断言できる。
お前に会いに来てよかったぜ。)
牧は微笑みながら、熱くなった胸を冷やすことなく、帰路についた。
-----------------------------------------------------------------------
続く。
牧率いる白金学院、そして準々決勝圧倒的な力を見せつけ、勝ち上がってきた慶徳義塾の試合のためである。
場所は東京代々木、舞台は大学、観客に牧、藤真の伝統の一戦を知るものは少ない。
だが、両者から、ただならぬ雰囲気を感じているものは、多かった。
アップをしている両校。
静かに淡々とボールの、リングの、コートの感覚を確認している白金学院。
対して、慶徳は、藤真が指示を出し、5on5の簡単な動きを確認していた。
記者席。
「いよいよですね・・・。」
「チーム力としては、ほぼ互角。いや、わずかに慶徳優勢と見ている。だけど、PGの調子で、それも変わってくる。
藤真君が、どれだけ牧君に追いついたか、はたまた牧君が、藤真君をどれだけ引き離したか。
そこが、チームの勝敗を分けるはずよ。」
「牧君の強さをずっと見てきた僕としては、このまま勝ち続けてほしい気もしますけど、
藤真君や赤木君の想いも知っているからこそ、彼らにも勝ってもらいたかったり・・・。
複雑ですよ。あははは。」
「そうね。私も少し感慨深い試合だわ。」
観客席に、ある一団が現れた。
「おー。ベストタイミングだぜ!席もちょうど空いているし!」
と三井。
お決まりのサングラスをかけている。
「ダンナには勝ってもらいたいが、牧は倒すのはこの宮城リョータ率いる神体大だ。」
「何が宮城率いるだ。打倒牧は、1軍のスタメンをとってから、口にしろ。」
「へい。」
新庄にたしなめられる宮城。
「相変わらずだな。宮城。はっはっは。」
観客席の1列目に座ったのは、白金学院に敗れた横学大の三井。
そして、名稜に敗れた神体大の新庄、宮城であった。
『サッ。』
2列目に腰をかけたのは、拓緑のイケメン3人、花形、大和、織田、そして横学大の品川であった。
「三井も宮城も桜木に似てきたな。」
1列目の3人のやりとりを笑っている。
『プシッ!!』
3列目には、ブラックコーヒーを開けた仙道の姿があった。
ここにいるのは、白金や牧、慶徳や藤真など、第2試合の出場選手に、
何かしら関わったことのある選手たちだった。
「まさか、声をかけた全員が集まるとはな。」
と花形。
「それだけ、みんながこの試合に注目しているということだ。」
大和が答える。
「みなさんは、どちらの応援でしょうか。俺は、一応大さんがいるんで、慶徳です。」
苦笑う織田。
「みんな、身内のいるほうを応援するんじゃないかな。」
と品川。
「となると、俺と三井、宮城、織田は慶徳。新庄、大和と品川、仙道は、未確定・・・。
白金の応援はいないことになるな。」
「こういうことは、先にちゃんと聞いたほうがいい。応援にも力が入るからな。一人ひとり聞くぞ!」
三井が仕切る。
結果・・・。
「おいおい。おめーらちゃんと答えろよ・・・。」
「お前もだろ!」
白金・・・・・・・・・・新庄
慶徳・・・・・・・・・・花形、織田
河田・・・・・・・・・・品川
どっちでもいい・・・大和
眠い・・・・・・・・・・仙道
俺・・・・・・・・・・・三井、宮城
「三井と宮城が同じこといっているのは、ウケるな。さすが、湘北。桜木の性格が移ったな。」
と新庄。
「・・・。宮城のばかやろう!」
「・・・。三井サンこそ!」
「品川の河田もおかしいぞ!!」
「俺の目標だから。」
「・・・。」
「観戦にきたのに、仙道の眠いもおかしいぞ。」
「どーも。少し寝不足気味なんで。」
といって、仙道は昨晩のことを思い出した。
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<<回想>>
時刻は、0時。
「ふぁーーー。」
(眠い・・・。)
今にも潰れてしまいそうなコンビニのレジに立っている大きな男。
学業、部活と忙しい合間を縫って、アルバイトを始めた仙道彰だった。
『ウィーーーン。』
「いらっしゃ。」
「よぉ。」
「・・・。牧さん。」
「バイト始めたんだってな。」
「えぇ。なぜこんなところに・・・。」
「バイト、何時までだ?」
「もう終わりますよ。」
「外で待ってるぞ。」
「・・・。」
バイトから上がった仙道。
『シュ。』
『パシ。』
「飲め。」
「いただきます。」
牧は、仙道に缶コーヒーを投げた。
コンビニの駐車場、車止めに座る仙道。
壁に寄りかかる牧。
しばしの沈黙。
雲の隙間から、月の光が2人を照らし出したとき、仙道が最初に口を開いた。
「明日、試合でしたよね?早く帰らなくていいんですか?」
仙道は、缶コーヒーを一口飲み、牧に尋ねた。
「・・・。お前の眼から見て、俺たちは、慶徳に勝てると思うか?」
「・・・。」
牧の消極的な発言を聞いた仙道は、少し驚いたが、思っていることを素直に述べた。
「慶徳80%ってところでしょうか。」
「ふっ、少しは気を遣ったらどうだ。」
「そんな話を聞きたいわけじゃないでしょう。」
と仙道は微笑み返す。
「白金に藤真さん、諸星さんを止められる選手はいても、赤木さんを止められる選手はいない。
なにより、牧さんが弱気なら、勝つのは間違いなく慶徳です。」
「・・・。」
再び、しばしの沈黙。
「弱気に見えるか?」
「えぇ。」
真剣な眼差しの仙道。
「そうか・・・。」
「白金が勝つには、120%の牧さんが必要ですよ。前半からね。」
「前半からか・・・。俺は体と心が温まるのが遅いからな。
だが、お前に会って、少し温まった気がする。明日は最初から飛ばせそうだ。」
「神奈川出身者は、みんな打倒牧さんを目標としている。
決して負けるわけにはいかない・・・。トップでいるのも大変ですね。」
「挑戦者のほうが、楽に思えることある。だが、あいつらの想いを中途半端な気持ちで受け止めるわけにはいかない。
明日は、全力で叩き潰すだけだ。」
眼に力の入る牧。
「楽しみにしてます。」
「試合、観に来いよ。」
2人は別れた。
仙道は疑問に思う。
(なんで、俺のところに来たんだろ。)
その真意は、仙道にはわからない。
(慶徳80%・・・。俺と同じ考えか・・・。
だが、それも先程まで。今は、白金が100%勝つと断言できる。
お前に会いに来てよかったぜ。)
牧は微笑みながら、熱くなった胸を冷やすことなく、帰路についた。
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続く。