うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#369 【伸びしろ】

2010-10-07 | #12 大学 新人戦編
第3試合 神奈川の新旧MVP対決と注目された横浜学芸大学と白金学院大学の戦い。

第3Q終了時、16点差をつけ、白金断然有利の状況。

個々の実力、チームの選手層、会場の雰囲気を考えれば、
白金がさらに点差を広げ、勝利するとの大方の予想であった。



だが。



終わってみれば・・・。



横学 83
白金 90




7点差まで詰め寄っていた。



第4Q 脅威的な粘りのディフェンスで、白金の攻撃回数を減らし、爆発的なオフェンスで、得点を量産した横浜学芸大。


三井は、3本の3Pを爆発させる。


仙道は、2本のスラムダンク。

そして、品川への1本のアリウープパスを成功させていた。




「横学大のこの粘りには驚かされたな。」

「牧にしては、珍しく追い上げられたケロ。」

「仙道君、三井君、やはり侮れない選手だったということだね。」

「だが、白金も横学もチームの方向性が決まっていないようだ。それでは、うちには勝てない。」

「この時間帯で追いつかれるとは、白金もまだ敵じゃないぜ。」




バスケットボールは、弱者が強者に勝つことが難しいスポーツである。

だが、たったワンプレーが流れを変えることができるのも事実である。



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<<回想>>

第4Q、序盤。


『ドン!!』


『ピィーーーーーー!!』



「オッフェーーンス!!」



倒れている男は、天井の蛍光灯を眺め、にやついた。


(完璧だぜ。)にや。


右手を上げて、佇む男が一言発する。


「なっなんで、お前がそこにおるんや。」



『スッ。』


首だけを上げ、こう返した。



「直感だ。」


「直感やて・・・。」

「あぁ。牧のパスカットに始まり、今日は冴えに冴えてるぜ。」


三井は危険を顧みず、牧のマークを外し、土屋のオフェンスを止めた。


「調子が上がってくると、少々強引にもいきたくなるよな。なぁ、土屋?」


「!!!」


「仙道に巧く誘われたな。」


「!!!」


三井の後に牧が発した。


「やはり気付いていなかったか。
仙道が三井のカバーしやすい方向へと自然に抜かせたんだ。」


「なっなんやて・・・。」

土屋は、三井から仙道に目線を移した。


「・・・。」

すまし顔の仙道。



(侮ってはへんかったけど、あの山王を倒した三井、IHを制した仙道、
ほんまわいらと差なんてあらへんやないか・・・。)



仙道というスーパープレーヤーを抑えているという一種の興奮状態が、土屋のプレーを単調にさせた。


その一瞬を、仙道は、三井は見逃さなかった。



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時に流れは、リードしているチームに向くとは限らない。

三井のこのワンプレーが、己を奮い立たせ、チームを勢いにノせた。

対して、土屋は、第3Qとは比べ、明らかに失速していた。

思いがけないプレーは、精神的にダメージを与える。



(わいもまだまだちゅうことやな。)


残り時間により、かろうじて白金は三井の、仙道の猛追を交わすことが出来たが。


もしかしたら・・・。


観客たちに、そう思わせたのも事実であった。




「牧!このリベンジ、絶対に晴らすからな!!」

三井の表情は、実に晴れやかだった。

「ふっ、楽しみに待っているぞ!!」


「三井!必ず1部に上がって来くるんやで。また勝負しようやないか!」

「お前に言われるまでもねぇ。なっ?」


『コク。』

仙道が小さくうなずいた。


「打倒深体大!頑張れよ!!」

「あぁ。」



試合結果に波乱はない。


観客にしてみれば、予想通り、白金が駒を進めた形だった。


それ以上、以下でもない。


だが、白金の選手の心には、大きな大きな傷跡が残された。


簡単に勝てるとは思っていなかったが、予想以上の接戦は、体力的にも精神的にも疲労を残す。



両チーム、別々のロッカールームへと足を向かわせた。



「手強いチームでしたね。」

と神。

「ここまで来て、楽なチームなどないさ。」

(三井と仙道か。コンビを組んで2ヶ月であのプレー。2年、いや1年後はどうなっているか・・・。
想像するだけで、楽しみな連中だ。)

と牧。


「この先、楽しみなチームの一つですね。」

「伸びしろは、十分にあるしな。」


「それは、うちも同じやで。」

「土屋さん。」


「第4Qの失速はわいのせいや。チャージングもそうやったが、
全体を通して、神へのパスアウトが少なかったのは、まだまだ練習不足な証拠や。
もっと神を使えるようにせなあかんな。」

「俺がチームに加わってまだ2ヶ月ですから。」

「そんな悠長なことゆうてられへん。次は、わいと牧でお前の力全て出し切らせてやるから、期待しときや。」

「はい。わかりました。」



表情にさえ出さなかったが、この日、神は不完全燃焼であった。

海南時代、30点に近い得点アベレージを残す神にとって、この日の17得点は物足りない。

大学という舞台、三井、仙道という強豪選手とのマッチアップなどの影響もあったが、
本人にそんな理由は関係ない。



「粕谷。あとで、練習付き合ってもらっていいかな。」

「トゥース!」



神は、同じく不完全燃焼で終わった粕谷を練習に誘った。


今でも続けている練習、試合後の3P500本練習。


努力は裏切らない。


この言葉を誰よりも理解していたのは、紛れもなく神であった。




白金学院大学。

彼らには、この先、まだまだ強くなる要素が山のように積み上げられていたのであった。




一方、横浜学芸大。

これから、試合を迎える慶徳義塾大学の選手とすれ違った。



「ん!!」

(赤木!)

「頼んだぜ!」


「フン。牧を倒すのは慶徳だ。観客席でゆっくり見ておれ。」


『バシ。』


三井は、すれ違いざまに赤木の肩を叩いた。



「どうだ、白金は?」

「しんどいですね。しかも、まだ伸びるチームです。
この先、どこまで強くなるか検討もつきませんよ。」

仙道は、藤真の問いに苦笑った。


「それは、お前たちも同様に見えたが。」にこ。

「ふっ。」にこり。

微笑む藤真と仙道。


「試合、頑張ってください。」

「あぁ。打倒牧まで突っ走るよ。」

藤真は、軽く手を上げた。



まもなく、第4試合 慶徳義塾大学(1部)と法光大学(1部)の試合が始まる。








続く。