トシの読書日記

読書備忘録

10月のまとめ

2018-11-21 21:56:59 | Weblog



10月のまとめをやるのをすっかり忘れておりました。10月に読んだ本は以下の通り


深沢七郎「みちのくの人形たち」
坂口安吾「勝負師」
村上春樹「風の歌を聴け」
村上春樹「1973年のピンボール」


と10月も4冊でした。深沢七郎、坂口安吾、共にちょっとぴんときませんでしたね。そしてそしていよいよ村上春樹祭りの開催です。ほかの本も読みながらやっていきたいと思っておりますので、全部読み終えるのは、かなり先のこととなりそうです。


自分の「読みたい本リスト」というのがありまして、要するに買いたい本ということなんですが、そこに30冊くらいの本がリストアップされております。しかし、その前に買ってはあるものの、まだ読んでない本(その中ですぐにでも読みたい本)というのが10冊くらい控えております。


まぁ何年も前からこんな状態があ続いてるわけなんですが、そんな中で村上春樹のほぼ全作品を再読しようというんですから、もう自分でもあきれております。しかし、誰に強制されて読むわけでもないんで、こうやって本に埋もれながら楽しい人生が送れれば、もうそれでいいのではないかと思っております。


10月 買った本 0冊
    借りた本 8冊

美しい耳の彼女

2018-11-20 15:40:38 | ま行の作家



村上春樹「羊をめぐる冒険(下)」読了



本書は昭和60年に講談社文庫より発刊されたものです。


さて、「僕」はいよいよ北海道へ渡ります。星形の斑紋を持った羊を探しに出かけるわけですが、何日もかかってあちこち回って手がかりを見つけようとするも徒労に終わります。しかし、秘密を解く鍵は意外なところにあったんですね。「僕」と耳の美しい彼女が宿泊先に選んだ「いるかホテル」の支配人の父親が、世間では羊博士とよばれていて、ホテルの最上階に住んでいるということを知ります。村上春樹が主人公にひんぱんに言わせるセリフ、「やれやれ」がここで非常に印象強く効果を発揮します。


そしてその羊博士に会って話を聞いてみると目的の羊は十二滝町にいるらしいことがわかる。「僕」と彼女はそこへ向かうわけですが、そこには鼠の父親の持っている別荘があって、鼠はそこによく滞在するらしいことがわかります。


で、その別荘に行ってみるんですが、いつでも住めるような状態になっているにもかかわらず誰もいない。それもそのはず、鼠は「僕」達が訪れる1週間前に首をくくって自殺していたんです。何故というに、鼠の中に羊が入ったから。このあたり、説明が面倒なんで省きますが、いよいよ村上春樹のファンタジーのエンジンがかかり始めます。この死んでしまった鼠と「僕」との会話のシーンがこの小説の白眉ではないでしょうか。やっぱり村上春樹、このへんはすごいです。


村上春樹の小説、いつものことなんですが、回収されない謎というのが、もうこの作品あたりから出てきてます。何故、羊は鼠の中に入ったのか?耳の美しい彼女は何も言わずに別荘を出た後、どうなったのか?等々。まぁいつものことなんでこのへんはいいでしょう。


昔、初めて読んだときは、最後の20項くらいをそれこそ夢中になって読んだ覚えがあるんですが、今回はそれほどでもなく、けっこうクールみ読めました。なんでしょうね。それはともかく、自分は村上作品の中で、本書がイチオシですね。村上春樹ワールドが3作目にして一気に開花したという印象です。


次、本書に負けず劣らずすごい作品を連続でいってみます。



マーガリンの味

2018-11-13 15:39:14 | ま行の作家



村上春樹「羊をめぐる冒険」(上)読了



本書は昭和59年に講談社文庫より発刊されたものです。


さて、いよいよ村上春樹青春3部作の大トリであります。本作より、かなり物語性が増して、より小説らしくなっております。


「僕」は離婚したあと、仕事の関係で知り合った奇跡的に耳の美しい女性と付き合うようになる。そして「鼠」から来た手紙に入っていた写真が元でとんでもない事態に巻き込まれるわけです。このあたりのストーリー展開、なかなか読ませます。「僕」はその写真に写っている星形の斑紋のついた羊を探しに耳の美しい彼女と一緒に北海道へ行きます。一ヶ月以内にその羊を見つけることができないと「僕」はとんでもないことになってしまうようです。


さて、どのような展開が待っているのでしょうか。いよいよ下巻に突入です。

スリーフリッパーのスペースシップ

2018-11-06 16:30:43 | ま行の作家



村上春樹「1973年のピンボール」読了



本書は昭和58年に講談社文庫より発刊されたものです。デビュー2作目です。


この頃の村上作品は、文芸誌「群像」に掲載した後、単行本になったりしているので、出版社は当然講談社ということになります。


本書は前作の「風の歌を聴け」よりはもう少し物語性が濃くなっていますが、でもやはり散文調の色は残っていますね。「僕」と「鼠」の物語が交互に語られていきます。


「僕」は昔、夢中になって遊んだピンボールを探して回るんですが、自分の記憶では全編そんな話だと思っていたんですが、ピンボールを探し始めるのは小説の後半、118頁あたりから、残り70項くらいのところだったんですね。前回読んでからかなりの年月が経ってからの再読だったんですが、感動的なシーンがあります。人のつてで自分の探し求めていたスリーフリッパーのスペースシップが、元は養鶏場だった冷凍倉庫にあり、そこには78台ものピンボールが並んでいました。そこ、少し引用します。


<スイッチはその扉のわきにあった。レバー式の大きなスイッチだった。僕がそのスイッチを入れると、地の底から湧き上がるような低い唸りが一斉にあたりを被った。背筋が冷たくなるような音だ。そして次に何万という鳥の群れが翼を広げるようなパタパタパタという音が続いた。僕は振り返って冷凍倉庫を眺めた。それは78台のピンボール・マシーンが電気を吸い込み、そしてそのスコアボードに何千個というゼロを叩き出す音だった。>

 
この部分、想像するとぞくぞくしますね。


大学生の頃付き合っていた直子という女性が、後に自殺し、「僕」は喪失感を抱えたまま大学を卒業し、就職する。そしてある日突然双子の女の子が家にいて、奇妙な共同生活が始まる。これはその喪失感を埋めるための村上氏の作意なのかなと思いました。そしてピンボールとの再会。ここで「僕」はそういった過去のものと訣別して前へ進もうと決意したのだと思います。なので双子の姉妹との別れで物語は終ったのでしょう。


深読み(?)するとなかなか味わい深い作品なんですが、「風の歌を聴け」のようなスカした感じは未だ全編に漂っていて、そこはちょっと読んでいてやっぱり少し恥ずかしいです。


この勢いで次、いってみましょう。