トシの読書日記

読書備忘録

稀有な極東の国のポストモダニスト

2020-02-25 15:55:07 | た行の作家



高橋源一郎「さようなら、ギャングたち」読了



本書は1997年に講談社文芸文庫より発刊されたものです。初出は1981年といいますから、今からおよそ40年前に書かれた小説ということになります。


しかしすごいですね、これは。っていうか、ブローディガンの影響をまともに受けていると感じるのは私だけでしょうか。それほどブローディガンを読んだときのインパクトと同等のものを受けました。目指すものは全く違うと思うんですが。


かなりポップなタッチで書かれた断章の積み重なりでできた作品なんですが、最初はこれをどう受け止めたらよいものやら少し戸惑いましたが、読み進むにつれ、これはこの世界を楽しめばいいんだと思い、そして充分楽しませてもらいました。


詩人の「わたし」と恋人の「S・B(ソング・ブック)」と猫の「ヘンリー4世」の二人と一匹が繰り広げる数々の出来事が綴られていくんですが、読んでいて思ったのはこの小説は「死」という概念が一般的に自分達が思うものとは少しずれたところにあるということ。「わたし」と「S・B」の間にキャラウェイという女の子が生まれるんですが、その子が幼いうちに亡くなってしまうんです。しかし、死んでもまだお話ができるという不思議。


また、途中にギャングたちが出てくるんですが、その中の一人、「美しいギャング」がナイフを自分の体に突き刺し、心臓を取り出して放り投げる場面があって、「あれえ?まだ胸の中がドキドキしてらあ」と言わせるシーン。


死に対する概念をくつがえし、読み手に登場人物の死に感傷的にさせないような企みをしているかのようです。もしそうであるとするならば、そういった意味でもかなり斬新な作品といえるのでは」ないでしょうか。


しかし、こういったアヴァンギャルドなやつを読むと楽しいですね。こういうの、好きです。


てなわけで次もそんなようなテイストのやつをいってみたいと思っております。

生きることの虚しさ

2020-02-18 15:33:33 | ま行の作家


松家仁之「光の犬」読了

本書は2017年に新潮社より発刊されたものです。


夜、仕事終わりで帰る車の中、よくNHKラジオの「ラジオ深夜便」を聞くんですが、月に一度くらい「やっぱり本が好き」(だったか?)というコーナーがあり、長江朗という、作家で書評家の人がいろいろな本を紹介していて、本作品も取り上げられていて(大分前ですが)、興味が湧いて買ってみたのでした。


441頁という長編で、読了するのに少し時間がかかりましたが、かなり読み応えのある作品でした。


北海道に住む添島一家の三代にわたる物語です。父、眞二朗、母、登代子、長女、歩、その弟、始、そして眞二朗の三人の姉たち、眞二朗の母、よね、それから添島家で飼われていた北海道犬たちと、主な登場人物はこんな感じです。


特に主人公というものはなく、語り手も歩だったり始だったり登代子だったりと、いろいろに変わります。全体にとりとめもない話の流れという印象で読み終え、なんだかなぁという読後感だったんですが、時間が経つにつれ、じわじわと感動がこみ上げてくる感じで、ちょっと自分でそれに驚いています。堀江敏幸のテイストにも少し似ているところも自分のストライクゾーンだったのかも知れません。


読んでいる間は自分の評価は少し低かったんですが、今は全然違いますね。やっぱりいいです、この小説。


姉の歩と弟の始の細やかな心情が、幼いときから50代半ばまでの人生が精緻に描かれていて、それが心にじんわりと染みてよかったですね。歩は30代半ばで癌で亡くなってしまうんですが。


この松家仁之という作家の他の作品も読んでみたくなりました。まぁその前に読みたい本が山ほどあるので、どうなるか分かりませんが。 


ネットで以下の本を購入 

カルロ・ロヴェッリ著 冨永星訳「時間は存在しない」NHK出版


そして姉から以下の本を借りる

アンナ・カヴァン著 佐田千織訳「あなたは誰?」文遊社

1月のまとめ

2020-02-04 16:19:35 | Weblog

1月に読んだ本は以下の通り


 岸本佐知子編「変愛小説集」



と、たったの一冊でありました。半年ほど前に、ユーチューブで山本太郎の演説の動画を見て感動してから、ずっとれいわ新撰組を応援しているんですが、それに関連して日本の経済の話とか、そんなのばっかり見るようになってしまって、読書に時間が割けなくなってしまったというのが今の私の現状であります。しかし、そうやっていろいろ見ていくと、今の安倍内閣はもう滅茶苦茶ですね。大企業と経団連に忖度した政策ばかりで、庶民の方を全く見ていない。山本太郎のおかげで政治に興味を持つようになりました。れいわ新撰組が政権を獲る日を心待ちにしております。


1月 買った本3冊
  借りた本0冊