トシの読書日記

読書備忘録

10月のまとめ

2019-10-29 11:29:12 | Weblog



今月読んだ本は以下の通り


阿部昭「天使が見たもの」
平松洋子編「忘れない味」


と、2冊に終わってしまいました。先月、先々月と、ちょっと調子よかったんですがね。


今日はこの後、名古屋市内へ出て、映画を観てくるつもりです。「イェスタディ」という、ビートルズの存在しない世界で、一人のミュージシャンがビートルズのカバーをするだけで爆発的に売れていく、という話らしいんですが、なんだか面白そうじゃないですか。



10月 買った本2冊
    借りた本0冊

食べることへの羞恥

2019-10-22 10:22:10 | は行の作家



平松洋子編「忘れない味」読了



本書は平成31年に講談社より発刊されたものです。


食にまつわるエッセイのアンソロジーです。27人の作家、詩人、ミュージシャンらが、食べることに対する思いを綴っています。まぁよく見かけるやつですね。


山田太一のエッセイに心惹かれました。戦後のどさくさを経験した人ならではの食に対する考え方、これは現代人も考えなくてはいけないのではないかと思いましたね。食べることが恥ずかしいという感覚。この気持ち、よくわかります。ちょっとまひしてました。


全体になかなか面白い内容だったんですが、ただ一つ、苦言を呈したい。高橋久美子という、元チャットモンチーのメンバーだったらしい人が書いた「仲間」というエッセイ、夫の話をだらだらと書いていて、読んでてなんだか腹が立ってきて、途中で読むのを止めました。本を読んでいて難解すぎてギブアップすることは、ままあるんですが、腹が立って本を閉じるというのは自分の記憶にちょっとないくらいです。


夫ののろけとちょっとセレブ気分?みたいな文章で、編者の平松さん、こんなの載せちゃダメですよ。


若干後味の悪い読後でありました。



今日は臨時の祝日のようですが、お店は休みです。娘夫婦が家を新築しまして、家族全員でその新居に集まろうということになりました。長男夫婦、二男夫婦と孫二人、娘のところにも孫が一人おります。子供もいれて全部で12人!自分の父も参加します。もう93なんですが、元気なもんです。

少年の見た夢

2019-10-15 18:16:06 | あ行の作家



阿部昭「天使が見たもの」読了



本書は平成31年に中公文庫より発刊されたものです。


少年を題材とした全部で14編の短編を収めた作品集です。この中で、表題作になっている「天使が見たもの」を、例のFM愛知、小川洋子の「メロディアスライブラリー」で取り上げていたので、興味が湧いて買ってみたのでした。


その「天使が見たもの」、これはすごい作品でした。もう、救いようのない結末になっています。少年の母親に対する愛、依存、甘え、そういったものが強いだけに涙を誘います。つらいエンディングでした。


この阿部昭という作家、自分は多分初めて読むんですが、感情的なものを排して淡々と物語を進めていく筆致は、決して嫌いなものではないんですが、その作品が著者の生活をモチーフにしたであろうものをフィクションに仕立て上げたような手法が多く、それが自分の好みにはちょっと合わないかなと思いました。


ま、こんな作家もいるということで。


ネットで以下の本を購入


平松洋子編「忘れない味――「食べる」をめぐる27篇」講談社
ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳「掃除婦のための手引書」講談社

9月のまとめ

2019-10-08 15:30:13 | Weblog



9月に読んだ本は以下の通り


スティーブン・ミルハウザー著 柴田元幸訳「私たち異者は」
平野啓一郎「ある男」
山尾悠子「歪み真珠」
岸政彦「図書室」


と、なんと4冊も読んでしまいました。ここ最近では快挙といってもいいのではないのでしょうか。自分に合う合わないはあるものの、どの読書も自分にとってはいい体験になりました。中でもミルハウザーは白眉でしたね。進化したミルハウザーに出会うことができました。

さぁ、10月もがっつりいってみましょうか。



先週、名古屋池下の古川美術館で書家の石川九楊という人の「書だ!」というのをやっていて、見に行ってみたんですが、こいつはすごかった。もはやアートですね。墨を使った絵画です。そしてこんな言い方はどうかと思うんですが、便所の落書きのようなものもありました。これも新鮮で新しい体験でした。



9月 買った本 3冊
   借りた本 4冊

その記憶の一瞬

2019-10-08 15:09:40 | か行の作家



岸政彦「図書室」読了



本書は今年6月に新潮社より発刊されたものです。著者は本業は社会学者で、今年で52才になられる方です。前作の「ビニール傘」が芥川賞候補になっています。 


新潮社のメールマガジン「考える人」というのが配信されているんですが、その中に岸政彦の「にがにが日記」というのがあって、これが滅法面白くてそれで興味が湧いて手に取ってみたのでした。


がしかし、この小説、出来としては今ひとつですねぇ。主人公の40才の女性の小学校時代の回想シーンが延々続くんですが、これがあまりにも長すぎる。これをもっとコンパクトにまとめて、現在の心の移ろいのようなものを書いていったらもっと心に沁みる作品になったのでは、と思いました。


なんて偉そうに突っ込んでみましたが、まぁこの方、物書きが専門ではないのでこんなもんですかね。


ちょっと残念でした。


ネットで以下の本を購入


阿部昭「天使が見たもの」中公文庫

綺想の形而上学

2019-10-01 14:14:20 | や行の作家



山尾悠子「歪み真珠」読了



本書は平成31年にちくま文庫より発刊されたものです。


本作家は以前、「ラピスラズリ」という作品を読み、その独特の世界観に瞠目したものですが、本書もそれと似たような流れになっています。


全部で15の掌編から成る作品集なんですが、時代も場所も特定できないような(中世のヨーロッパ?)シチュエーションで、繰り広げられる奇想天外な物語の数々。それはそれでめちゃくちゃ面白いんですが、自分はむしろ「水源地まで」のような我々の日常にやや近いような設定の上に山尾悠子の持ち味を活かしたような作品に惹かれました。


いずれにしろ、山尾悠子、ただ者ではありません。解説の諏訪哲史氏、彼はこういう世界がほんと、好きなんですね。嬉々として解説しています。文字通り、しっかり解説しています。この諏訪哲史の文章の素晴らしさ、これも申し添えておきます。