能率技師のメモ帳 中小企業診断士&社会保険労務士のワクワク広島ライフ

マネジメント理論を世のため人のために役立てるために・・・経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

能率十訓 -人生を能率的に生きるために- 能率学者上野陽一が残した生き方論・キャリア論

2011年02月25日 | マネジメント

「能率の父」と呼ばれた能率学者上野陽一が残した「能率10訓」。

目的と手段のバランスを一義とする「能率」コンセプトを明快に示しています。


能率10

 

1.     ドンナ イトナミヲ スルニモ ソノ 目的ト 目標トヲ アキラカニ シ マズ コレヲ 確立セヨ. 目的ト 目標ノ ハッキリ シナイ トコロニワ ハゲミガ オコラヌ.

 

2.     ソノ 目的ト 目標ヲ 達スル タメニ モットモ 適合シタ 手段ヲ エランデ コレヲ 実行ニ ウツセ.

 

3.     モシ ソノ 手段ガ 目的ト 目標ニ 適合シテ イナイト アルイワ ムダ アルイワ ムリ ヲ ウム.

 

4.     ヒト・モノ・カネ ヲ ハジメ 時間モ 空間モ コレヲ 十分ニ 活用スル ヨーナ 目的ノ タメニ ツカエ.活用ガ タダシク ナイト ヤハリ ムダ マタワ ムリヲ ウム.

 

5.     ムダト ムリ トワ ソノ 性質 相反シ ヨノナカニ ムラヲ ツクリダス モトニ ナル.

 

6.     ムラガ ヒドク ナルト 大事ヲ オコス. ツネニ ムダヲ ハブキ ムリヲ ノゾイテ ムラヲ スクナク スルコトニ ツトメヨ. コレヲ オコタルト 社会ワ 不安ニ ナル.

 

7.     能率トワ ムラヲ ヘラシテ スベテノ ヒト ト モノト カネ トガ イカサレテ イル 状態デ アル.

 

8.     スベテノ モノ(ヒト モノ カネ 時間 空間)ヲ イカス モノワ イカサレ コレヲ コロス モノワ コロサレル.

 

9.     人生一切ノ イトナミガ コノ 能率ノ 主旨ニ モトヅイテ オコナワレ ナケレバ 社会ワ 安定セズ 人類ワ 幸福ニ ナレナイ.

 

10.  ソノ タメニワ 個人モ 家庭モ 企業 ソノ他ノ 団体モ ソノ イトナミヲ 能率的ニ 運営スルコトガ 必要デ アル.


能率十訓は、「能率の父」と呼ばれる上野陽一(1883~1957)が、科学的管理法をベースとして日本的に翻訳された能率の思想と実践を10の短いセンテンスでまとめたものです。

昭和四年、1929年(世界大恐慌)のことです。


テーラーの著作「科学的管理法」が論理的、学術的であるのに対し、ムリ・ムダ・ムラを嫌う上野が最終型としてまとめ上げたのが10の短文形式。

1では目的と目標の重要性とそれらが「ハゲミ(励み)」の土台となること、

2では目的と手段の適合関係とその実行大切であること、

3では目的と手段が適合しないとムダ・ムリを生み出すこと、

4ではヒト・モノ・カネという経営資源のほかに時間や空間も活用する必要性があること、

5ではムダとムリは世の中にムラを作り出すということ、

6ではムラがひどくなると大事を起こすこと(社会が不安になる)、

7では能率とはムラを減らし、ヒト・モノ・カネを活かすことであること、

8では全てのものを活かすモノは活かされ殺すモノは殺されること、

9では人生一切に能率が必要であるということ、そして最後に個人・家庭・企業・団体では能率的に運用することが必要であることをまとめています。

生産現場を起点とした科学的管理法が、個人・家庭・企業・団体にまで拡大された日本版科学的管理法にまで拡大したのです。

米国より輸入された理論が、単なる翻訳ではなく意訳され風土に溶け込んだということが出来ると思います。


上野陽一は、心理学を起点として広告心理や消費者行動、商店指導等についての高い専門性を有していました。

能率十訓、3ム(ムリ・ムダ・ムラ)というキーワードなど上野は能率の普及のために誰もが分かりやすい言葉、広告でいうAIDMAの法則、コピーライターとしての訴求技術を想起させます。

上野陽一が研究を続けてきた産業心理学・・・具体的に表出した「能率十訓」だと思います。


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ワークライフバランスと能率 能率で産み出された時間、モノ、カネは、別のことに再投資されるべき

2011年02月19日 | マネジメント

「能率を追及すると、忙しい人生になりますね。もっとのんびりしたいものてすね。」

クライアントから指摘されました。

 

「能率とは、目的と手段のバランスがとれていることですが、実は、能率を追及すると逆にスローで余裕のある人生を送ることができるのです。」と私。

能率への大きな誤解の一つが、労働強化、ムリ・ムダ・ムラの徹底排除などのノルマ強制による人間への圧迫。

これは、20世紀初頭、科学的管理法を主張したF.W.テイラーに対して労働者や労働組合などから非難を受けたことと同根です。

能率で産み出された成果である時間、モノ、カネは、別のことに再投資されるべきなのです。


「能率の父」上野陽一は、日本で最初の経営コンサルティングの現場である小林商店(現ライオン株式会社)の能率の指導を行いました。

ここで産み出された改善成果により、上野は経営者と協議の上、工場労働者に対し午前午後の2回15分間の休憩時間を設定し、従業員より大変喜ばれたということです。

また、上野の指導した中山太陽堂では改善により産み出された成果をベースにして化粧品の増量を行いました。

これにより販売促進につながるという結果を残しました。

上野陽一は、能率の成果が、経営・従業員・消費者に還元されるべきことを一貫して主張し続けたのです。

つまり、能率を増進し、産み出された成果は、趣味や仕事や家族サービス等に再投資し、より充実した人生にすることができるのです。

2時間でやっていたことを1時間でやるよう創意工夫努力する、1万円かかっていた経費を半分にし、その差額を世のため人のために使う・・・。

まさに、能率とワークライフバランスは繋がっているのです。

しかしながら、最近のワークライフバランス論は、休むこと、労働時間短縮だけにスポットライトが当たっています。

能率追及による生産性の向上がなければ、WLBは怠惰やサボリになりかねないのです。


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雑音・騒音と能率 不要、不快な音を聞かされない権利・・・主張できる日が来てほしいものです

2011年02月19日 | 日記・エッセイ・コラム

JR駅のホームでも、新幹線に乗っても、街を歩いても、エスカレータに乗っても、本当に騒々しいですね・・・。


「白線の後ろに下がってください」

「黄色い線の後ろへ・・・」

「不審な荷物を見かけたときは・・・」

「マナーモードにしてください・・・」

「次に二番線に入る電車は・・・」・・・。


「わかってるちゅーの!」思わず叫びそうになる私です。

新幹線で爆睡しているとワゴンを引く女性の声で目を覚ましたり、この間などは改札の車掌さんに肩を叩かれ切符を見せる・・・。

それにタバコは吸えないし、新幹線ホームでも端っこまでいかないといけないし・・・(これは関係ないか)。

車内放送や店内放送でキチッと告知していないと何か事故が発生したときに責任を取らなければならないとか、行政当局からの指導とかがあるのかもしれませんが、それにしても不要な雑音・騒音が多すぎるように思います。

戦う哲学者中島義道氏が「うるさい日本の私」(日経ビジネス文庫)で指摘されているように、日本の「音」はまさに異常な状態です。

日本の不統一な都市景観といったことも取りざたされていますが、それ以上に音の問題は異常事態だと思います。


能率技師の立場からすると、

1.目的を達成するための手段としての「音」の内容と本来の目的とを再度照合し不要な音は消すこと、

2.聴覚以外の視覚やユニバーサルデザイン等での訴求手段への差し替えという解決策があると考えます。


しかし、それ以上に文化である「音」への感性や感覚を大切にするリベラルアーツが極めて重要です。

静寂を旨とする日本文化の伝統がどんどんと過去に追いやられている状況に胸が痛みます。

不要、不快な音を聞かされない権利・・・主張できる日が来てほしいものです。


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マネジャーの実像 管理職はなぜ仕事に追われているのか?ミンツバーク博士からの提言

2011年02月11日 | 本と雑誌

マネジャーの実像 管理職はなぜ仕事に追われているのか?

ヘンリー・ミンツバーク著

日経BP社 2,940円


現場で管理職として活動されている方にとって、本当に癒しとなる一冊です。

現場至上主義のミンツバーグ博士が名著「マネジャーの仕事」から36年ぶりに執筆した一冊。

29名のマネジャーに調査をかけ、さらなるバージョンアップをしています。

情報、人間、行動ほベースとしたマネジャーモデルは、管理職を経験した方なら、思わず納得する汎用モデル。

仕事の中で、このモデルを見ながら内省すれば、プレッシャーやストレスからも解消されそうです。

マネジメントと言えば、すぐにPDSやPDCAというマネジメントサイクルを持ち出す人、マネジメントを管理と訳する人、マネジメントをリーダーシップや意思決定ととらえる人・・・さまざまです。

マネジャーをやっていると、現場の中でマネジメント理論どおりに進めることは、ごく稀。

実際、トラブル処理や窮地を乗り切るといった泥臭い生々しい話がほとんどだと思います。

カールソン博士の指摘した「マネジメントは応用科学というよりは、実践の職人芸」という切り口には思わず膝を叩きます。

前著の「MBAが会社を滅ぼす」で指摘した頭でっかちの理屈屋さんには、人間の機微、喜怒哀楽に鈍感で、人や集団は動かすことができないと思います。

ビジネスの現場でキッタハッタをしていない学者や理論家には、マネジメントを語れない!

まさにヴィットゲンシュタインの「語れない」世界なのです。

ビジネス現場のバタバタを乗り切る技、気力、気合い、根性・・・。

今、マネジャーに求められているのは、ミンツバーグ博士の言う「自然なマネジメント」だと思った一冊でした。


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冨山和彦著「挫折力-一流になれる50の思考・行動術-」 若者は意図的に早めの挫折をすべき!

2011年02月05日 | 本と雑誌

剛腕冨山さんの著作。

挫折をバネにガンバレ!といったサラリーマンへの応援歌といった先入観で読み始めたのですが、著者の本気モードに引きづり込まれ一気に読んでしまいました。

読者へは「若者たち(及び若き心を失っていない中高年たち)へ」の呼びかけから始まります。

このカッコ部分が良いではありませんか。


著者は、経歴上エリート街道を邁進した方。

東大法学部・ボストンコンサルティンググループ・スタンフォード大学MBA・司法試験合格・・・。

その行間で修羅場を体験したリアルな記述、生々しい生き様には圧倒されます。

この著者が挫折について語り、それなくしては成功はないという主張は圧巻です。

そして、日本の組織やエリートの脆さ、不合理性、権力の恐ろしさ等について、体験ベースの解説には思わず膝を叩きます。

日々の仕事の中で、当たり前だと思っていること、仕方ないと思っていること等を今一度見直してみなければと反省した次第です。

著者の言う若者は意図的に早めの挫折をすべき、という指摘も大前研一「この国を出よ」の主張と同じ方向性です。

プランドハップンスタンス理論、意図した経験獲得で自身のキャリア、スキルを伸ばしていくことも重要です。


今まで様々な挫折に打ちのめされてきましたが、今にしてみれば確かに自分の力になっているような気がします。

冨山さんの挫折に比べれば、ほんの些細な挫折ですが・・・笑。


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