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今日の筆洗

2017年01月07日 | Weblog

 <初鶏(はつとり)やひそかにたかき波の音>は、久保田万太郎の句。酉(とり)年だけに、初鳴きの声も一層高らかに響いたかもしれぬが、私たちに鳥の言葉を理解する力があったなら、朝一番のコケコッコーはどう聞こえるか▼「夜明けだぞぉー」とは聞こえないらしい。あれは「ここは、俺の縄張りだぞぉー」と宣言しているというのだ。一羽が鳴くと、他の鶏も次々と鳴き交わすが、そこにはルールがあることを、名古屋大学の吉村崇教授らが突き止めた▼最初に鳴くのは、群れで最高位にいる雄鶏(おんどり)で、続いて序列二位、三位と鳴いていく。序列が下の鶏は鳴きたくても順番を待つしかない。宮仕えの身には、なにやら切ない自然の摂理である▼いま太平洋の向こうから聞こえてくるのは、猛々(たけだけ)しいコケコッコーだ。間もなく米政界の最高位となるトランプ氏がツイッターで、トヨタ自動車のメキシコ工場新設に難を付けた▼やはりメキシコ工場新設をやり玉に挙げられていたフォード・モーターは新年早々、計画を撤回した。「米国に工場を造るか、巨額の関税を払うか」との縄張り宣言に屈したのだ▼ツイッターとは、鳥のさえずりを意味するtweet(ツイート)から派生した言葉だが、トランプ氏のそれは、やたら仲間をつつき回したがる雄鶏のコケコッコーだ。トランプ旋風で太平洋は、荒れ模様。<初鶏やあまりに猛し波の音>というところか。