Oceangreenの思索

主に、古神道、チベット仏教、心理学等に基づく日本精神文化の分析…だったはずなんだけど!

アテナとアナト

2010-01-21 | 大本および深見
紀元前十四~十三世紀の頃、
現在のシリアにあたる地域の地中海沿岸部に、
ウガリットと呼ばれる王国があった。

かつてアブラハムと甥ロトの住んだ地域、
そして後に古ユダヤ王国となる地域に近く、
その神話には、聖書への影響が多々見られる。

そこで敬われていた神々の一人に、
アナトという女神がいる。

戦争の女神であり、
極めて美しいのと同時に、大変残虐でもあった。

神話詩には、殺した兵士の首と手首にまみれ、顎までその血潮に浸かって、
喜びにあふれ、満ち足りる描写がある。

それとは異なる場面でだが、
父エールをして“女神には自制がない”と言わしめている。
商業都市ウガリットでは、“むさぼる”ことが美徳であり、
アナトもまた、その美徳を持っていたのである。

それは、エールを崇めるユダヤ部族とは
まったく対立する価値観である。

アナトは処女の美称を付けて呼ばれ、
同じく主神エールの息子にして神々の王者である兄バールを
“仔牛のように”慕い、彼に尽くした。

***

聖書において、アブラハムに現れる神は、
ウガリットの主神と同じくエール・シュダイを名乗った。

人の姿で現れ、アブラハムと格闘(力比べ?)する、
後のヤハウェからは想像もできない、身近な神である。

アブラハムはエールを専らに敬い、守護神としたが、
エールがヤハウェと呼ばれ、唯一神となったのは、
古ユダヤ王国滅亡後のことらしい。

シナイ山でモーセが十戒を授かっている間、
待っていたユダヤの人々が、金の仔牛の像を作り
祀っていたのが、バールである。

バールは槍と棍棒を持つ嵐の神である。
おそらく、インドのシヴァにあたるだろう。

ウガリット神話のエールは、
バールをことさらに疎んじている。

***

キプロス島において、
アナトはアテナと同一視されているという。
名前が似ていて、同じく戦争の神であるためらしい。

王仁三郎は、
アテナはイズノメである、といっている。
イズノメとは、縦の働きと横の働きが噛み合って
働いている相を示す神名である。

たしか、天照大御神をイズノメである、
とも言っていたと思う。

おそらく、伊勢の外宮と内宮が一体になっているときの相が、
イズノメ=アテナなのだと思う。

ギリシャ神話のアテナは、戦争の神というよりは戦略の神であり、
叡智の神でもある。

大日如来もまた、胎蔵・金剛の叡智を備える。

***

現在、一神教のオリエントにおいて、アテナやアナトを祀る人はなく、
ただ、日本の大本系の新宗教で、
アテナを敬うことがあるだけだと思う。

敬われない神は、
敬ってもらう事を求めている。
それが、日本のような遠い地での事であっても。

おそらく、キプロスでアナトをアテナとしているが故に、
アテナを祀ると、アナトが自分の事だと思って、付いてきてしまうのだと思う。

深見のところのアテナは、おそらくアナトである。
中枢部には、アナトの巫女だった人たちもいると思う。

アナトとお市の相似も、見逃すことはできない。
植松愛子さんには、アナトがついているかもしれない。

お市にとっての明智は、
バールを殺した死の神モートのごとき存在でしかないだろう。

***

バールとアナトは、神話詩のなかで、
民を愛で満たすことを説いている。

だが、叡智のない愛は、盲愛である。

アナトにも、ぜひ、叡智を求めていただきたい。

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