ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

役に立つのか?高齢者講習

2019-10-31 08:54:08 | 暮らし

 高齢者講習、受けて来た。70歳超えて初の免許更新なんでね。かなり緊張して出かけたぜ。身体機能の衰えとか、運転能力低下とか厳しく指摘されるんじゃないかってね。

 近くの自動車学校が会場、て、言うか、そこが請け負ってるわけだ。講習経費5100円、高っ!を支払って、さて、講習の内容は?

 座学と視力検査と運転実習の3項目で2時間半の講習だった。視力の方は間違いなく悪くなってる、そりゃ大いに自覚、うーん、こりゃメガネ作り直さにゃならんか?って危機意識植え付けてもらったから、これ、有効だな。ただ、運転に支障が出るってことより、免許更新ではねられるかも、って心配の方が大きい。

 座学は、悪評高い、記憶力テストあるのか?ってちょっと身構えていたが、そんなものはまったくなかった。道交法の改正ポイントとビデオ動画を見て、危険察知能力をチェックするってものだった。これがなぁ、いささか噴飯ものでさぁ、動画を途中まで見せて、その先に考えられる危険を答えさせるってものなんだが、はっきり言って、ひっかけ問題なんで、笑っちまった。見通しの悪いカーブ、歩行者やら自転車やら対向車が行き交うなか、小さなカーブミラーに映った対向車の小さな映像を見つけて、その危険性を言い当てろ、とか、児童が何組か歩いていて、どの子どもに気を付ける必要があるか?って。なんと、ずっと先の方の子どもが手を上げていて、それが反対車線にいる友達が飛び出して来るきっかけになる、なんて、なんか、お粗末な推理小説の騙しテクニックを聞かされてるみたいだったぜ。

 室内での講習終わって、最後は実地運転。これ、これだよ、おっかねえのは。初めて免許取った時の緊張感が蘇ったね。運転席に乗り込む時は、車の前方、後方確認とか、ハンドルは逆手回しはダメ、とか、一時停止の際に左右確認は顔をしっかり回して行うとか、せいぜい思い出せる注意事項は実行した。なのに、一時停止は完全に止まる、って原則忘れちまって注意一発、ってほど厳しい指摘じゃなかった、やんわりとね。車庫入れとか、S字カーブなんかも不安だった。なんせ、普段も適当、適当で来てるから。でも、こんなこと、高齢者講習で絶対必要ってものじゃない。運転慣れしちまった人間にゃみなやらせた方がいい。

 唯一、高齢者向きだったのは、バックか前進で縁石に乗り上げて、すぐにブレーキ踏むってやつ。ほら、コンビニで最近多いだろ、アクセルとブレーキの踏み間違いっての。あれのチェックだ。だけどなぁ、反射神経がどこまですり減ってるか?っての見るにゃいいが、咄嗟の際の頭パニックじゃ、反射神経の素早さなんて関係ないよな。だって、この検査じゃ、起こる事態がわかってるわけだから。

 って、ことで、5100円の講習料、2時間半の時間、すべては、ただただ、この一枚の講習修了証明書もらうためってことで諦めるしかないな。これないと、免許更新してもらえない。要するに、こうやって壁こしらえて、年寄りの免許返納促そうって算段なんだから、それはそれで仕方のないことだぜ。70歳超、っての人それぞれ、千差万別だからな。

 

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安納芋、不味い?だったら美味くしてやるよ!

2019-10-30 13:25:06 | クッキング

 ほとんど期待してなかたったね、サツマイモ。だってさぁ、10本買った苗、次々消え去って、残ったのはたったの4本!それも生育いたって不良。しかも、この辺じゃ気候的に難しい、らしい、安納芋。紅あずまと安納芋各5本って心づもりしてたんだが、苗屋も世知辛くなって、10本単位でないと売らん、だと。20本はいらんしなぁ、ほんじゃ、仕方ねえ、安納芋か。オール安納芋チームで挑戦した。

 途中、草取りだけはしたお陰で、しょぼくれながらも生き延びた4本、気が付けば、葉っぱも蔓も枯れてて、あっ、こりゃダメだ、掘る気も失せた。でもまぁ、掘るだけ掘るわ、って神さん。

 おお、けっこうできてんじゃないの!地上部の貧弱な割には、まあまあの収穫だ。安納芋、美味いんじゃない?評判だもの。

 さっそく、最初の試み、紅玉リンゴと一緒に煮てみた。これは神さん。サツマイモのほっこり感ないし、甘み少ないし、見た目も食欲増進効果ゼロ。なんだい、安納め、名前倒れかい。なんて、邪険に扱っちゃなんねえよな。せっかくここまで生き延び育んだ芋だもの。そのもの素材の美味さがいまいちなら、手を加えてやればいいさ。

 サツマイモの加工、いろいろあるが、まずはスイートポテトだろうぜ。よしっ、ちょうどごはんパン焼く日でもあるし、それ、一丁、やってやるか。

 皮剥いて、大きめの賽の目に切って、電子レンジ5分。ここに生クリームと砂糖を加えてフードプロセッサーですり潰しペースト状にすれば出来上がり。簡単なもんだぜ。これを菓子パン生地で包む。が、ちょっと物足りないよな。数日前ストーブで煮ておいた白いんげん豆を甘く煮詰めて、これも一緒に包んじまえ。

 ペーストを生地に広げてロール状にすることも考えたが、面倒だ、アンパンで行こう。あとは、菓子パンと同様。発酵させて焼くだけ。

見かけはアンパンだけど、お味は、うん、間違いなくスイートポテトパン、甘さ控えめ、中身も控えめ、うーん、もう少し濃厚にしてみても良かったのかなぁ。まっ、これで不評の安納芋もお役立ちの目途がたった。目出度し、目出度し!だぜ。

 次は、なんだ?そりゃぁ、大学芋だろう。

 

 

 

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やっぱりな!気候変動

2019-10-29 09:33:55 | 農業

 「秋が短くなった?」今朝の朝日新聞オピニオン&フォーラム「耕論」のテーマだ。

 三人の論客?がそれぞれ自分のフィールドから発言している。俳人の女性は季語の変化について、博報堂買い物研究のエキスパートは秋物の装いなんかについて、そして、気象予報士の森田さんは気象変動を地球温暖化に絡めて論じている。季節の変化で季語が変わる、なんて話は、俳句門外漢にゃ、あっ、それってあるよね、程度のことだし、秋物差し置いて冬物の売り出し始まる、なんて着た切りスズメのジサマにゃまるで縁遠いお話しさ。田畑通して日々自然と接する者としちゃ、森田さんの言説に深く頷いちまったね。

 秋が短くなった?じゃなくて、冬が短くなったんだ、って森田さん。夏がいつまでものさばり、秋もしっかり主張して、その分冬の肩身が狭くなってる。そう、その通り、作物育ててればよぉぉぉくとわかる。何日か前にも書いたが、秋野菜の生育がやたら早いんだぜ。いつもなら、11月入って結球始まるのに、早生ものなんて、もうすでに収穫時だし、ブロッコリーもじゃんじゃか大きくなって、黄色の花も開きそう、まるで暖かさに煽られてるみたいだぜ。

 キャベツも外葉がバリバリに割れてるのも、まだまだ育つぜ、って体内時計が崩れているからだろう。

 そろそろ秋枯れのはずの雑草も鬱蒼と茂って我が世の春を謳歌している。害虫の発生も記憶にない勢いだ。そう、ハエもやたら大発生!未だに部屋の中を我が物顔に飛び回っている。夏場が出番って決まってる蚊も10月初めまで活躍してた。

 こうなると、これまでの農作業日誌は書き換えなくちゃならんよな。秋野菜なら種蒔き時期を遅らせるとか、早生種より中生、晩生種を選ぶとかね。除草の時期や回数も大幅変更が必要だ。冬が先送りされて、雪囲いとか冬支度に追われることは少なくなりそうだし、薪の使用量も減るだろう。これは温暖化の効用。でも、半端ない雑草、害虫ののさばりにゃどう対処したらいいんだろ。

 そして、季節外れの台風、大雨!これまで来っこねえさ高畠にゃ、と、高みの見物してたが、避難指示まで出たとなると、こりゃ、それ相応の覚悟と備えが必要だろうな。

 政府も、台風は例年のことだから、なんて甘く見てるようだが、これ大間違いだぜ。ここ数年の災害激発、劇甚化、この先常態化して来るからな。認識改めて、抜本的な対策進めないと、後手後手に回るぜ。日本中、土砂に埋もれ、災害ゴミで溢れ返り、学校体育館は常時避難所。災害列島日本沈没!

 安倍ちゃん、国民の生命財産を守る!って、お題目唱えてんだろ。だったら、Jアラート並みに、いや、それ以上に気合い入れて取り組まねえと、とんでもないことになるぜ!もうとっくに自治体や個人の自己責任の域超えてるからな。

 

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「春駒日記」からアイディアもらった芝居のシーンはどう?

2019-10-28 08:44:25 | 菜の花座

 相変わらずミニブームが続いてる。もう1週間以上にもなるんだぜ。とんでもねえよ!ブログ訪問者が800とか、1000とかに跳ね上がり、その6割方が、「吉原を全力で駆け抜けた花魁『春駒日記』が素晴らしい!」って、どういうことよ?アクセス数増えるのは歓迎なんだが、いまいちこのバブルの実態がつかめない。どうも、「春駒日記」がマンガになったことと関係あるようなんだが、かと言って、マンガ読む人が、参考とかって、関連ブログに寄り道したりするか?不可解この上ないだろ。

 でもまぁ、せっかく読んでくれてるんだから、感謝しなくっちゃね。それと、推薦したりリツィートしたりしてくれてる人にもありがとう、って言おう。で、こうもみんなが「春駒日記」に興味持ってるなら、それ参考に書いた芝居台本もちょこっと覗いてくれんかなぁ。けっこう面白く書けてると思うんでね。『予兆・女たちの昭和序奏』の一節だ。

 春駒、台本では乙子(源氏名・乙女)が小さな女性向け雑誌社に逃げ込んで来るところから始まる。追って来た牛太郎と庇い通そうする女性記者たちのやり取り。不思議な女講談師紅蘭、こちらも実在の本荘幽蘭がモデルの活躍。吉原での暮らしを涙ながらに語る乙子。と、事前レクチャーはそのくらいにして、興味のある人は読んで欲しいもんだな。ちょっとした短編小説の趣きはあると思うぜ。

 

シーン⑧

            突然、長澤乙子が飛び込んでくる。髪も着物も乱れている。

乙子    お願いです!助けてください。

            驚いて立ち上がる繁と野生子。繁、すぐに駆け寄り、乙子を抱きとめる。

繁     どうしたんですか?

乙子    追われています。すぐ、そこに。

野生子   誰に?

乙子    見つかったら、

            と、不安気に入れ口をしきりに窺う。

繁     わかった。こっち、隠れて。

            と、給湯室に連れて行き陰に隠す。木刀を手にした河本鉄蔵が入ってくる。

鉄蔵    女が入り込んだと思うんだが。

野生子   どなたです!ノックもなしに突然侵入して、失礼でしょう。名を名乗りなさい。

鉄蔵    そんなことはいい。女を出しなさい。逃げ込むのを見たんだ。

野生子   誰も逃げ込んだりしていません。

繁     そうです。見ればわかるでしょう。

鉄蔵    隠し立てしない方がいいですぜ。厄介ごとになります。

野生子   厄介になるのはあなたの方です。不法侵入です。

繁     恐喝です。

鉄蔵    こっちか?

            と、無視して給湯室に向かう。立ちはだかる二人。

繁     誰もおりません。

野生子   たとえいたとしても、あなたには渡せません。

鉄蔵    いるんでしょ、やっぱり。

            立ちふさがる二人越しに乙子にどなる。

鉄蔵    おい、乙子!出て来るんだ。悪いようにゃしねえ。お店の方には、内々で済ませていただくようにとりなしてやる。なっ、そんなとこ、隠れてないで出てくるんだ。

繁     誰もおりません。

鉄蔵    (乙子に)ほれ、こちら様にもご迷惑おかけすることになるんだから、おとなしく出て来るんだ。

野生子   誰もいないと言ったでしょう。

            乙子、恐怖のあまり身動きしてしまう。湯飲みなどが落ちて壊れる音がする。

鉄蔵    この奥だな。

繁     違います。ネズミです。

鉄蔵    お嬢さん、庇いだてはおよしなさい。

繁     誰もおりません。ネズミです。

鉄蔵    乙女、借金のある身なんだよ。おめえが逃げたら、国のご両親が困るだろうが。足抜けなんて御法度破り成功しっこないんだ。おとなしく一緒に帰ろ。いたぶったりしない。約束する。

野生子   あなた、遊郭の牛(ぎゅう)太郎(たろう)ですね。

鉄蔵    おっと、今時、妓夫(ぎふ)とか牛太郎なんて言いませんよ。番頭だ。

野生子   お引き取りください、番頭さん。ここは、婦人のための雑誌社です。婦人たちのより良き暮らしを目指して出版活動しています。

鉄蔵    だから、何です。足抜け女を助けるのが仕事だとでも言うんですか。それとも、あんた方が、この女の借金を肩代わりしてくれるんですか。

野生子   自由廃業は大審院の判例で認められています。意志に反して、売春を強要することは法律違反です。

鉄蔵    そんなことは、世の中の上っ面の決まり事だ。誰も真っ当に信じちゃいませんよ。金を借りりゃ何としてでも返済するのが、世の仕(し)来(きた)りっても

んでしょうが。

繁     体を売ってまでも返さねばならぬなど、人間性に悖(もと)るものです。

鉄蔵    売れるものは売る、買えるものは買う、それが人の世の習いってもんですよ。神代の時代から変わらぬことだ。

野生子   男の暴虐です。身勝手です。女は男の欲望の生贄になってきたのです。

鉄蔵    そんなことは、私の知ったことじゃない。私の仕事は議論することじゃない。足抜けした女を連れ戻すことなんでね。

野生子   私たちを頼って来られた女性は守り通すのが私たちの使命です。

鉄蔵    おやおや、婦人雑誌社はいつの間に救世軍に宗旨替えなさったんです。それとも、矯風会だかって金持ちご婦人方のご道楽の先棒担ぎですかい。

繁     か弱い少女を虐げる人たちに屈するわけにはまいりません。

            鉄蔵、にやりと笑いを浮かべて、すごみ始める。

鉄蔵    主義者かぶれの女ども相手にいつまでも時間をつぶしてるわけにはいきませんぜ。こちらが大人しく出ているうちに女をお渡しなさい。

野生子   お断りします。

鉄蔵    仕方ねえなぁ。

            と、手にした木刀を野生子に擬する。

鉄蔵    乙女、おめえが我がまま言うから、このお人方が痛い目見ることになるんだぜ。いいのか、そんな傍迷惑なことして。

            乙子、躊躇った挙句、おずおずと出て来る。繁、乙子を庇って前に立つ。野生子も鉄蔵の前に立ちはだかる。

鉄蔵    このぉ、女(あま)!

            と、切っ先を野生子の胸元に突き入れる。野生子、木刀の先端を両手で握って止める。怒った鉄蔵、木刀を引き抜き、振りかぶる。

 

シーン9

            紅蘭、入って来て、一喝!

紅蘭    何してやがる!!

            驚いて振り向く鉄蔵。

鉄蔵    うっ!?

紅蘭    一瞬ひるむ悪漢に、素早く飛びつく娘一人!(講談調で)

野生子、やにわに木刀を持つ手にしがみつく。

鉄蔵    な、何しやがる!

            と、野生子を振りほどこうとするが、紅蘭素早く寄って、

紅蘭    すかさず一撃、紅蘭の鉄拳!(同じく講談調)

            紅蘭、走り寄って鉄蔵の鳩尾に一発食らわせる。崩れ落ちる鉄蔵。

鉄蔵    ううっ・・・

紅蘭    思い知ったか悪漢めぇぇぇ!

            と、取り上げた木刀を掲げて見栄を切る紅蘭。野生子と繁、思わず拍手。

紅蘭    これで良かったか?

野生子   正解です。

繁     ザッツライト!

紅蘭    そっちの娘は?

野生子   足抜けです。吉原から。

紅蘭    吉原?ってことはこいつは、牛太郎かい。

            鉄蔵、ようやく意識が戻り、

鉄蔵    てめえ、邪魔だてしやがって。

紅蘭    おっ、あんた、大文字屋の若い(わかい)衆(し)だね。

繁     えっ、若くなんかないけど。

紅蘭    吉原じゃ店働きの男をみんなそう呼ぶのさ。

鉄蔵    お、おめえ、

紅蘭    まだいたのかい、吉原に。そうか、他に行き場はねえか。

鉄蔵    誰だ、おめえ。

紅蘭    覚えてないのかい。あんたのお店に、女郎にしろって頼み込んだ紅蘭だよ。どうだ、思い出したか?

繁     女郎にぃぃぃ!?

繁・野生子・乙子 まさかぁ!!!!

鉄蔵    あ、あん時の色気ちがいか。

紅蘭    そう。その色気ちがいだ。あん時ゃ、よくも小突き回しておっ放り出してくれたねぇ。廃娼運動の回し者だろ、って散々毒づいてさぁ。

鉄蔵    あ、当ったり前だろ。だれが好き好んで女郎になるって言うんだい。怪しいに決まってんだろ。

紅蘭    馬鹿野郎!世の中にゃもの好きと女好きにゃことかかねえんだ。吉原知らずにものが書けるかい。女郎知らずに女優が務まるかい。

鉄蔵    ちっ、やっぱり覗きじゃねえか。

紅蘭    別れた亭主にゃ、その筋に顔効く奴もいたんだが、まっ、脅し上げてまで成っても面白かねえなって思ってね、潔く諦めたんだ。

鉄蔵    その色気ちがいが、どうしてこんなとこいるんだ。

紅蘭    話せば長いことながらぁ(と、節をつけたあと、会話調に戻って)あんたにゃ関係ねえや。

鉄蔵    女郎に成りたかったあんただ、廓の掟は十分にわかってるだろう。足抜けはきつい御法度だ。そちこちに迷惑かかってる。娘を渡してもらおうか。

            紅蘭、にやりと笑い、

紅蘭    私しゃねぇ、女郎に成りたくて、わざわざ頼みに行ったんだ。この娘はどうだい。無理やり女郎にされちまったんだろ。なんと理不尽な話じゃねえか。無理くり借金押っ付けて、雁字搦めに縛り上げて、抜けられないようにするなんぞ、盗人以下だぜ。

鉄蔵    なに、訳のわからねえこと言ってやがんだ。

紅蘭    私しゃねえ、春の売り買いを否定しやしない。そこはこっちのお嬢さんたちとは大いに違うんだ。だがね、そりゃ自由意思に基づいての売買契約が前提だ。嫌だって女を、札びらで無理やり股広げさせるてのは、許すわけにゃいかねえんだ。まっ、この紅蘭が後ろに付いたってことだから、この娘のことは諦めるんだね。あっ、大文字屋のご主人にゃ、そっと筋通しておくから、あんたが責められないようにさ。

鉄蔵    ちえっ!まったくへんてこな女ばかりだ。世の中の常識てやつがさっぱり通用しやしねえ。ああ、やだやだ!先々女が男買うよな時代がくるんだぜ、きっと。

紅蘭    おお、いいねぇ。いい男、買いたいもんだねえ。男のお酌で一杯、なんて乙なもんじゃないか。なっ、あんたたちもそう思うだろ?

野生子   買いたくはないけど、男のお酌で一杯は、悪くない。

繁     私は、手酌の方がいい。

            驚く紅蘭、野生子。

紅蘭    そうかい、男より酒かい。ははは。

繁     いえ、そんな、一人で酒飲むなんて、そんな、・・・

紅蘭    いいさいいさ。今度、刺しで飲もうじゃねえか。

野生子   私は、男の酌で。

紅蘭    そうだな。ただし、じじいはダメだよな。

鉄蔵    なんとでもほざけ。

            と、捨て台詞を放って出ていく。

 

シーン10

その背に向かって追い打ち。

紅蘭    そうだ、今度は男芸者も置いときなよ。そん時ゃどっと繰り出すからさ、ほら、明治の新しき女たちのようにさ。

野生子   ああ、青鞜社の尾竹紅吉、吉原登楼事件。

繁     誰ですか、それ?

野生子   青鞜社は知ってるでしょ。

繁     平塚らいちょう女史ですね、「元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった。 今、女性は月である。他に依って生き、他の光によって輝く、病人のやうな青白い顔の月である。」

紅蘭    おお、よく知ってんじゃないか。さすがは優等生。

繁     優等生だなんて、そんなぁ・・・

野生子   青鞜からすでに20年、女の置かれた位置は、少しも変っちゃいない。

紅蘭    こんな幼(いたい)気(け)ない娘を獣欲の餌食にしてる世の中だからなぁ。

繁     よく、逃げてこられたわねぇ。恐かったでしょ。

乙子    はい。ずっと機会を狙ってました。外に出るときは、監視の番頭さんがいつだっていっしょ。病院に薬をもらいに行く時だけは一人で出られるんです。だから、今日は、病院に行く振りをして、急いで龍泉寺町に抜ける露地の木戸抜けて、夢中で駆け抜けて、電車に飛び乗って。でも、途中で見つけられて、番頭さんが人力車で追い掛けてきて、

繁     そう。恐ろしかったでしょうね。

乙子    捕まったら、裸で吊るされるから。

紅蘭    あいつら、女の体、モノとしか思っちゃいないからなぁ。

繁     どうしてここに逃げ込んで来たの?

乙子    これ。

            と、懐から、雑誌「モダン婦人」を差し出す。繁、雑誌を受け取り、

繁     これ、うちの雑誌!

乙子    記事読んで、

            繁、雑誌を野生子に渡す。野生子、ページを繰って、

野生子   記事って、これ?「飛び立て、籠の鳥」?

乙子    はい。きっと助けてくれると思って。ここしか無いから。

紅蘭    (野生子に)あんたの記事じゃないか。

野生子   ええ。(乙子に)そう。ありがとう。読んでくれて。よく決断してくれたわ。

乙子    もう、とても、我慢できませんから。あんなところ。とても生きて行けない!

野生子   そうでしょうね。

紅蘭    長いの、吉原?

乙子    1年経ちます。

紅蘭    国は東北?

乙子    ええ。山形。

繁     山形?それじゃ、あの・・身売り相談所が設けられたって所あたり?

乙子    ええ、あの伊佐澤村とは川向いの山の中。

繁     凶作?

乙子    それもありますけど、生糸の値段が急に下がって、1/3以下になってしまって、

繁     ああ、世界恐慌のあおりだ。   

乙子    お蚕さんの種代金、支払えなくなっちまって。取れたコメもすべて持って行かっちぇ、家中の金になるものなんもかも全部売り払って、そんでも足んねくて、5人兄弟、私、一番上だから、吉原に。下の弟も口減らしでカムチャッカに行きました。身売りの代金1000円。それでどうにか借金済ませて。着いたその日から、お客さん取らされて、・・・・(興奮する乙子の言葉には訛りが)

            乙子、あふれ出る涙を袂から取り出した手拭いで必死で抑える。見守る女たち。繁、そっと肩を抱き寄せる。

乙子    一晩に3人も4人も・・・

            繁に抱かれたまま、涙ながらに廓の暮らしを絞り出す。

乙子    しょしい、無理やり、

繁     いいのよ、話さなくたって。

乙子    ・・・浅ましい・おぞましい・・金払ったんだからって、無理やり、・・・うち、汚(よご)れちまいました。体も心も汚(けが)れちまいました・・・

            激しくしゃくりあげる。繁、しっかりと抱きしめる。

繁     そんなことない。そんなことないわ。

乙子    いいえ、いいえ、だって、だって、半年も経ったら、何にも感じなくなったんですから。何人も男に抱かれても、何されても、・・・・

            さらに、激しくしゃくりあげる乙子。泣き続ける乙子を見つめ続ける女たち。荒々しく涙をぬぐう野生子。静かに涙を流し続ける繁。

            やや気持ちが治まって、

乙子    一月ほど前、おりものが増えるようになって、ここ(腿の付け根を触る)もずきずき痛むようになって、定期診断で入院が決まりました。横根だから、手術で切らねばならないってお医者さんが。

紅蘭    リンパだよ。梅毒とかの性病の所為だね。

乙子    たくさん入院してました。吉原以外の廓の花魁たちも。酌婦のお姐さんも。

紅蘭    そうだろうねぇ。

乙子    何度も入院退院繰り返して、げっそり痩せて、もうここで死ぬのだけが楽しみ、なんて、・・・まだ、若いのに、・・・そんな姐さんたち見てたら、何年か先の自分の姿だって思えて、・・・

野生子   使い捨てなのよ!消耗品なのよ!!

乙子    手術も麻酔はそん時だけの局所麻酔。終わったその晩から、痛くて痛くて。みんなと一緒に泣き叫びました、ずっと、ずっと。

紅蘭    あの吉原病院てのはねぇ、楼主たちが費用を出してるから、けちり倒してんだよ。食いもんだって、酷いって話しじゃないか。

乙子    薄いおかゆに支那卵一つ、それに麩の煮物と梅干。

繁     そんなんじゃ体力回復しないじゃありませんか。

乙子    楼から差し入れを取り寄せる人もいるけど、それもすべて貸しになるんです。そうやって、退院した時にゃ、借金で雁字搦めにするんです。

野生子   弱みに付け込むなんて。

乙子    退院だって、完全に治るまで待っちゃくれません。まだ患部に痛みが残るうちから、客取らされる。

            女たち、一斉に非難の声を上げる。

乙子    このまま客取ってたら、また、病院に逆戻り、そして、入院、手術、退院、入院の繰り返し、いつかあのやせ細った姐さんのようになるんだって、思ったら、居ても立ってもいられなくなって、・・・

繁     逃げようと思ったのね。

            乙子、大きく頷く。

野生子   こんな生き地獄が、目と鼻の先に広がってるんだ。

繁     男の人方には、そんな女の苦しみが見えないのでしょうか。

紅蘭    てめえの都合よく考えんのさ、女郎だって喜んで金までもらってるってね。

乙子    優しいお客さんもいます。金払ったのに、一晩、うちの身の上話を聞いてくれた人もいたし。身請けしたいけど、金がないって泣いてた学生さんなんかも。

紅蘭    そんな惚れたんなら、抱きかかえて逃げりゃいいのさ。意気地なしめ。

繁     男の人も寂しいんですね。

野生子   ダメ!あなた、男に免疫ないんだから、簡単に騙されるよ。

乙子    廓の話しは、作り事なんです。どんなに情愛深く彩られてても。

紅蘭    そういうこったな。さて、それで、(乙子に)あんたどうするつもり。

            途方に暮れる乙子。

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薪作り、追い込み急!

2019-10-27 10:29:30 | 暮らし

 田んぼの作業、一切合切終わった。今年も1年、無事イネ作り貫徹したぜ。ご苦労、ジイサン!

 と、なれば、畑仕事?燻炭作り?ハウスの片付け?まっ、それもあるが、まずは、薪だろが。

 河川支障木を軽トラ5台、それに業者から購入した2.1メートル原木5立米。どっさりあった薪材料も、コツコツと時間を見つけては切り刻んで、今や、最後の追い込みだ。以前は、原木をえっさかほいと引きずってきて、薪切り場、ったって、座りのいい丸太二本、平行に並べただけだが、に置いて切っていたのだが、2.1メートル原木はあまりに重い。そいつを引きづる筋力なんてもはや持ち合わせていない。だったら、その場で刻めばいいじゃん。

 片端をどうにかこうにか持ち上げて、エイヤッと移動、木の下に空間を作ったら、即、チェーンソーでぶった切る。片っ端から2分割して行く。目標としちゃ90センチと120センチに分けたいが、計って切るなんて手間掛けちゃおれんさ。適当、適当!ズバンズバン切ってそこら中に放置し、ある程度溜ったら、30センチ前後に玉切りする。この長さなら、なんとか運べるが、太いものだと、うーん、片端上げるので精一杯、ダメだ!その場で切るしかない。原木置き場がそのまま薪切り場になっちまった。鋸クズがそこら中散乱して、みっともないけど、まっ、いいか。

 今度は斧の出番だが、さすがにその場で割ったんじゃ保管場所への移動が手間かかってしょうがない。30センチの玉はキャリーに積んで運搬。わずか4.5メートルの距離だけどね。傾斜あるから一輪車じゃ辛い。省ける労力は極力手を抜く。それ、高齢者労働の基本!

 薪割も、積む手間考えて、ぎりぎり置き場の側で割る。切って時間を置くと固く締まって割れにくくなるから、運んだら翌日は薪割り作業。チェーンソー作業に集中半日、翌日は薪割り徹底、この繰り返しでようやく最後が見えて来た。あと、チェーンソーのガソリンタンク2回満タンで切り終えるだろう。で、割り方はその翌日。長かった薪作り作業もようやく終了だ。

 あとは、薪ストーブの柔らかくほんわかとした温かさを楽しむばかりだぜ。おっと、薪を部屋に運ぶ作業てのが毎日続くけどな。

 

 

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