MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『街の上で』

2021-09-30 00:56:14 | goo映画レビュー

原題:『街の上で』
監督:今泉力哉
脚本:今泉力哉/大橋裕之
撮影:岩永洋
出演:若葉竜也/穂志もえか/古川琴音/萩原みのり/中田青渚/岡田和也/成田凌
2021年/日本

ネタバレしないままのギャグについて

 主人公で下北沢の古着屋の店員である荒川青を中心に相手の女性たちと気持ちが通じるようで通じない微妙な匙加減が上手く描かれていると思うのだが、個人的には、例えば、撮影現場の控え室に案内された青が渡された衣装が青の私服と同じような青のシャツと白のボトムスだったり、青のシーンはカチンコ上「18」なのだが、青が上手く演じられないために青の代わりにスタッフの一人が演じることになり、シーンが「18」のままで青のシーンのカットが確定だったり、その後、打ち上げの席で、一人で飲んでいる青に声をかけてきたのが城定イハで、彼女は自分の名字の漢字を説明するのだが、どう考えても説明が必要なのは彼女のキラキラネームの方だったり、青と川瀬雪に声をかけてきた警察官が自分の母親の再婚相手の娘を好きになってしまい、その「姪」と自分とは結婚できないと悩みを打ち明けるのだが、血縁関係がないのだからこの場合は結婚できるはずで、このようなギャグがネタバレしないまま散りばめられており、最後まで飽きさせないところが素晴らしい。
 
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-74728


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『胸が鳴るのは君のせい』

2021-09-29 00:58:01 | goo映画レビュー

原題:『胸が鳴るのは君のせい』
監督:髙橋洋人
脚本:横田理恵
撮影:斑目重友
出演:浮所飛貴/白石聖/板垣瑞生/原菜乃華/河村花/若林時英/箭内夢菜/入江海斗/浅川梨奈
2021年/日本

「火」の扱い方について

 主人公の篠原つかさを演じた白石聖がフラれるという設定が荒唐無稽といっても過言ではないと思うし、そのつかさをフッた主人公の有馬隼人を演じた浮所飛貴の演技のぎこちなさも気になるのだが、例えば、つかさが長谷部泰広に突然唇を奪われた際には2人の背後に花火が打ちあがっており、改めて隼人がつかさに告白してつかさとキスを交わす2人の背後ではキャンプファイヤーの炎が燃え盛っている。決してロマンティシズムには陥らないという監督の強い演出意図は感じられる。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-74506


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『砕け散るところを見せてあげる』

2021-09-28 00:59:44 | goo映画レビュー

原題:『砕け散るところを見せてあげる』
監督:SABU
脚本:SABU
撮影:江崎朋生
出演:中川大志/石井杏奈/井之脇海/清原果椰/松井愛莉/北村匠海/原田知世/堤真一
2021年/日本

ジャンルを破壊することによって生まれる作品の魅力について

 前半は青春学園ものだと思って油断して観ていたら、後半からホラー映画と化し、最終的にヒーローものになるというジャンルの横断振りに驚いた。この「破壊力」が本作の魅力ではないだろうか。
 例えば、主人公の濱田清澄がいる教室を訪れた姉の尾崎が清澄と会話を交わす長回しのシーンにおいて、雲に影響されたらしい太陽光の変化によって明るかった教室が暗くなったりするのであるが、夜に清澄が蔵本玻璃と商店街を並んで歩くシーンにおいて、帰ろうとする玻璃に清澄がヒーローに変身するポーズを披露するのだが、清澄の背後で照っている車のヘッドライトのせいで清澄の変身ポーズだけが別撮りだということが分かってしまった。なかなか光は思うようにならないものではある。
 久しぶりにSABU監督作品を観たのだが、初っ端から主演の中川大志が走らされており作風が変わっていないところが笑えた。LDHが製作に関わる作品として初めてまともなものが出来たのではないだろうか?
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/dwango/entertainment/dwango-60630


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『ロックダウン・ホテル/死・霊・感・染』

2021-09-27 00:59:23 | goo映画レビュー

原題:『Hall』
監督:フランチェスコ・ジャンニーニ
脚本:フランチェスコ・ジャンニーニ/デリック・アダムス/アダム・コロドニー
撮影:グラハム:グエルティン・サンテレ
出演:カロライナ・バルトチャク/釈由美子/マーク・ギブソン/ベイリー・タイ/ジュリアン・リッチングス
2020年/カナダ

DVで一変する世界について

 本作は一応ホラー映画として描かれているのだが、主人公のヴァルは娘のケリーと共に夫のブランデンにDVを受けており、同じホテルに宿泊している妊娠八ヵ月のナオミも仕事を口実にDV夫(英語圏出身の男性?)がいる日本から逃れてきたことがナオミの母親との会話から察することができる。その後、ナオミの母親がナオミの幻覚として登場するところを見ると、DVを受けている女性の母親もまたDVの被害者ではないのかと暗示されている。
 彼らが宿泊するハイドホテルの3階に生物兵器としてのウィルスを撒いたのはジュリアンというテロリストの男性で、部屋から出てきて廊下を這って逃げようとしたナオミを殺したのは同じ階に泊まっていた男性である。
 数々の障害をくぐり抜けてヴァルとケリーがエレベーターで1階に下りると、「ホール」では何事もないかのようにパーティーが行なわれており、DVがある世界と無い世界が対照的に描かれているように思うのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-82315


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『MINAMATA―ミナマター』

2021-09-26 00:58:45 | goo映画レビュー

原題:『Minamata』
監督:アンドリュー・レヴィタス
脚本:デヴィッド・ケスラー
撮影:ブノワ・ドゥローム
出演:ジョニー・デップ/真田広之/美波/國村準/加瀬亮/浅野忠信/岩瀬晶子/ビル・ナイ
2020年/アメリカ・イギリス

「美しさ」で失われる怨念について

 アメリカの写真家であるユージン・スミスの視点から見た熊本県の水俣病の状況を描いたという点においては本作は評価されるべきだと思うのだが、土本典昭監督のドキュメンタリー映画『水俣一揆 - 一生を問う人々 -』(1973年)を観ている者としては被害者が大人し過ぎて、「一揆」というタイトルまで付された闘争が感じられない。
 スミスの家が放火に遭い、炎上している中をスミスはフィルムを取りに入っていくのだが、何も持ち出せないまま出てくる。その後、チッソ工場の入り口で従業員たちの暴行に遭って重症で入院しているスミスの元に小包が届けられ、中には焼失したと思われたスミスの家にあったフィルムが入っていたのだが、これほど重要なアイテムであるはずのフィルムに関して、スミスが火事場でフィルムが無くなっていることに気がついていたのかどうかよく分からない。要するに脚本が御座なりになっている気がするのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-92650


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『祈り一幻に長崎を想う刻一』

2021-09-25 00:59:55 | goo映画レビュー

原題:『祈り一幻に長崎を想う刻一』
監督:松村克弥
脚本:松村克弥/渡辺善則/亀和夫
撮影:髙間賢治
出演:高島礼子/黒谷友香/田辺誠一/金児憲史/村田雄浩/柄本明/美輪明宏
2020年/日本

戦中でも衰えない性欲について

 本作を観る個人的な理由として、何故長崎の浦上天主堂が広島の原爆ドームのように原爆遺構として残されなかったのか長い間疑問に思っていたからなのだが、本作を観てキリシタンの弾圧が江戸時代よりも明治時代の方が酷かったという事実を知り、まだカトリック信者に対する差別意識が戦後も残っていたのだと理解した。
 しかしそれならばそもそも何故アメリカは日本におけるクリスチャンの聖地である長崎をわざわざ選んで原爆を投下したのかはまだよく分からない。
 主人公の鹿の夜の客である多良尾が語った「日本でも原爆を開発している」という話は『太陽の子』(黒崎博監督 2021年)で描かれているのだが、その鹿が昼間に看護師として担当していた被爆患者の新藤が死ぬ間際に鹿の乳房を触るシーンと、原爆投下直後の爆心地で次五郎が忍が形見にしていたダイヤの指輪を盗み強姦するなど、セックスにまつわるエピソードは胸が痛む。
 しかし最後でマリア像が語り出したあたりから完全にファンタジーになってしまい白けてしまった。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-84497


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『太陽の子』

2021-09-24 00:59:45 | goo映画レビュー

原題:『太陽の子』
監督:黒崎博
脚本:黒崎博
撮影:相馬和典
出演:柳楽優弥/有村架純/三浦春馬/イッセー尾形/國村隼/田中裕子
2021年/日本

原爆開発という「ままごと」について

 1945年の夏、京都帝国大学の物理学研究室では主人公の石村修が仲間たちと共に原子核爆弾の研究開発を進めていた。修たちは原爆を開発できればこの戦争は終わると考えており、それは間違いではないのだが、例えば、彼らが原料と考えるウラン235の取り扱いかたはあまりにも杜撰過ぎる。もちろんそれは現在の視点から見るから分かるのであって、当時は修たちも本気で原爆を作ろうと思っていたはずなのではある。
 ところが言うまでもなく、8月6日に先にアメリカに原爆を落とされてしまう。修たちは原爆を落とされた広島に調査に行き、その惨状を目にした時、そのあまりにも被害規模の大きさに、修は自分たちの研究は「ままごと」だったと悟ったであろう。例えば、その後地元の京都にも原爆が落とされるという噂を聞き、科学者の目で確かめようと修は近所の山に登るも虚しさが残るだけなのである。もちろんそれは原爆開発のみならず、アメリカに対して戦争をしかけたこと自体が「ままごと」だったことは言うまでもない。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-84290


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『ドライブ・マイ・カー』

2021-09-23 00:58:19 | goo映画レビュー

原題:『ドライブ・マイ・カー』
監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介/大江崇允
撮影:四宮秀俊
出演:西島秀俊/三浦透子/霧島れいか/岡田将生/パク・ユリム/ジン・デヨン/ソニア・ユアン
2021年/日本

「問題の先送りによる悲劇」について

 例えば、主人公の家福悠介が妻の家福音と若手俳優の高槻耕史との浮気を知りながら、問題を先送りにした結果、話し合う当日に帰宅が遅くなり音がくも膜下出血で亡くなってしまったことを後悔したり、あるいは広島に滞在中の家福の専属ドライバーを担った23歳の渡利みさきが5年前の18歳の時に実家が土砂崩れに遭い、自分は助かったのだが、母親は生き埋めになり、それまで自分を虐待していた母親に対する思いが母親を助けようという思いの強さを阻害したのではないかと悩んでいる。
 このような「問題の先送りによる悲劇」は村上の小説に一貫しているテーマだと思うのだが、そこで気になるシーンを論じてみたい。
 家福と高槻がバーで飲んでいるところを高槻のスキャンダルを追っているパパラッチが勝手に写真を撮っており、高槻が立ち上がったところを家福がなだめて、先にバーを出るように促す。つまり本作を観ている観客はここで、前にも同じことがあったので家福がパパラッチと話を付けると想像するのだが、場面がバーの外に変わると高槻の後を同じパパラッチが相変わらず勝手に写真を撮っており、逃げたパパラッチを高槻が追った後に、再び戻って来て家福とみさきと3人で車に乗り込むのである。しかしこのシーンは明らかに奇妙なもので、高槻が先にバーを出たのであるから、家福とパパラッチは何らかの話をつけているか、あるいは家福は高槻にバーを出たパパラッチがどうしたか訊かなければ不自然で、舞台が上演される直前に高槻は殺人の罪で逮捕されてしまうのである。
 これが家福が再び犯した「問題の先送りによる悲劇」であるのならば、結局「復讐心」が必ず勝利し、私たちはこの悲劇から決して逃れることはできないと思うのだが、私たちが知りたいのはどのようにしてこの悲劇を避けることができるのかということではなかったのか?
 しかしだからと言って本作が駄作というわけではなく、寧ろ村上の小説の神髄を的確に捉えているという意味では傑作と言ってもいいと思う。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/anannews/trend/anannews-372422


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『子供はわかってあげない』

2021-09-22 00:59:47 | goo映画レビュー

原題:『子供はわかってあげない』
監督:沖田修一
脚本:沖田修一/ふじきみつ彦
撮影:芦澤明子
出演:上白石萌歌/細田佳央太/千葉雄大/古館寛治/斉藤由貴/豊川悦司
2021年/日本

女子高生の気持ちの「揺れ方」について

 とにかく細やかな配慮による色使いが素晴らしいのではないだろうか? 例えば、門司昭平が藁谷友充の家を訪れ、酒を飲まされて酔っ払っている昭平の横で友充は新聞紙に挟まれているチラシの裏を使って習字をしているのだが、その紙の色は白だけではなく黄色や薄緑色なのが気になった。
 その後、合宿をサボった朔田美波が罰としてプール掃除をしながらデッキブラシに水をつけて「もじくん」と書くのだが、そのプールサイドが黄色と薄緑色なのである。
 上白石萌歌が演じた朔田美波の揺れる気持ちを、例えば、絶妙なバランスの上で成り立つ習字や水に浮くことや藁谷友充の「霊視」や門司明大のセクシャリティ、さらには劇中アニメ『魔法左官少女バッファローKOTEKO』のキャラであるセメントやコンクリートやモルタルと水との塩梅などとシンクロさせているところも見事だが、長回しのシーンの多用や美波とミヤジとの挨拶が「アデュー(adieu)」だったり美波の着ているTシャツの猫の尻尾が「サリュー(salut)」を表しているところをみると、どうもエリック・ロメール監督の『海辺のポーリーヌ』あたりを意識して撮られているような気がする。
 傑作と断じたいところなのだが、どうしても納得しかねるのが本屋の主人である善さんを演じた高橋源一郎の演技で、これほどの「大根」を見たのは蛭子能収以来ではないだろうか?
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/tfmplus/entertainment/tfmplus-T8U5xXUB5H


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『1秒先の彼女』

2021-09-21 00:59:32 | goo映画レビュー

原題:『消失的情人節』 英題:『My Missing Valentine』
監督:チェン・ユーシュン
脚本:チェン・ユーシュン
撮影:チョウ・イーシェン
出演:リウ・グァンティン/リー・ペイユー/ダンカン・チョウ/ヘイ・ジャアジャア
2020年/台湾

「間違った」観賞方法について

 郵便局に勤めるヤン・シャオチーはアラサーとなり若い局員に煙たがられる存在になりつつあったが、ようやくダンス講師のリウ・ウェンセンと出会い、バレンタインデーにデートをすることになるものの、何故か目覚めた時にはバレンタインデーの翌日になっており、残された写真や鍵などを手掛かりにその謎解きにかかる。
 そこに現れるのがウー・グアタイという同級生なのだが、グアタイは憶えていてもシャオチーは憶えていない。シャオチーは何においても人よりも一秒早く、逆にグアタイは人よりも一秒遅い人生を歩んでいたのだが、ある日、グアタイがバスに乗っていると時間が止まり、グアタイはそれまで失っていた時間である一日分を一人で消費することになり、逆に、シャオチーは自動的に一日失ってしまう。
 グアタイは全く動かないシャオチーを連れて海岸に行って写真を撮ったりしているのだが、この作品の楽しさとは演出以上にグアタイを演じているリウ・グァンティンと彼にいいようにいじられるシャオチーを演じたリー・ペイユーとの撮影現場の楽しさを思わず想像して楽しくなってしまっており、それは必ずしも映画の鑑賞方法として正しくはないのではあるが、決して脚本は悪くはないのだからその「間違った楽しさ」は肯定しても良いのではないのかと思うのである。


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