MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「質」よりも「量」ばかり自慢する人の特徴について

2020-08-21 00:50:57 | Weblog


(2020年8月18日付毎日新聞朝刊)

 8月17日に安倍晋三首相が都内の大学病院で検査を受けたことに関して、麻生太郎財務大臣が報道陣の一人に「あなたも147日間休まず働いてみたことありますか?」と訊き、無いと答えた記者に対して「ないだろうね、だったら意味分かるじゃない。140日休まないで働いたことないんだろう。140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったって分かんないわけですよ」という質疑応答は日本語の文法として間違っていると思う。
 記者は147日間休まずに働いたことがないのだから、「意味」は分からないのである。意味が分からないのだから訊いているのであって、「140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったって分かんないわけですよ」という答えは経験したことない人間に「経験談」を語っても分からないと言っているのと同じロジックで、個人的には安倍首相の体調よりも麻生副首相の母国語の語学力の方が心配である。
 その後、国会閉会中の安倍首相の「147連勤」の実態そのものが怪しいという話や、18日放送のTBS系「ひるおび!」で司会の八代英輝弁護士に麻生財務大臣の発言に対してコメントを求められた政治ジャーナリストの田崎史郎が、麻生副総理が口元だけを透明なアクリル板でガードする、いわゆる「マウスシールド」を見て、「フェースガード、半分だけなんですか?」と話題をすり替えたのはさすがに安部首相シンパでもフォローのしようがなかったからだろうが、その「マウスシールド」に関しても北村義浩日本医科大学特任教授に「透明マスクと言ったり、マウスシールドと言ったり、しゃべると(飛沫は)上に飛ぶので、基本的には効果はないと言われているタイプですね」と揶揄される有様である。
 安倍首相にしても麻生副首相にしても「147連勤」とか首相の連続在職日数記録の歴代最長などとかく自慢は「量」ばかりで「質」には全く興味が湧かないようなところが痛々しい。例えば、「多い」という理由で1万円札一枚よりも一円玉10枚を喜んで選んでしまう小さな子供を見ている感じがしなくもない。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/tokyosports/entertainment/tokyosports-2086848

gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/jisin/nation/jisin-https_jisin.jp_p_1886695

gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/hochi/nation/hochi-20200818-OHT1T50067


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『ブレスレット 鏡の中の私』

2020-08-20 00:58:18 | goo映画レビュー

原題:『La Fille au bracelet』
監督:ステファン・ドゥムースティエ
脚本:ステファン・ドゥムースティエ
撮影:シルヴァン・ヴェルデ
出演:キアラ・マストロヤンニ/ロシュディ・ゼム/メリッサ・ゲール/アニー・メルシエ
2019年/フランス・ベルギー

DNA鑑定で無くなる推理劇の「味わい」について

 主人公で高校生のリーズ・バタイユが親友のフローラの殺害容疑で警察に連行されたのは2016年6月7日で、同年12月21日に仮釈放されてからリーズは片足首にモニター用無線送信器(bracelet)を付けて実家で暮らし、事件から2年後にようやく裁判が始まる。
 個人的な感想ではあるが、リーズはフローラを殺していないと思う。裁判が始まってリーズが終始不機嫌なのは、両親の前では「良い子」を演じていたリーズが実は娼婦も驚くほどのとんだあばずれで、それが両親のみならず公にされてしまうからだと思う。だから無罪を勝ち取り「ブレスレット」を足から外してもらっても、家族が抱えることになった「十字架」を考慮する時、リーズは身に付けていたペンダントを足に巻かざるを得ないのである。
 ところで本作はリーズが真犯人かどうかあやふやにしようとしたあまり致命的な間違いを犯している。リーズの弟のジュールがガレージで見つけた赤い柄のナイフがフローラを殺害した際に使用されたものかどうか裁判で議論になるのだが、何故かそのナイフをDNA鑑定しないのである。今の鑑定技術ならば2年経っていてもDNA鑑定は可能ではないだろうか?


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『ブラック アンド ブルー』

2020-08-19 00:53:47 | goo映画レビュー

原題:『Black and Blue』
監督:デオン・テイラー
脚本:ピーター・A・ダウリング
撮影:ダンテ・スピノッティ
出演:ナオミ・ハリス/タイリース・ギブソン/フランク・グリロ/マイク・コルター
2019年/アメリカ

警察の腐敗の原因について

 17歳で軍隊に入隊しアフガニスタンへ赴任していた主人公のアリシア・ウェストは2019年に母親が亡くなったことを機に、地元のニューオーリンズに戻って来て警察官として働くことになるのだが、もはやかつてのニューオーリンズとは違っていることを実感することになる。
 クライムサスペンスとしてとても良く出来ているのであるが、ここではアリシアと敵方となるテリー・マローンの印象的な会話を記しておきたい。ここまで警察が腐敗してしまった原因としてマローンは2005年8月にルイジアナ州に上陸したハリケーン・カトリーナを挙げ、経済的に大打撃を受けたために警察でさえまともに生きていけなくなったと言うのである。14年前の出来事を持ち出すマローンの言い訳とも取れるが、当時の慣習が続いていたとも見なせる。いずれにしても考えさせられるテーマではある。


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『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』

2020-08-18 00:48:33 | goo映画レビュー

原題:『Grâce à Dieu』
監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン
撮影:マニュエル・ダコッセ
出演:メルヴィル・プポー/ドゥニ・メノ―シェ/スワン・アルロー/ジョジアーヌ・バラスコ
2018年/フランス・ベルギー

大きな愛情の弊害について

 これが実話を基にした話というのだから深刻な問題だと思うが、ストーリー自体は重いものではなくたんたんと進行していく。
 興味深いエピソードを書いておくならば、告発されたベルナール・プレナ神父が子供たちを集めて説教をしているシーンにおいて、「神は信者を子供のように扱う」と語っていてその巧妙な語り口で多くの子供たちが騙されていたのである。
 告発者の一人であるフランソワ・ドゥボールは兄のルイと参加したスカウトの合宿先で被害に遭う。フランソワは両親に神父にされたことを告白するのであるが、ルイは神父が好むのは年少の少年で、自分は被害に遭っていないと言う。だからフランソワは自分の活動に対して積極的に応援してくれないルイに不満を持つのであるが、実はルイも被害者で、神父に連れていかれるルイをフランソワは見ていたのであるが憶えていないのである。しかし自分も被害者だと告白した場合の両親の精神的負担を考えるといまだに言い出せないルイの、家族に対する心配りは決して表に出ないだけに、家族にも理解されずに下手をすると「悪者」扱いされる故にその悲しみの大きさは想像を絶するのである。


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『透明人間』(2020年)

2020-08-17 00:59:36 | goo映画レビュー

原題:『The Invisible Man』
監督:リー・ワネル
脚本:リー・ワネル
撮影:ステファン・ダスキオ
出演:エリザベス・モス/オリヴァー・ジャクソン=コーエン/オルディス・ホッジ/ハリエット・ダイアー
2020年/アメリカ・オーストラリア

オチの「ひっくり返り具合」について

 明らかに低予算の作品だと分かるイメージで、登場人物が少ない代わりにその人件費を透明人間のCGに使われているように見えるのだが、それにしても脚本の粗さはどうにかならなかったものだろうか?
 例えば、主人公のセシリア・カスと科学者のエイドリアン・グリフィンが出会ったのは2017年12月で、それから結婚後にセシリアが家から脱走する2020年1月までの約2年間に2人に何があったのかほとんど語られることがないために、セシリアがエイドリアンから逃げようとする、あるいはエイドリアンがセシリアに固執する強い動機が見えないのである。
 描写も荒く、例えば、セシリアがエイドリアンの家に戻る時に、セシリアを車で送った人物が誰だったのかよく分からないし、その際に、セシリアは透明人間になれるスーツを盗み出しているのだが、エイドリアン側にその危機感が感じられず、透明人間と化したエイドリアンをおびき出そうとセシリアが自殺を試みた際に、盗んだペンの先でかなり深く手首を切ったように見えたが、その後意外と走り回ったり出来ているのである。
 ところが本作は興行的に成功しているのみならず、批評家にも好評で、それはおそらくラストのオチの「ひっくり返り具合」が高評価に結びついたのかもしれない。


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『弱虫ペダル』

2020-08-16 00:59:50 | goo映画レビュー

原題:『弱虫ペダル』
監督:三木康一郎
脚本:三木康一郎/板谷里乃
撮影:宮本亘
出演:永瀬廉/伊藤健太郎/橋本環奈/坂東龍汰/竜星涼/栁俊太郎/菅原健/井上瑞稀/皆川猿時
2020年/日本

映画監督との「相性」について

 決して『劇場版 弱虫ペダル』(長沼範裕監督 2015年)を高く評価しているわけではないのだが、本作において主人公の小野田坂道の「オタクキャラ」は限りなく薄まってしまっており、もはやただの「青春ド根性自転車競技部物語」になってしまっている。
 それはそれで良いし、確かに後半のインターハイ千葉県予選はそれなりに見応えはあったのだが、レースの途中で事故が起きて明らかに左足に大怪我を負っているはずの小野田坂道がリタイアせずにビリからトップに一気に駆け上がる時、そこまで速いなら普通に競争すれば小野田はぶっちぎりで優勝できるだろうとツッコミを入れたくなってしまう。アニメーションならば許容できる演出でも実写となるとしらけてしまうのである。
 三木という同性で青春映画という作風も同じなのであるが、『思い、思われ、ふり、ふられ』を撮った孝浩監督の作品にはいつも感銘を受けるものの、康一郎監督の作品には何故か粗を見出してしまい、個人的には相性が良くない。


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『思い、思われ、ふり、ふられ』

2020-08-15 22:18:57 | goo映画レビュー

原題:『思い、思われ、ふり、ふられ』
監督:三木孝浩
脚本:三木孝浩/米内山陽子
撮影:柳田裕男
出演:浜辺美波/北村拓海/福本莉子/赤楚衛二/上村海成/三船海斗/古川雄輝/戸田菜穂
2020年/日本

「愛の物語」の「構造」をなぞる意味について

 両親の再婚により姉弟になってしまった山本朱里と山本理央に同級生で同じマンションに住んでいる市原由奈と由奈の幼馴染みの乾和臣との「四角関係」は複雑そうに見えるが、映画的な「構造」が垣間見える。
 ある日、由奈は愛読書である『眠れる森の美女(Sleeping Beauty)』の王子とそっくりな男性を見かけるのであるが、それは引っ越してきたばかりの理央だった。当初2人の気持ちはすれ違っていたのだが、高校の文化祭で理央が王子様のようなコスチュームを着て由奈に改めて告白する時、それは有名な「愛の物語」をなぞることになって成就するのである。
 一方で、朱里と和臣の関係が上手くいかない原因は、朱里は「通訳者」を、和臣は映画の制作者を目指しており、つまりそれは「主人公」ではなく「主人公」たちを繋ぐ「裏方」であるために「愛の物語」をなぞれないのである。それでもラストで朱里と和臣が結ばれた理由は、親に自室にあったDVDを全て捨てられてしまったことで「裏方」であることを拒まれた和臣が朱里に2通のラインを送ったことにある。それは本作の冒頭で理央が朱里にしたことと同じことで、その時は朱里は家族を想って「裏方」に徹したことで失敗したのであるが、今回は失敗しないようにすぐに朱里は和臣が待っている場所に向かう。それは本作そのものである「愛の物語」をなぞることになり、「裏方」だった2人も愛を成就することになるのである。


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『今宵、212号室で』

2020-08-14 00:58:35 | goo映画レビュー

原題:『Chambre 212』 英題:『On a Magical Night』
監督:クリストフ・オノレ
脚本:クリストフ・オノレ
撮影:レミー・シェヴラン
出演:キアラ・マストロヤンニ/バンジャマン・ビオレ/ヴァンサン・ラコスト/カミーユ・コッタン
2019年/フランス・ルクセンブルク・ベルギー

ファンタジーで問う浮気の原因について

 事の起こりは47歳の妻のマリアが浮気をしたことを50歳の夫のリシャールが知ってしまったことである。口論の後、マリアは家の向かいにあるホテルの212号室を借りて一晩一人で過ごすはずだったが、若い頃のリシャールや母親や過去の14人の浮気相手が現れ、ファンタジー映画の様相を呈する。
 25年の結婚生活の間、リシャールの方は浮気をしていなかったようだが、マリアと結婚するまで10歳年上のピアノ教師のイレーヌと交際しており、リシャールはリシャールでマリアの浮気をきっかけにもしもイレーヌと結婚していたらどうなっていたのかという妄想に悩まされるのだが、その時、イレーヌは二人の間に生まれたという男の子を抱えている。つまりマリアとリシャールの関係がこじれた原因の一つとして2人の間に子供がいないこともあったのかもしれない。
 マリアとリシャールが訪れたレストランが「ローズバッド(Rose Bud)」という名前なのが気になる。「若いうちに青春を楽しめ(Gather ye rosebuds while ye may.)」という諺があるからである。
 シャルル・アズナヴールが1969年にリリースしたシングル「デゾメ」を和訳しておく。本作のメインテーマである。

「Désormais」Charles Aznavour 日本語訳

これからは
もう誰も僕たちが一緒にいるところを見ることはないだろう
これからは
僕の心は
僕たちに見合った世界が時の流れで荒廃して
瓦礫と化した中で生きていくことになる
これからは
もう僕が声を出して「愛している」と言うことはないだろう
これからは
君の影になりたかった僕は
自分自身の影に徹するだろう
君の手と僕の手は離ればなれになってしまったんだ

僕たちが同じ果物を食べ合ったり
同じベッドで眠ることも
同じ態度をとることももう二度とないんだ
僕たちの幸せやそれ以上のことが消え去るのを見て
同じように恐れることももう二度とないんだ
これからは

これからは
僕たちは別々に友人たちと会うだろう
これからは
僕たちはそれぞれの習慣や
僕が僕たちのものだと信じていた言葉を変えるだろう
君は他の男たちの腕の中でその言葉を言うのだから
これからは
僕は閉まったドアを監視するだろう
これからは
僕は孤独の中に閉じこもって
いつも君のことを思い出させる物の中をさまようんだ

僕たちが同じ果物を食べ合ったり
同じベッドで眠ることも
同じ態度をとることももう二度とないんだ
僕たちの幸せやそれ以上のことが消え去るのを見て
同じように恐れることももう二度とないんだ
これからは

もう誰も僕たちが一緒にいるところを見ることはないだろう
もう誰も僕たちが一緒にいるところを見ることはないだろう
もう誰も僕たちが一緒にいるところを見ることはないだろう

Charles Aznavour - Désormais (Audio Officiel)


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「同じ内容」と「コピペ」の違いについて

2020-08-13 00:33:42 | Weblog


(2020年8月11日付毎日新聞朝刊)

 11日の記者会見で菅義偉官房長官が、広島平和記念式典(6日)と長崎平和祈念式典(9日)での安倍晋三首相のあいさつが酷似していたことについて問われた際に、「どうしても同じような内容になってくる」と釈明しているが、この釈明には誤魔化しがあると思う。
 確かに毎年同じ式典の内容が似たようになることは仕方がないとしても、毎年被爆者のことを思いながら熟考して一から文章を練るならば「文言がほぼ完全に一致するような文章」になることはありえないからで、さらに安倍首相に、例えば言葉を前後入れ替えてそのことを隠す様子さえも見られないということは、原爆を落とされたことさえもはやどうでもいいし、どうせ選挙に負けることもないだろうという自信を伴った開き直りがあると思う。本当に恐ろしいことだと思う。

gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/politics/mainichi-20200811k0000m010082000c


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『ぐらんぶる』

2020-08-12 00:57:58 | goo映画レビュー

原題:『ぐらんぶる』
監督:英勉
脚本:英勉/宇田学
撮影:小松高志/大嶋良教
出演:竜星涼/犬飼貴丈/与田祐希/朝比奈彩/小倉優香/石川恋/高嶋政宏
2020年/日本

ブラックコメディと「悪ふざけ」の違いについて

 最初の方から、これは『ハングオーバー』(トッド・フィリップス監督)のようなブラックコメディ映画なのか、それともただの悪ふざけなのか迷いながら観ていたのであるが、最後の方に差し掛かってようやく主人公の北原伊織と今村耕平の2人の「逃走劇」の様相を呈してきて、一気に期待が高まった。例え、その「逃走劇」が失敗に終わったとしても、そもそもアメリカン・ニューシネマは敢えて負け戦に挑む若者が大人たちを前に無惨に敗北するリアリティが売りなのだから、どちらに転んでも良かったのであるが、驚くべきことに2人が逃走したこと自体が大学のダイビングサークル「Peek a Boo(ピーカブー)」のメンバーたちに認識されておらず、ラストで伊織が海底から拾って来た小瓶の中の手紙の「オチ」も非現実的で、上映時間2時間近く悪ふざけに付き合わされた気分が抜けない。
 伊織と古手川千紗の会話を盗み聞きした吉原愛菜が2人の潜水の練習をするという会話を交際するという会話と誤解するのであるが、ここは「字幕」無しで演出して欲しいものである。


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