東京の上野の森美術館で催されている『デトロイト美術館展』ではポール・セザンヌの作品も
展示されているのであるが、どうもセザンヌが人物画を描く意味がよく分からない。
『水浴する人々(Bathers)』(1880年頃)
例えば、セザンヌがよく描く「水浴図」は人物を描くというよりも、あくまでも自然の一部として
描かれており、実際に描かれている人物には生気が全く感じられず、本当の意味で「静物画
(nature morte=死んだ状態)」なのである。
『画家の夫人(Madame Cezanne)』(1886年頃)
上の作品は夫人となるオルタンス・フィケを描いたものだが、これも生気が感じられない。
しかし絵画として観るから不自然なのであって、もしも「彫像」と見なして鑑賞するならば、
なかなか良い出来のように見えなくもない。だからと言ってこれ以上議論は深まらないが。
それにしても本展覧会で驚いたことは、写真撮影の許可よりも、作品によってはSNS上で
公開が禁じられている作品があることで、それもエーリッヒ・ヘッケル(Erich Heckel)や
オットー・ディクス(Otto Dix)のようなマイナーなドイツの画家ならともかく、
本展覧会で展示されているパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の作品の全6作品がともに
公開が禁止されているのである。もうピカソくらいの大御所ならば作品は全て
パブリック・ドメインにしてSNS上で闊達な議論を交わしてもいいと思うのであるが、
検索してみると公開禁止されているピカソの作品が次々と出てくる。