前回の伊藤巌さんのところで書いた森國弘さんのことも触れてみる。彼との出会いは
60年前で、昭和40年正月に初めて竹森氏などと東京を回ったのである。その前から豊
橋のご自宅を訪問していた。もちろん二人とも独身で、旧宅の頃である。既に彼は錦
絵を30枚ほど、番付を数十枚所持していた。相撲史跡研究会のころから錦絵の戸籍調
べを始めて、私も協力した。特に亡くなる数年前には数回に渡り、リュッサックで大
量に持っていかれた。しかし資料をいかして発表出来ずに終わってしまった。私のそ
の後も溜まったものがあったが、病に倒れたのは彼も残念であったろう。せめて最期
に病院でお会い出来たのは幸いであった。ご冥福をお祈りする。
昨夜、遠州森町の伊藤巌さんの夢をみた。彼との出会いは、浜松市の相撲趣味の会の大手弥吉氏からの手紙で、
伊藤さんと豊橋の森國弘さんが来るので、一緒に来ないかというのが初めてであった。私が当時の相撲雑誌に
投稿していたので、住所を知ったのであろう。その後は大手氏、伊藤さん、森さんのお宅へ何度も伺った。伊藤
さんのお宅は森町の山深い所であった。今は3人とも鬼籍に入られた。あの世というものがあれば、今頃は3人
で角談に花を咲かせていることであろう。伊藤さんの葬儀には、森さんと出席した。3人のお墓参りも出掛けた。
3人とも錦絵を100枚ほど所蔵していたが、私は手を出さなかった。伊藤さんの息子さんから、資料の処分を
依頼されたが、伊藤さんが生前付き合っていた地元の業者を紹介して、全部を持って行ってもらった。真の友人
なら手を出せないものである。後から何かを言われたくないのもある。