スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

合理性の比較&対人関係

2022-01-06 19:07:09 | 将棋トピック
 僕は第三種の認識cognitio tertii generisで,三浦九段がコンピュータから指し手の援助を受けていないと認識したわけですが,そう認識するcognoscereときの具体的な吟味というのがどのようなものであったのかということは,おおよそここまでの説明から理解してもらえたと思います。一言でいえば,それは合理性の比較,三浦九段の合理性と将棋連盟の合理性の比較であったわけです。つまり僕は,三浦九段がコンピュータから指し手の援助を受けるということはきわめて非合理的なことであり,かつ棋士がコンピュータから指し手の援助を受ける蓋然性が低いという三浦九段の合理性と,実際に処分を下したという将棋連盟の合理性とを比較して,三浦九段の合理性の方が高い,それも圧倒的に高いと判断したがゆえに,三浦九段はコンピュータから指し手の援助を受けていないという結論に至ったのだということです。
 こうした吟味というのは,必ずしも今回の再構成の中でのみ果たされたわけではなく,その当時から僕はそのような吟味をしていたのだということを証明することはできません。ただ僕は,当時の竜王戦の記事の中で,処分が下されたということは,将棋連盟が何らかの確証を得ていると解するのが合理的ではあるけれども,そうした合理的判断を将棋連盟に適用可能であるかは確信がもてないという意味のことを書いていて,これはこうした合理性の比較に依拠した記述です。これ以上のことはいえませんが,もしこれが合理性の比較という吟味が行われていたということを導いてくれるのなら,僕にとっては幸いです。
 ただ今から考えればこの記述は,一般的に将棋連盟は合理的な判断ができない組織であるという意味に解釈されるおそれがあるものでした。僕はそのようなことをいいたかったわけではなく,三浦九段の合理性の方が高いということを暗に匂わせるためにそう書いたのですが,誤解を招く表現をしていたことにはお詫びしなければなりません。ただ逆にいえばこれは,こういう記述をしてしまうくらい,僕は三浦九段がコンピュータの援助を受けていないということを確実視していたのだとご理解ください。

 僕が示した例は,個々のプレイの内容に着目するより,対人関係に注目する方が理解が容易になると思います。
                                        
 あるプレイヤーが,Aというプレイヤーと一緒にプレイをすると負けてしまうことが多く,逆にBというプレイヤーと一緒にプレイをすると勝つことが多いと仮定します。これは俗にカモと苦手といわれるもので,勝負事ではこうした関係が生じることがままあります。そこで,カモを相手にした場合は失点を恐れずに得点の獲得を目指し,逆に苦手を相手にした場合は得点の獲得を断念して失点の回避に向かうという打ち方をするなら,これは基本的にオカルトに属します。というのは,これは自分の得点状況や手の中にある牌が同一であったとしても,打ち方が変化するということになるからです。たとえばある場面で,リーチを宣言したのがAであるかBであるかだけで,自身がどのように打つのかということが変わってくるとすれば,それは単一の合理性に基づいたプレイであるとはいえません。したがってデジタルではなくオカルトであることになります。
 僕がこの例について,基本的にオカルトであるといったのは,デジタルに基づいてもこういう場合が生じる場合はないわけではないからです。たとえば,Aというプレイヤーはきわめて慎重に吟味して何を捨てまた何を残すかということを決定し,リーチを宣言したときの成功の精度,つまり得点を獲得する確率が高く,Bというプレイヤーは,最初からとにかくテンパイを目指し,テンパイをしたらリーチを宣言するというプレイヤーであるとしましょう。この場合,リーチを宣言する回数はAよりもBの方が多くなりますが,リーチを宣言した場合に得点を獲得することができる確率は,BよりもAの方が高くなります。そしてこうしたことがAとBというプレイヤーの性質として十全に認識されているとすれば,Aのリーチ宣言とBのリーチ宣言に対して,同じようにプレイしないということにも,一定の合理性があります。すなわち,Bのリーチに対してよりもAのリーチに対しての方に,より失点の回避を重視するということはあり得るのです。この場合はプレイの内容が変わってもデジタルです。

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