久しぶりにワタリウムに足を運び、石川直樹(写真)と奈良美智(絵、写真)とのコラボレーションによる展示『ここより北へ』を観る。
きっかけは、北海道と東北とにいくつもの同じ地名があったことだという。かつてアイヌは、和人との交易をなし、また東北に移ってきたこともあった。そこから、さらにサハリンへと向かうふたりの旅がはじまっている。
サハリンもアイヌの活動・生活範囲であった。日本統治の時代があり、敗戦によりソ連=ロシアの支配に移り、それでも地名も文化も風土も残る。残留コリアンの血をひくのではないかと思われる人の写真もあった。
現在でも、普通にサハリンを旅することはそんなに簡単でもないようだ。そのことと、日本統治時代の廃墟(王子製紙の工場)、山や原野の風景があいまって、猛烈な旅情を掻き立てる。いつか必ず行こう。
奈良さんの蔵書の展示がまた楽しい。エドワード・サイード、宮本常一、ミシェル・レリス、エリック・ホッファー、山口昌男、なぜか根本敬、アントン・チェーホフ、南方熊楠、数多くのアイヌ関係の書物。あれれ、師匠筋のA.R.ペンクの画集がない。
●参照
瀬川拓郎『アイヌ学入門』
姫田光義編『北・東北アジア地域交流史』
井上勝生『明治日本の植民地支配』(アジア侵略に先だってなされたアイヌ民族の支配)
伊佐眞一『伊波普猷批判序説』(伊波はアイヌをネーションを持たぬとして低く評価した)
OKI meets 大城美佐子『北と南』(OKIはアイヌの弦楽器トンコリの使い手)