Sightsong

自縄自縛日記

マット・ブリューワー『Unspoken』

2016-10-10 10:00:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

マット・ブリューワー『Unspoken』(Criss Cross Jazz、2016年)を聴く。

Matt Brewer (b)
Ben Wendel (ts)
Charles Altura (g)
Aaron Parks (p)
Tyshawn Sorey (ds)

一聴して仰天させられて(こんなことはあまりない)、何度も繰り返し聴いているが、これは凄い。ニューヨーク凄い。

ベン・ウェンデルはマーク・ターナーのように極端に走るブロウではなく音色の濃淡で魅せるタイプのテナーなのかな。この曲者集団において見事な強弱で自分の立ち位置を逃していない。全体を覆うチャールズ・アルトゥラのギターは前に後ろに出入りして、しかし漂うというよりは地に足を付けたうえでの艶やかさで、これもまた絶品。

そして何より素晴らしいのは大技小技で平然とサウンドを煽り続けるタイショーン・ソーリーである(正直言って、今まで良いドラムスだとは思っていたものの、ここまで圧倒されて実感することはなかった)。白眉は、チャーリー・パーカーの「Cheryl」である。最後にようやくテーマのメロディをもってくる構成は、リー・コニッツ『Motion』の「I'll Remember April」的で、しかもソーリーはそのときのエルヴィン・ジョーンズと同等以上のエキサイティングなドラミングを見せている。

●マット・ブリューワー
アントニオ・サンチェス@COTTON CLUB(2015年)

●ベン・ウェンデル
アントニオ・サンチェス@COTTON CLUB(2015年)

●チャールズ・アルトゥラ
トム・ハレル『Something Gold, Something Blue』(2015年)
トム・ハレル@Village Vanguard(2015年)
テレンス・ブランチャード『Breathless』(2015年)
アンブローズ・アキンムシーレ『The Imagined Savior is Far Easier to Paint』(2014年)
デイナ・スティーブンス『I'll Take My Chances』(2013年)

●タイショーン・ソーリー
『Blue Buddha』(2015年)
スティーヴ・リーマンのクインテットとオクテット(2007、2008、2014年)
マイラ・メルフォード『Snowy Egret』(2013年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
フィールドワーク『Door』(2007年)


ジョン・ブッチャー+ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ『So Beautiful, It Starts to Rain』

2016-10-10 00:14:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョン・ブッチャー+ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ『So Beautiful, It Starts to Rain』(clean feed、2015年)を聴く。

John Butcher (ss, ts)
Ståle Liavik Solberg (ds, per)

ジョン・ブッチャーの新作は、ノルウェーの打楽器奏者ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグとのデュオ。

もとよりブッチャーの個性は、相手や環境に応じてあまりにも柔軟に変貌を遂げるところにあって、またそれを可能にするサックスのハイテクがある。ここではドラムスやパーカッションの破裂音によって音空間が小刻みに分断され、ブッチャーのサックスもそれに呼応して微分化された音と素早い貌の変化を見せる。

これがブッチャーなので普通に聴いてしまうが、まともに対面すればあまりにもヘンなマルチフォニックの集合体。

●ジョン・ブッチャー
ジョン・ブッチャー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2015年)
ロードリ・デイヴィス+ジョン・ブッチャー『Routing Lynn』(2014年)
ジョン・ブッチャー@横浜エアジン(2013年)
ジョン・ブッチャー+大友良英、2010年2月、マドリッド(2010年)
ジョン・ブッチャー+マシュー・シップ『At Oto』(2010年)
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
ジョン・ブッチャー『The Geometry of Sentiment』(2007年)
デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』(2000年)
ジョン・ラッセル+フィル・デュラン+ジョン・ブッチャー『Conceits』(1987、92年)