郷田真隆はなぜ挑戦者決定戦に弱いのか 棋王戦 編

2024年04月15日 | 将棋・シリーズもの 中編 長編

 前回の続き。

 郷田真隆九段と言えば、その実力にもかかわらず、挑戦者決定戦での勝率が悪い。

 そこで、実際にどれほど苦戦しているのか数えてみようということで、まず竜王戦挑決0勝1敗

 名人戦はリーグ戦だからむずかしいが、2度出場しているので2勝0敗

 王位戦3勝2敗叡王戦0勝0敗王座戦0勝4敗

 ここまで5勝7敗と負け越しているが、ここからどうなるか。

 ぶっちゃけ、かなり数えるのがダルくなってきたが、今さら後に引けないので続けたい。

 


 続いては獲得経験もある棋王戦

 こちらは1997年に、南芳一九段を破って挑戦権を獲得。

 そこまでは良かったが、5番勝負では羽生善治棋王1勝3敗のスコアではね返されてしまう。

 で、ここからがまた試練になる。

 まず、2000年の第26期棋王戦では、挑戦者決定戦で敗者復活から上がってきた久保利明六段に、2連敗し挑戦を逃す。

 翌2001年の第27期、今度は敗者復活戦から勝ち上がったものの、佐藤康光九段先勝しながら勝ち切れず。

 2002年の第28期では、これまた敗者戦から上がってきた丸山忠久九段に2連敗し、王座戦と同じく怒涛の3年連続挑決敗退。

 しかも、2度敗者組2連敗しているんだから、ちょっと問題ありだ。

 おまけに2005年の第31期棋王戦でも、敗者戦から森内俊之名人に挑むも敗れ、郷田ファンからすれば頭をかかえたくなる惨状

 ただ、2011年の第37期棋王戦では、敗者戦から上がってきた若手トップの広瀬章人七段を押さえて、ようやっとトンネルを抜ける。

 このときも初戦を敗れて、「またか」とおもわせたところを2戦目でキッチリと取り返しての挑戦で、少しヒヤヒヤはしましたが。

 

 

 

 

 図は挑戦者決定戦の第1局

 「振り穴王子」の穴熊に郷田も対抗して、この局面。

 こんなもん、どうみても▲21飛成しか思い浮かばないが、次の手がいかにも「郷田流」だった。

 

 

 

 

 

 

 ▲85歩と、ジッと伸ばすのがコクのある手。

 目先の飛車成にとらわれず、穴熊の最急所に圧力をかけておくのが、この際の好判断だった。

 もちろん▲21飛成でも悪くはないのだが、ここでそれを保留できる精神力がすばらしい。

 控室で検討していた青野照市九段からも「郷田好み」のお墨付き。

 なにかこう理屈抜きで「つえーなー、オイ」という気にさせられるのだ。

 将棋はこの後、熱戦になって二転三転の末に郷田が敗れたが、その存在感は存分に見せたようだ。

 続く久保利明棋王との五番勝負でも郷田は強かった。

 

 

 

 第1局のこの局面。

 やはり相穴熊の戦いだが、作戦負けで苦しげなところ、次の手が意表の一着。

 

 

 

 

 ▲96銀と出るのが、形にこだわらない強い手。

 ねらいとしては次に▲85歩から歩を交換すれば、一歩を手持ちにした上にが大いばりで指せると。

 それはいけないと久保は△73桂と交換を拒否するが、今度はそこでまたもやジッと▲87銀

 

 

 

 

 手損となったが、後手に△73桂と跳ねさせ、アーマークラスを下げたことが地味に効いている。

 木村一基八段曰く、

 


 「負けてもこういう手を指すと「強いなあ」と感嘆しますね」


 

 この将棋こそ敗れたものの、その後3連勝3勝1敗奪取

 ようやっと苦労が報われる形に。

 王座戦とちがって、こっちはハッピーエンドだったが、その翌年には渡辺明竜王1勝3敗で敗れて失冠

 挑決ともうひとつ、防衛戦でなかなか本領を発揮できないのも、郷田の泣き所だったが、これまたなぜか。

 理由はやはり不明である。

 おっと、忘れるところだった2021年、第47期の挑決でも永瀬拓矢王座に敗れて、またひとつ黒星を増やしてしまった。

 永瀬は今バリバリでA級タイトルの常連だから、ある程度はしょうがないとはいえ、うーん、ここは久しぶりに郷田のタイトル戦が見たかったのだが……。

 

 (続く

 

 

 ☆棋王戦挑決 2勝5敗獲得1

 


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2 コメント

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Unknown (wakuwaku)
2024-04-16 01:46:50
思えば永瀬九段も最近はよく挑決で負けてますよね
郷田九段とは棋風もさほど似通ってるわけでもないですけどどこか通づるものがあるんでしょうか
Unknown (シャロン)
2024-04-17 14:42:21
 wakuwakuさん、コメントありがとうございます。

 たしかに永瀬九段は最近、挑戦者決定戦での敗退が目立ちますね。

 特に竜王戦と叡王戦で伊藤七段に「往復ビンタ」を喰らったのは痛かった。

 王座戦のショックはあったでしょうが、朝日杯で優勝したり、引きずってないと思うのですが……。

 他にも挑決まで行きながら壁が突破できてないのはだれだろう。

 調べてみると(←これをやったせいで返信が遅れてしまいました(^^;))

 村山慈明八段、佐々木勇気八段、澤田真吾七段、大橋貴洸七段、松尾歩八段、中川大輔八段、青嶋未来六段、黒沢怜生五段、服部慎一郎六段、先崎学九段。

 思い出せる範囲で、こんなもんですか。増田康宏八段の名前がないのが意外。

 いずれもタイトル戦に出ていても、おかしくないメンツ。

 服部、佐々木、澤田、大橋、青嶋といったところは、まだチャンスがありそうですね。

 もっとも今だと、出たとて奪取となれば、これがなかなかですが……。

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