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人生はシネマティック!

2017年11月29日 | 映画

第2次世界大戦時のロンドンで、映画作りに情熱をかける人々を描いたヒューマンドラマ。ジェマ・アーターソン、サム・クラフリン、ビル・ナイが共演。「17歳の肖像」のロネ・シェルフィグが監督を務めています。

人生はシネマティック! (Their Finest)

1940年、第2次世界大戦下のロンドン。コピーライターの秘書として働くカトリン(ジェマ・アーターソン)が、徴兵された同僚の代わりに書いたコピーが、情報映画局の特別顧問バックリー(サム・クラフリン)の目に留まり、新作映画の脚本チームにスカウトされます。

その映画は国民の士気を高めるためのプロパガンダ映画で、ダンケルクでドイツ軍に包囲された兵士を救出した双子姉妹を描いた作品でした。女性ならではの視点を買われ、生活を支えるためにも奮闘するカトリンでしたが、政府からの要望やベテラン俳優のわがままに翻弄され、映画作りは波乱の展開となります...。

ひっそりと公開していたこの作品、実はノーマークでしたが、なかなか評判がいいので見てみたくなりました。劇中劇でダンケルクの映画作りが描かれるというのも興味津々でした。戦争映画であり、映画作りのバックステージものであり、恋愛映画でもありますが、女性の自立を描いた物語として心に響く作品でした。

戦時中のプロパガンダ映画といっても、あまりにあからさまでは国民もしらけてしまう。さりげなくメッセージを織り込みながらも、見る人たちの心を動かす作品を作りたい。そこに作る人たちのセンスが問われるわけですが、本作を見ながら、戦時中とは思えないイギリス人たちの心の余裕、映画文化の深さも感じ、ちょっぴりうらやましくなりました。

女性の能力が男性ほど認められていなかった時代ですが、もともと文章を書くことにずば抜けたセンスをもっていたカトリン。働き盛りの男性たちが次々と徴兵されるという状況の中で、彼女の才能が生かされ、活躍するチャンスが回ってきたのでした。

先日「ダンケルク」を見たばかりなので、劇中劇の背景や撮影について手に取るようにわかっておもしろかったです。「ダンケルク」の中で、イギリスから救助に向かった民間船がダンケルクの海岸に集合する場面は最も感動するシーンのひとつだったので、本作でプロパガンダの題材として選ばれたのも大いに納得でした。

双子姉妹は実際には船のトラブルで現地に着けず、途中で他の船から兵士を拾っただけだったのですが、映画では小さなエピソードを積み重ねることでリアリティのある感動的な作品に仕上げます。船のトラブルをどうやって解決したことにするか... カトリンが考えた脚本が、彼女自身の成長と重なってていて心打たれました。

人々の心に訴える作品を作ろうと奮闘するカトリンたちですが、日々爆撃の恐怖にさらされ、別れや喪失、破壊とともにある彼らの日常の方がよほどドラマティックであるという皮肉。しかし、そうした状況の中で、もの作りの喜びが明日の希望へとつながっていくことが伝わってきて、さわやかな感動を覚えました。

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