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小泉八雲旧居 ~ 庭園茶寮 みな美 ~ 羽田空港

2023年01月14日 | +島根

2年越しの島根旅行記も今回でようやく最終回です。これまでの記事はこちらです。

1.島根ひとり旅 出雲大社
2.出雲・稲佐の浜 ~ 松江へ
3.足立美術館
4.玉造温泉散策 ~ MOSOROのお刺身御膳
5.松江城(天守・松江神社・興雲閣)

松江城山公園から堀川をわたって、武家屋敷の並ぶ塩見縄手方面に向かいました。

稲荷橋の上から見る堀川の眺めです。ちょうど堀川をぐるりと巡る、観光遊覧船が来ました。今回私は乗らなかったのですが、風情ある観光船の中から、のんびり松江の街を眺めるのもよかったかな、と後から思いました。

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最初に向かったのは、小泉八雲記念館です。(撮影不可のため、写真はありません)小泉八雲 (ラフカディオ・ハーン) といえば「耳なし芳一」「雪女」などの日本の怪談話をまとめた『怪談』の著者として知られています。私も彼の著作を子ども時代に読みましたが

今回は、彼の生涯や、どのようないきさつで日本の松江まではるばるやって来たのか、また松江での生活の一端を知る、いい機会となりました。1850年にギリシャの島で生まれた小泉八雲は、ご両親が国際結婚で、自身もヨーロッパ、アメリカ各地、カリブの島に移り住み

当時ではまだめずらしい文化的な多様性をもったジャーナリストであり、文筆家でした。夏目漱石や、私の好きな彫刻家のイサム・ノグチとも接点があったことを知り、うれしく思いました。

次に、小泉八雲記念館の近くにある、小泉八雲旧居を訪れました。八雲は日本では、松江のほか、熊本、神戸、東京に住みましたが、住居が残っているのはここだけということです。こじんまりとした住居ながら、三方にそれぞれ趣のある庭があります。

枯山水を意識しつつも、整然とはしていなくて、家庭的な温もりの感じられるお庭が好もしく感じました。

八雲が執筆に使っていた机です。

八雲の妻、セツ夫人が家族を呼ぶときに使っていたほら貝だそうです。想像したら、なんだか楽しくなってきました。

小泉八雲旧居のある塩見縄手には、修復保存された武家屋敷が並んでいます。中も見学できますが、私は入らず、前を通って雰囲気だけ味わいました。

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お昼は、明治21年宍道湖畔に創業、多くの文人に愛されたという旅館 皆美館にあるレストラン庭園茶寮 みな美さんで、美しいお庭を眺めながら、名物の鯛めしをいただきました。

鯛めしのセットです。カレイの白醤油焼き、胡麻豆腐、もずくの小鉢がついています。

そして、こちらが皆美皆伝の鯛めしです。お皿にのった、そぼろにした鯛の身、ゆでた卵の白身のみじん切り、裏ごしした黄身をごはんの上にのせ、ワサビ、大根おろし、ねぎ、海苔を添えて、だし汁をかけていただきます。

鯛めしといえば、愛媛でいただいた松山鯛めしと宇和島鯛めし、箱根でいただいた瓔珞(ようらく)さんの鯛めしなどが思い出されますが、それらのどれとも違う味わいで、ゆで卵をあわせるというのが新鮮でした。おいしくいただきました。

食事の後は、レストランに隣接する美しい日本庭園を見せていただきました。宍道湖を借景とし、樹齢300年の名木を中心とした、白砂青松の枯山水庭園です。

そしてこちらのお庭、足立美術館が1位にに選出されている、アメリカの日本庭園専門雑誌 Sukiya living : the journal of Japanese gardening で、第3位に選出されています。こじんまりとした、手入れの行き届いた名園でした。

最後に宍道湖を見て、松江を後にしました。

帰りの飛行機からの眺めです。赤く染まった水平線が美しく、私たちは今、地球という天体にいるのだと実感する風景でした。

まもなく羽田。東京湾から見る富士山のシルエットにほっとした気持ちになりました。

羽田空港に夫が迎えに来てくれたので、空港内にあって以前から気になっていたカレーうどんの cuud (クウド) で夕食にしました。数種類ある中から2種類選んでハーフ&ハーフでいただきました。

スタイリッシュな空間でいただく、スパイシーでシンプルなカレーうどんは、辛さの中にまろやかさがあってとってもおいしかったです。

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松江城(天守・松江神社・興雲閣)

2023年01月07日 | +島根

だいぶ間が空いてしまいましたが、島根旅行記の続きです。なんと2年越しになってしまいました...。これまでの記事はこちらです。

1.島根ひとり旅 出雲大社
2.出雲・稲佐の浜 ~ 松江へ
3.足立美術館
4.玉造温泉散策 ~ MOSOROのお刺身御膳

旅行3日目の最終日は、ホテルに荷物を預けて松江市内を巡りました。まずは松江駅前からバスに乗って、松江城を訪れました。県庁前から堀川を渡り、石垣に沿って遊歩道を歩きながら、徐々に天守に近づきました。

石垣越しに天守が見えてきました。

天守を中心に、堀川で囲まれた敷地は、松江城山公園として整備されています。石垣の周りは緩やかな起伏のある美しい遊歩道となっていますが、朝は人がほとんど歩いていなくて貸し切り状態。贅沢なお散歩となりました。

途中で石段を上がると、天守の横に出ました。

こちらが正面です。ちょうど開場がはじまったたばかりで、ほとんど一番乗りでした。

1611年、関ヶ原の戦で功績を上げた出雲・隠岐の大守、堀尾吉晴が築城しました。国内に現存する12天守のひとつで、2015年には国宝に指定されています。4重5階地下1階。落ち着いた佇まいのお城です。

築城ブームで木材が不足していた当時、心柱を使わず2階分を貫く通し柱を多用して天守を支えているのが特徴で、柱を鎹(かすがい)や鉄輪(かなわ)で補強して包板(つつみいた)で覆うなど、さまざまな工夫で築き上げた質実剛健なお城です。

また、石落としや鉄砲狭間など、実戦に備えたさまざまなしかけを設えています。

最上階は天狗の間とよばれています。望楼となっていて、松江の街をぐるりと見渡すことができました。

南には、宍道湖(しんじこ)がよく見えました。

下を見下ろすと、そろそろ見学の人たちが増えてきたので、下に降りることにしました。

天守と同じく松江城山公園にある松江神社です。松江藩松平家藩主の松平直政、松平治郷、松江開府の祖 堀尾吉晴、徳川家康など松江の発展に貢献した人たちが祀られています。

その隣には興雲閣(こううんかく)があります。1903年に明治天皇の行幸を願って建てられた洋館ですが、実際には皇太子(後の大正天皇)がご宿泊されました。ミントグリーンがさわやかなかわいらしい洋館です。

赤い絨毯が敷かれた風格のある階段。

2階は大広間と、皇太子が宿泊された貴顕室があります。秋の日差しが柔らかく、ベランダから見る紅葉・黄葉もすばらしい眺めでした。

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玉造温泉散策 ~ MOSOROのお刺身御膳

2022年11月26日 | +島根

島根旅行記の続きです。これまでの記事はこちら。

1.島根ひとり旅 出雲大社
2.出雲・稲佐の浜 ~ 松江へ
3.足立美術館

足立美術館を訪れた後、まだホテルにもどるには早い時間だったので、玉造温泉 (たまつくりおんせん) に寄ってみることにしました。玉造温泉は入浴剤などで名前だけは知っていましたが、山陰を代表する温泉のひとつに数えられています。

調べてみると山陰本線の玉造温泉駅と温泉街は離れていることがわかったので、松江駅前からバスに乗って行きました。

温泉街を貫く玉湯川沿いに、歴史を感じる風格のある旅館が点在しています。おみやげ屋さんはあまりなく、町全体が静かで落ち着いた雰囲気でした。上の写真に写っているのは、玉造温泉のシンボル、勾玉橋 (まがたまばし) です。

川沿いに桜並木が続いていて、桜の季節もきれいだろうなと思いました。風に揺れる桜の紅葉もなかなか味わいがありました。川沿いをひと通り散策し、せっかくなので日帰り温泉に入ってから、松江にもどりました。

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前日の夕食が気に入ったので、この日の夕食もホテルのレストラン MOSORO (モソロ) でいただきました。女性の一人旅は夕食の場所に困りますが(夜ひとりで繁華街に行きたくないし、ちょうどいいお店がなかなかない)

ここはホテルの中にあって、明るく落ち着いた雰囲気の中で、地元のお料理やお酒を、ゆったりくつろぎながらいただけるのがとてもよかったです。お勧めです!

さて、この日はコースではなくセットメニューの中から、お刺身御膳をいただきました。

御造り6種盛り、小鉢、煮物、酢の物、ごはん、香の物、宍道湖産しじみのお吸い物。

島根といえば、宍道湖のしじみが名物。パウチになったしじみが、おみやげにも人気だそうです。お刺身は内容を忘れてしまいましたが、たしか地元の代表的なお魚ばかりで、どれもおいしかったです。

セットには、名物の出雲そばもついていました。

デザートはかぼちゃのプリン。全体的に、私のおなかにちょうどよい量で、最後までおいしくいただきました。

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足立美術館

2022年11月20日 | +島根

だいぶ間が空いてしまいましたが、昨年11月に訪れた島根旅行記の続きです。久しぶりなので、これまでの2記事をリンクしておきます。

1.島根ひとり旅 出雲大社
2.出雲・稲佐の浜 ~ 松江へ

旅行2日目は、島根県安来市にある 足立美術館 を訪れました。2012年に赤瀬川原平さんの「個人美術館の愉しみ」を読んで以来、ずっと行きたいと願っていた憧れの美術館です。松江駅からJR山陰本線に乗って安来駅へ。駅前から美術館行きのシャトルバスが出ています。

美しい紅葉に迎えられて

足立美術館は安来出身の実業家、足立全康 (あだちぜんこう) 氏が1970年に創設した美術館です。横山大観の日本最大のコレクション (約130点) をはじめ、竹内栖鳳、河合玉堂らの日本画、北大路廬山人の陶芸など約1,500点を所蔵していますが

もうひとつの見どころは、なんといっても5万坪に及ぶみごとな日本庭園です。

中根金作氏が作庭し、足立氏が日本中から岩や松などを探し集めたという庭園は、枯山水庭、白砂青松庭、苔庭など6つのテーマに分かれています。毎日専属の庭師と美術館スタッフによってメンテナンスがなされ、常に完璧な状態が維持されています。

そしてこの庭園が、アメリカの日本庭園専門雑誌 Sukiya living : the journal of Japanese gardening が毎年発表しているランキングで、2003年から19年連続日本一に選出されているということです。

歴史的な価値や知名度ではなく、美術館が所蔵する芸術作品と日本庭園との調和、庭園も美術作品の一部であるという美術館の姿勢が、海外の研究者から理解され、評価されていることがすばらしいと思いました。

苔庭。赤松は山の斜面に生えていたのと同じ状態で、斜めに植栽されているそうです。

枯山水庭。美術館の主庭です。

すでに写真では何度も見ていましたが、実際にこの場に立つと、借景も含め精密に計算された完璧な風景に、圧倒される思いでした。美術館はこの借景を維持するために、周囲の山林も購入しているということです。

横の角度から。

建物の窓枠から見ると、そのまま額縁にふちどられた風景のようになっているのが、心憎い演出です。

坪庭。苔の緑と白砂のコントラストの美しさに目を奪われました。

喫茶室「大観」に面した池庭。お庭を見ながら優雅な気分でいただく島根和牛のビーフカレーは格別でした。

季節にあわせて展示されるコレクションの数々もみごとでした。この時はちょうど秋季特別展が開催されていて、横山大観画伯の「紅葉」が、やはり心に残りました。

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出雲・稲佐の浜 ~ 松江へ

2022年01月17日 | +島根

出雲大社を出た後、せっかくなので日本海が見たいなーと道路脇の地図を見ていたら「稲佐の浜ですか?」と県内からご旅行に来ている方が声をかけてくださり、いっしょに稲佐の浜 (いなさのはま) まで歩くことになりました。

そのうち、地元の親切な方も道案内に加わって、思いがけない道行きとなりました。この日は晴れの予報でしたが、途中からみるみる雲が広がり、雨がぱらぱらと降り始めました。念のために傘を持ってきていてよかったです。

出雲大社から西に30分ほど歩いたところにある稲佐の浜は、旧10月の神在月に全国から集まる神々をお迎えする浜として知られ、神々はここから出雲大社に向かうのだそうです。稲佐の浜の砂を出雲大社で清めて家の庭にまくと、厄除けになるという言い伝えもあります。

浜に鎮座する大きな岩の上には、小さなお社がありました。

思いがけず雨に降られてしまいましたが、再び出雲神社の方へともどる時に、空にみごとなダブルレインボーが架かっているのが見えました。奇跡の風景に感動しました。

出雲大社までもどってから、同行した方と鳥居前の 出雲ぜんざい餅 大社店 で出雲ぜんざいをいただきました。初めて知りましたが、出雲はぜんざい発祥の地でもあるとか。優しい甘さのおいしいぜんざいでした。

参道沿いに趣のある旅館を見つけて思わずパチリ。この後、出雲大社に砂を清めに行くという方と別れ、私はローカル線の一畑電車とバスを乗り継ぎ、宿泊地の松江へと向かいました。

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今回私が宿泊したのはJR松江駅前の 松江 エクセルホテル東急 です。アクセスがよく華美でなく女性がひとり泊まるのにちょうどいい感じのホテルでした。女性専用フロアがあるのもなんとなく安心です。

松江駅前はオフィス街で、飲食店が並ぶ繁華街 (それほど大きくはない) は少し離れたところにあるので、ホテルでのんびりしたかった私は、夜はホテルのレストラン MOSORO (モソロ) で食事をすることにしました。

島根各地の食材や名物料理を取り入れたコースやセットが豊富、地元のお酒が静かに楽しめて、ゆったりくつろげたのがよかったです。私は無性にお肉が食べたくて、山陰の味覚《石見》というコースにしました。

アミューズは野菜のマリネ。前菜3種は、のどくろのフリット、ひらまさのカルパッチョ、なんとか(失念)の入ったシュー。器は石見地方の石州瓦です。

せっかくなので地酒がいただきました。松江の地酒では、李白、豊の秋、國暉が有名だそうです。この日はコクのある豊の秋をいただき、後日おみやげ用にさっぱりとした李白を買って帰りました。

野菜とお豆の入ったブイヨンスープはコクのあるお味。

彩りサラダと、メインディッシュの島根県産大国牛サーロインステーキ。

柚子胡椒、粗塩、ピンクペッパー、たれなどつけていただきます。お皿が大きいので量が少なく見えますが^^ 結構ボリュームがあっておなかいっぱいになりました。焼き加減もパーフェクトでとてもおいしかったです。

出雲ぜんざいかコーヒーが選べますが、ぜんざいは先ほどいただいたのでここはコーヒーで。コクがあっておいしかったです。酔ってもすぐに部屋にもどれる気楽さが快適でした。

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島根ひとり旅 出雲大社

2022年01月15日 | +島根

記事にするのがすっかり遅くなりましたが、11月半ばに3連休をいただいて、島根へぶらりひとり旅をしてきました。島根を訪れるのは初めて。旅先で誰かと合流というのはこれまで何度もありましたが、完全なひとり旅というのは初めて。

最初のうちは (しっかり引継ぎをしてきたとはいえ) 仕事のことが気がかりでしたが、風の吹くまま気の向くままの自由な時間を満喫し、すっかりリフレッシュしてきました。旅先では名所よりも、なんでもない風景の方が心に残りました。

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11月といえばコロナの感染者数がだいぶ落ち着いていた頃で、羽田空港は観光客やビジネス客で大混雑でした。セキュリティチェックに長い列ができていて、最後は優先していただいてようやく機内に乗り込みました。

飛行機が離陸すると、やがて雲海から顔を出す富士山の美しさに息を呑みました。旅のスタートを飾るのにふさわしい晴れ晴れとした風景でした。

約1時間半後、飛行機が下降しはじめると、今度は松江に近い宍道湖に隣接する汽水湖、中海が見えてきました。初めて見る島根の風景です。間もなく出雲空港に着陸し、そこからバスにゆられて約40分。出雲大社を目指しました。

参拝の前にまずは名物の「出雲そば」をいただくことに。出雲大社近くの田中屋さんが有名ですが、長い列ができていたので、私は鳥居の前の おくに茶屋 さんに入りました。調べず何気なく入ったお店ですが、おそばがおいしく、お店のスタッフも感じよく大満足でした。

私は出雲そばの定番「三色割子そば」をいただきました。3段のお蕎麦+1段の薬味が重ねて運ばれてきます。おそばにそれぞれおつゆをかけ、薬味を添えていただきます。おそばの上にのっているのは、天かす、とろろ、卵黄でした。

おそばの特徴としては、色はやや濃くしっかり風味が味わえます。おつゆはかけていただくので、お醤油控えめでその分おだしが効いています。薬味に紅葉おろしがあるのがユニークでした。七味の代わりでしょうか? さっぱりおいしくいただきました。

さて、いよいよ出雲大社です。偶然ですが、私が訪れた11月は旧暦10月で「神迎祭」「神在祭」が行われていました。旧暦10月を一般には神無月といいますが、それは出雲に全国から神々が集まるからだそうで、出雲では旧暦10月を「神在月」とよんでいます。

民間語源の俗説ではありますが、そんなこともあって、いつもより観光客が多かったようです。鳥居から続く参道は、鬱蒼というより、明るく木漏れ日が美しかったです。

拝殿です。実は想像したより小さい、というのが第一印象でしたが、あの太い注連縄がある!とうれしくなりました。

このような太い注連縄が、境内外にあるいくつものお社にかけられていました。

拝殿の東のお社に長い列ができていました。八百万の神がお泊りになるこの時期は、東西のお社にある19の扉が開かれるそうです。

ブロンズでできた神馬像。この横に神牛像もあります。参拝者が皆なでるので、お顔がつるつるになっていました。^^

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