これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

いつまでも あると思うな

2018年06月10日 22時17分22秒 | エッセイ
 わが家の水道は、レバーを上に持ち上げると水が出るタイプの蛇口を使っている。
 2週間ほど前に、夫が洗い物をしてすすぎをしようと、泡のついた左手でレバーを上に弾いたときだ。

 ゴロッ。

 何と、レバーが外れてしまった。



「うわうわうわ、水が止まらない!」
 ストッパーのない水道は、あとからあとから水があふれてきたが、どうにかこうにか栓を動かして止めることができた。



 ……それにしても、汚い蛇口だな。
 もう20年以上使っているから、内部の部品が劣化して、壊れてしまったらしい。見た目と同じように、内側も消耗していたわけだ。すぐさま、夫が工務店に電話をかけ、修理を依頼した。
「新しい蛇口が来るのは週末だって。不便だけど、それまで台所の水道は使えないよ」
「わかった」
 寿命といえばそうなのだろうが、夫が乱暴に扱うのも一因であろう。「ガンッ」「ゴンッ」という音を立ててレバーを上下させている現場を何度も見た。だが、本人は決して「壊した」とは言わない。あくまでも「壊れた」と言い張るところがヤツらしい。
 食事がすむと、食器は洗面所に運んでいく。中性洗剤とスポンジ、水切り台も移動させ、歯みがきより先に洗い物をすませる。大学4年の娘が首を傾げて眺めていた。
「なんか変」
「しょうがないでしょ」
 茶葉の入った急須などは、鍋に水をくんできて、三角コーナーで処理しなければならない。断水の不便さを思い出した。まな板も簡単に洗えないので、皿の上で食材を切ったりして、汚さないように努める。
 考えてみれば、将来起こり得るであろう、災害時の訓練といえないこともない。水は、いつでも自由に使えるとは限らないのだ。
 不自由なキッチンに慣れぬまま、週末がやってきて、ピカピカの新しい蛇口に替わる。



「おお~!」
 レバーを上げると、以前のように水が流れ出した。
「ありがたや、ありがたや」
 使いたいときに、水が出てくる喜びを忘れてはならないだろう。
「いつまでも あると思うな 親と水」なのである。
 いや、「水と金」かな?
 そのとき、脳裏に酸素チューブをつけた父の姿が浮かんできた。
 ううん、やっぱり「親と水」!


    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする