これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

電気は大事に使いましょう

2022年06月26日 21時37分01秒 | エッセイ
 時計は9時を少々回ったところだった。
 1時間目の授業が始まり、軌道にのってきたところで突然電気が消えた。
「あれっ」
 電気だけではない。パソコンも冷蔵庫の唸り音も、灯りと同時にピタッと止まった。
「停電?」
 廊下に出ると、教室がざわついている。パワーポイントを使って授業をしている先生は困惑していることだろう。うちの学校だけじゃない。信号も消えている。どうやら、学校近辺で停電が発生したらしい。
「今日で試験範囲を終わらせるんだ! 見えない人は窓際に来て。問6の不等式はどうなる?」
 2年の数学は演習問題の時間らしく、電気があってもなくても関係ないんだ! といった雰囲気で進んでいた。
「マイクが使えないから、拡声器を取りにきたわ~!」
 大ホールでの授業も、何とかできたらしい。期末考査まで残り時間が少ないから、どの教員も必死になっていた。
 一方、空き時間の教員たちもたくましかった。
「コーヒー飲みたい。まだ電気ポットのお湯、熱いよね」
「いけるでしょ」
「よし、いくぞ」
「でも、ボタン押してもお湯は出ないよ」
「スプーンですくおう」
「お玉は?」
「それだ!」



 かくして、コーヒーブレイクにこぎつけ、にんまりしている教員もいたが、お湯はどんどんなくなっていく。最後の人は、ポットをさかさまにしてカップに注ぎ、無理やりティータイムを確保していたので笑ってしまったが。
 トイレや手洗いの水に支障はなかったけれど、自動販売機は使えない、パソコンはつかない、部屋は暗いで、我々は電気がないと本当に何もできないのだと思い知らされた。
 突然、部屋が明るくなった。停電から復旧したのだ。
「やったあ!」
 時間にして、1時間ちょっとのことだったけれど、こういう経験も大事だと思う。
 梅雨明け前からすでに暑い。
 電気は大事に使わなくっちゃ。


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2022 苦しい父の日

2022年06月19日 22時47分24秒 | エッセイ
 今日は父の日。
 忘れていたわけではないが、夫に与える食事ばかりを考えて、実の父まで気が回らなかった。結局のところ、自分が食べるかどうかで優先順位が決まるのだ。
「しまった、何も買っていないなぁ」
 しかし、焦ることはない。父の誕生日は6月下旬なので、その頃にしれっと「父の日と一緒にしたよ」などと言って、コーヒーやお菓子を送ればすむ。ひどい娘だ。
 わが家の父の日メニューは寿司と牛ヒレステーキにした。夫の誕生日も6月だから、誕生祝いも兼ねてケーキも用意する。お昼は簡単に冷やし中華にするか。
「あれ、パパはいないんだっけ」
 引きこもりの夫も、ごくまれに出かけることがあり、今日がその日だった。わかっていたはずなのに、3人前の冷やし中華を買ってしまい、失敗したことに気づく。
「まあいいか。2人で3人前食べちゃおう」
 ごまだれをかけて、錦糸卵とハムに茹でた小松菜を載せた冷やし中華をいただく。娘はキュウリが嫌いなので、小松菜がワカメやほうれん草になったりするが、結構何にでも合うからよい。
 おやつにプリンを食べて、18時に寿司が届く。遅ればせながら、この頃、ようやく胃腸の異変に気づいた。
「ねえ、ミキ、お腹空いた?」
「ううん。全然」
「なんだろね」
「寿司とステーキが待っているのに」
 私も娘も、空腹感がゼロなのだが、時間になったので夕飯にした。



「ねえ、お母さん。お寿司もステーキも美味しいけど、お腹が苦しい」
「わかるわかる。このあとケーキもあるんだよ」
「ひいい」
「食べ切れるかな」
 苦痛の表情を浮かべながら、なぜ、今日は食が進まないのか考えてみた。
「……あれか」
「冷やし中華」
 やはり2人で3人前は多かった。慣れないことはするものじゃない。
 何とか料理を食べ切り、30分休憩したあと、ケーキにとりかかった。こんがりと焼けたベイクドチーズケーキが、白い皿の上で待っている。
「ううっ、これで最後だ!」
「ヨーグルトとハーブティーはもう無理」
 日課のヨーグルトをあきらめ、何とかケーキを完食した。もう、これ以上、何も食べられない。
「はあはあ」
「ふうふう」
 冷やし中華を食べなかった夫だけが、腹八分目で涼しい顔をしていた。
 反省しきりの父の日であった。


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半袖の季節

2022年06月12日 21時39分53秒 | エッセイ
 最高気温が25度を越えると、さすがに暑い。
「今日は何を着ていこうかな。白のブラウスと、グレーのタイトスカートと……」
 ここ数年、半袖を着ていない。どんなに暑い日でも長袖ばかりだ。半袖を着ると、冷房で腕が冷えて不調になる。特に肘の周りが凍えていけない。
「しかも、ご丁寧に、こんな席だし」
 職場の席は、なぜかエアコンの吹出し口の真下ときている。前の職場でも、その前の職場でも同じだった。暑がりの人は風の届かない場所を与えられ、首にタオルを巻いて汗をふきふきPC操作に励み、寒がりの私は手首まですっぽり袖に収め、ホットドリンクを飲みながら書類をめくる。
 何かおかしくない?
 しかし、半袖の服を着たくなるときがあるのだ。特に、一目ぼれして衝動的に買ったこのトップスは。



 細かなプリーツの下に花柄があり、チラ見えするのがいい。



 こちらも気に入っている。膝上までの丈だから、スパッツにも合う。



 今年こそ、どうにか着ようと思っていたところ、心強い味方があらわれた。
「ややっ、これはいいかもっ!」



 背中が暑くなるカーディガンよりは機能的という気がする。早速注文した。
 室内で日焼け対策グッズを使うとなると、周りの人の視線が怖い。「ナニあの人、気が狂ってる」と思われたりして。
 半袖を着ることと、白い眼で見られることを天秤にかけてみた。気に入った服を着る方が大事なので、半袖に軍配が上がる。
 他にも眠っている半袖がある。今年は活躍させなくては。


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ビデオ通話はご遠慮ください

2022年06月05日 20時11分57秒 | エッセイ
 翌日の体育祭に備えて、私はTシャツとジャージを選んでいた。
「赤、青、黄は避けた方がいいね。白か黒が無難かも」
 特定の団の色にならぬよう、箪笥の中を探していく。日焼け対策もしなくては。黒の薄手のハイネックを出し、全体的なバランスを確認する。
「よし決まり。じゃあ、お風呂に入ろうっと」
 Tシャツを脱ぎ、キャミソールだけになったとき、スマホの着信音が鳴り響いた。ここ数年「アヒル」にしているので、「ガアガアガア、ガアガアガア」とけたたましい。続いて、「○×△さんからです」との音声も聞こえた。この人は私の元上司で、職場が変わってもあれこれ面倒をみてくれる便利な……もとい、親切な人である。
 急いでスマホを手に取り、カバーを開ける。おや? カメラが起動しているのはなぜだろう。細かいことはあとにして、まずは「応答」をスライドした。
「もしもーし、笹木ですっ」
 ちょうど、面倒で手間のかかることを頼んでいたのだ。その件かもしれないから、愛想よくしなくては。よそゆきの声で出たはいいが、電話はすでに切れていた。
「あれれ、何だろう。操作ミスかな」
 履歴を見ると、「FaceTimeビデオ」と書いてあった。なんだこりゃ? すかさず検索してみる。
「うっわぁ、iPhone同士でできる無料のビデオ通話だって。だからカメラが起動してたのか」
 嫌な予感がした。続けて、今度は元上司からメールが届いた。
「先日ご依頼のあった○○が完成しました。明日送りますのでお待ちください」
 やはり操作ミスではなく、私に用事があって先ほどの電話をかけたようだ。
 おそらく、元上司は単なる連絡をするつもりだったのに、ボタンを間違えたのだ。昔から、うっかり者で、小さなミスをいくつもしでかす人だった。「発信」にすればよかったところを「ビデオ通話」にしたものだから、薄着の私が液晶に登場し、仰天してすぐに通話を終了した、といったところではないか。



 スマホのカメラを内向きにしてみた。いったい、どんな映像が送られたのか、確認せずにはいられない。
「なんだ、鎖骨ぐらいまでしか見えないじゃん」
 画面は予想よりも小さいせいか、キャミソール姿は映らなかったようだ。でも、化粧を落とし、くすんだ肌の素顔が大写しになっていた。自分でありながら、怖くてギョッとする。
「これじゃ、速攻で切るよね」
 ひどくガッカリしてスマホを閉じた。
 使いかたによっては、この機能、人間関係にヒビを入れそうな気がするんだけど……。


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