これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

カリフラワーに罪はない

2020年10月25日 20時57分54秒 | エッセイ
 夫は、まめに包丁を研いでいる。切れ味が鋭くなり、趣味の料理がはかどってよい。



「さて、今日はカリフラワーでも茹でようかな」
 さきほど、スーパーで徳島産の元気なカリフラワーを買ってきた。お湯を沸かし、洗って小房に分ければすぐにできる。胡麻ドレッシングをかけていただくのが好きだ。
 ところが、そう簡単にはいかなかった。
「う~、痛ッ!」
 包丁の操作ミスで手を切ってしまった。左手の小指のつけ根から血が噴き出している。包丁ではなく、カリフラワーを動かせば安全だったのに、横着したことが裏目に出たらしい。
「ヤバッ、なかなか止まらない」
 ワインを飲みながら調理していたせいか、結構な出血量だ。こんなに血が出たら、明日の健康診断で「貧血」になるのではと心配になる。
 なわけないか~。
 料理に血がついたらよろしくない。いくらハロウィンが近いとはいえ、本物の血が滴るカリフラワーなんぞ、誰も食べてくれないだろう。
「えーと、絆創膏、絆創膏」
 しばらくケガしていないから、家庭の絆創膏を使うのは何年ぶりか。いつもの場所を探してみたが、すべて「キズパワーパッド」にすり替わっていた。
 これじゃなーい!
 キズパワーパッドを愛する夫の仕業だ。仕方なく、ティッシュをたたみ、セロテープで小指にとめた。なんと惨めな。
 ときどき、昔の同僚男性が、「飼い犬に噛まれた」と言っては絆創膏を貼っていた場面を思い出す。オスの犬は興奮すると、飼い主だろうが何だろうが「ガブリ」とやってしまうのだとか。包丁の場合は、だいぶ事情が違うとは思うが、家の中が安全とは限らないという点では共通している。ガブリではなく、シャキーン! とやられないよう気をつけなくては。
「あ、止まったかな」
 出血量から傷口が深いと心配したのだが、全然そんなことはなかった。



 むしろ、かすり傷に部類に入るかもしれない……。ホッ。
 手を切りやすい食材のひとつに里芋がある。
「そういえば、最近、煮物を作っていなかったな」
 リベンジというわけではないけれど、作ろうという気持ちがわいてくる。
 今度は、シャキーン! とならないからね。
 次の休みは「里芋の煮っ転がし」で!


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2020 誕生日~ガリ勉オバさんを目指す?

2020年10月18日 22時40分39秒 | エッセイ
 今日、私はまた一つ歳を重ねた。
 といっても、8日前に義母が亡くなったため、お祭り気分ではない。(関連記事「死者への手紙」はこちらから)
 しかも、昨日は土曜なのに仕事で19時まで職場にいたし、まったく盛り上がらないままこの日を迎えたわけだ。たぶん、自分史上はじめてのことであろう。
「お母さん、ワインが着いたよ」
 娘が声をかけてきた。そうそう、家族は気をつかって、控えめながらもお祝いムードを醸し出そうとしていることがわかる。2日前に何が欲しいかと聞かれ、「スパークリングワインのセット」と答えたら、これが届けられた。



 10本あると迫力だ!



 ボーリングだってできちゃうぞ!
 まあ、やらないけどね。
「夕飯にお寿司を頼んだから、ご飯を作らなくていいんだよ」
「へー、うれし~」
 ワインもありがたいけれど、思わぬ自由時間にもニンマリする。さて、何をしよう。
「やっぱり、勉強でしょ」
 ちょうど、太宰治の『斜陽』を書き写している。英文和訳の面白さもわかり始めたところだ。もっと早く気づいていたら、翻訳家を目指したかもしれないのに、ああ残念。終わったら本も読みたいな。カミュの『ペスト』を読み始め、佳境に入ってきた。このあとどうなるのかしら。
 いくつになっても、人間の脳は成長を続けるらしいから、学べるうちは詰め込もうと思う。
 だが、日経ビジネスを読んでいたら眠くなってしまった。
「ぐう」
 座布団の上でうたた寝するのも一興だ。リラックスしている証拠とばかりに、時間を気にせず眠りに落ちる。なんという幸せ。
「ほら、起きて。お寿司来たから、ご飯にするよ」
「ムニャムニャ」
 娘に叩き起こされ、寝ぼけまなこで食卓に着く。
 一日を振り返り、好きなことをして過ごした午後が、実に貴重だったと感じた。あらためて、仕事や家事でキツキツのスケジュールはよくないと反省する。そういう過酷な環境で、新しいアイデアは生まれないし、人間らしい感性は磨かれない。
「安息日も必要かな」
 ちょうど、一歳年寄りになったわけだから、これからは体を休める時間を作っていこう。
 どこかで生きるペースを見直さなくちゃね。


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カレーマフィンセラピー

2020年10月11日 20時24分41秒 | エッセイ
 新聞の料理記事をよく見ている。
「あ、これ、いいじゃん。今度作ってみよう」
 気に入った記事は切り抜き、休みの日にトライするのが楽しい。今回は「カレーマフィン」にした。
「えーと、バターを室温に戻し、よく練って砂糖を加えるってか」
 泡立て器が頭に浮かんだ。カチャカチャと動かし、クリーム状になったら、砂糖とカレー粉を入れてさらに混ぜる。
「これに溶き卵を少しずつ加えるのね」
 ところが、これが難儀であった。バターと卵が混ざらず、分離してしまう。お互い素知らぬ顔をして、無言ですれ違う都会人のようだ。水と油なんだから仕方ないよと思いつつ、「何かが間違っている」と感じた。
「ひょっとして、手でこねるのかもしれない……」
 そういえば、レシピのどこにも「泡立て器」なんて書いてないじゃないか。思い込みは怖い。
 泡立て器のかわりに手を使ったら、バターと卵は仲良しになった。
「前から話しかけようとは思っていたんですけど、なかなかね」
「いやあ、こちらこそ、勇気が出なくて失礼しました」
 と言い合っているかのように、一つにまとまってくる。よしよし。
 これに、ふるいにかけた薄力粉とベーキングパウダー、パセリを加え、生地が完成する。
 あとは、生地をマフィン型に分けて入れ、190度のオーブンで15分焼くだけ。
「ところで、型にはどのくらいの量を入れればいいんだろう?」
 膨らむことを考えると、7分目あたりでよいのかもしれないが、これは勘でやるしかない。うちは3人家族なので、6個のカップに分けてみた。



「何か少ないかも……」
 焼く前はそう思ったのだが、餅のようにプクゥ~ッと膨らんでくるのは計算外だった。
「うわあ、はみ出しちゃう」
 心配しつつ、15分後に焼き上がったのがこれである。



「いい匂い。さあさ、お皿に移して、コーヒーをいれようっと」



 焼きたてはフワフワで、いくつでも食べられそうだ。



 砂糖はほんの少しだから甘くない。湯気とともにカレーの香りが漂い、バターの塩気と多少の辛味だけで食が進む。あっという間に食べ終えた。残念ながら、コーヒーには合わない。次回は冷たいカフェオレにしてみよう。
「満足、満足。次は倍量にして、肉料理も用意して、ランチのパン代わりでもいいな」
 バターと卵が仲良くなったあとに、薄力粉などを混ぜたとき、生地の手触りが実に心地よかった。ふるった粉は絹目のようになめらかで、卵の水気を吸って、手にしっとりまとわりついてくる。二次発酵させたパン生地には負けるが、いつまでも触れていたくなるような気持ちになる。ネコが体を舐めるときも、こんな感触なのかもしれない。
 いい気分で作り、美味しく食べる。
 これぞ、カレーマフィンセラピー?


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キーはキーでも

2020年10月04日 20時36分16秒 | エッセイ
 ピアノを習い始めたのは小学3年生だったろうか。リズミカルに鍵盤を叩き、美麗な曲を奏でるピアニストのようになりたくて、母に頼み、家から歩いて5分ほどの教室に通うことになった。
「じゃあ、最初はこの本からね」
 基礎練習ばかりでも、最初は楽しい。キーが指に吸いついてきて、弱く押せば小さな音が、強く押せば大きな音が出る。60分のレッスンがあっという間に終わった。
「また来週の4時に来てください」
「はい」
 問題はこの後である。レッスンは好きだったけれど、家ではろくに練習しなかった。怠け者というより、どのくらい練習するのが普通なのか、わからなかったのだ。30分から1時間は練習したが、毎日ではない。つっかかるところがあっても、飽きたらやめて他のことを始めた。これで上達したら、世の中はピアニストだらけになるだろう。
 星一徹(ほしいってつ)をご存じか。昭和生まれであれば、たいていの方には通じると思う。平成生まれの方には、かつて『巨人の星』という漫画があり、そこに登場するスパルタ親父が星一徹であることをお知らせしたい。もし、私の父が星一徹だったら、ピアニスト養成ギプスなるものを作り出し、過酷な練習を課したに違いない。
 残念ながら、父も母も娘に大きな期待をしていなかったから、何ら干渉されることもなく、短時間で完結するプチ練習が身についてしまった。次第に、ピアノの先生の態度も変わってきたことを思い出す。
「今日はこのページを弾きましょう。こういう風にやります」
 先生がお手本を見せて、私もそれにならう。
「じゃあ、しばらく練習していてください」
 先生はやり方だけ教えて、部屋からいなくなった。同じようなことが何回もあった。今にして思えば、キッチンで夕食の準備をしていたのではないか。ほとんど練習せずに来る生徒には、教える側もやる気にならなかったようだ。
 発表会には2回出たけれど、結局、3年ほどでピアノをやめた。今でも、ジョージ・ウィンストンの「カラーズ/ダンス」などを聴くと、「自分で弾いてみたい」と思うのだから、身の程知らずとしか言いようがない。ピアノは聴くだけにしておこう。


(某美術館で撮影した、スタインウェイ社製の年代物ピアノ)

 他方で、私向きのキーもある。パソコンのキーボードだ。ピアノの練習が奏功したのか、そろばんの経験が生きているのか、入力は速い。キーを見ずに、10本の指を駆使したタッチメソッドで、バカバカ打つことができる。
「うわ、速ッ」
 職場では、こう言われることも多い。
 たくさんエッセイを書いているから、いい練習ができて、速くなったのかも?


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