これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

別れのシーズン

2021年03月28日 20時36分45秒 | エッセイ
 4月から校長と事務の男性が異動することになった。
「コロナ禍で食事会もできないから、記念品を贈るだけにしましょうか」
 関わりの深い職員と相談し、準備を進めた。
「あら、きれいなビアグラス。これにしよう」
 さほど負担にならない額のプレゼントが見つかりホッとした。



 でも、メインはこれではない。
 自分が異動したときは、記念品よりも寄せ書きの方が嬉しかったので、メッセージも準備しなくては。
 目指すは100円ショップ。
「えーと、小さな色紙があるといいんだけど」
 あったあった、二つ折り色紙が。
 真っ白なものはシンプル過ぎて面白味に欠ける。
 男性でありながら、女子力ナンバーワンの事務職員にはピンクの色紙を、



 イチゴやハートの似合わない校長には、青が基調の色紙を選んだ。



「校長にトイストーリー? もっと他になかったの?」
 家族からは冷たい反応が返ってきたが、もう手遅れだ。ドンマ~イ!
 中はこんな感じになっている。



 職員に配るのは、丸く切ったメモ用紙、これにメッセージを書いてもらい、色紙に貼っていく。





 書いてもらえるか不安だったが、期限までにちゃんと集まった。すごい! チームワークのよさに感謝感激する。
 どの人も、自分なりの想いを言葉にして、新たな職場に向かう人への励ましを伝えていた。自分がもらうわけでもないのに、見ていると「私も頑張らなきゃ」と勇気づけられるから不思議だ。
 当人たちに渡すのは、25日の修了式とした。31日までは出勤するけれど、セレモニーの日がふさわしいという気がする。
「ありがとうございます」
「うれしいです」
 喜ぶ二人の姿を目にして、「職場への貢献に対する感謝」を表現できてよかったと胸をなで下ろした。
 一方で、できなかった仕事がたまっていく。色紙作りに時間をかけたからなぁ……。
「ひ~、あれもこれも、期限が迫っているよ」
 悲鳴をあげつつ、送る側の役目を終えたことに安堵もしている。
 4月から新天地で働くことになる皆さん。
 きっと、いいことが待っています。



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開かずのキャビネット

2021年03月21日 20時30分57秒 | エッセイ
 私の勤務校では、生徒の個人情報や試験問題などをカギのかかるキャビネットに保管している。人目に触れる場所に出しっ放し、というわけにはいかないからだ。
「調査書の確認お願いします」
「転入学試験の問題ができました」
 担当者は教務部に声をかけたあと、キャビネットに文書を入れて施錠する決まりになっている。



 ところが、先日、このキャビネットがトラブった。
「あれ? カギが開かない」
「どれどれ。あ、空回りしていますね。まずいな」
 メーカーに問い合わせ、修理に来てもらったところ、カギを開閉する支柱が折れているという。長期にわたって使っているから、劣化したのだろう。中の文書を出すには壊す以外にないらしく、困り顔の教務部主任が主事さんに相談をしていた。
「チェーンソーで上部を切ってもらえませんか」
「わかりました。火花が出るから、ここじゃまずいな」
「じゃあ、非常口から外に出しましょう」
「うわあ、結構重い。こりゃあ、4~5人必要ですね」
 本校には男性の教員が多いので、すぐに必要な人数が集まり、「わっせ、わっせ」と運び出すことができた。
 数分後、無事に調査書や試験問題を取り出し、一件落着となったが、この手のトラブルは怖い。
 もし、転入試験の朝に起きていたら、えらいことだった。「受験生が来たのに、問題が取り出せないぞ!」となり、上を下への大騒ぎだったろう。何もない日でよかったと、ひたすら胸をなで下ろす。
 連鎖反応というわけではないけれど、私のキャビネットも古くて、カギの開け閉めがスムーズではない。ここには、職員の健康診断書や入試のデータなどがしまってあるので、必要なときだけカギを開ける。
 2カ月ぶりに開けようとしたのがいけなかったのだろうか。その日は途中までしかカギが動かず、開錠したときの「カチャン」という音が聞こえなかった。



「あれあれ? 機嫌悪いな、どうしたんだろう」
 逆に回して、カギを元通りにし、再チャレンジ。でも、何度やっても無駄だった。
「もしや、私までチェーンソーのお世話に……。それとも、ガラスを割るとか」
 最終的にはそうしないといけない。でも、ひょっとしたら天気のせいかもしれない。その日は久しぶりに雨が降っていたからだ。気温や湿度によって状況が変わる可能性もあろう。急ぎではないので、晴れて乾燥した日に、また挑戦するのがよさそうだ。
「おっ、今日はカラカラ感があるな。ではカギを」
 2日後の晴天の日に、キャビネットを開けようと思い立つ。カギを差し込み、左側にグルッと回すと、先日と同じ場所で引っかかり、その先には動かない。しかし、力ではないのだ。おそらく位置の問題であろう。扉を少し持ち上げたり、左右にずらしたりして、変化をつけたとき、「カチャン」と軽快な音がして、カギが開いた。
「おっけ」
 閉じ込められるリスクが怖くて、マル秘資料を別の棚に移動させた。
 鍵穴にサラダ油を垂らしたら、スムーズに開くようになる、なんてことはないのかな。


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「あすけん」を教育する

2021年03月14日 21時09分40秒 | エッセイ
 ダイエットのため、娘が「あすけん」なるアプリをダウンロードした。
「毎日の食事を記録して、カロリー計算や栄養バランスを表示してくれるんだよ」
 ほう。
 食べ過ぎや栄養の偏りをなくすことによって、体重管理に役立てるものらしい。体重だけではなく、健康維持にも力を発揮しそうだ。
 問題は食事データの取り込みだ。写真を撮り、そこからAIがメニューを判断して、どのような食材が使われたかを分析するわけだが、かなりアバウトだった。
「今日のおやつは抹茶モンブランか。AIにわかるかな」
 あまり期待せずに、娘がスマホをモンブランに向けて画像解析をした。



「やだねえ、ざるうどんだって! はっはっは」
 解析が違っているときは、手入力で修正する。少々手間はかかるけれど、AIに教えておけば、次回は学習するだろう。
 その日の夕飯は、AIにとっては難しかったようで、間違いだらけだった。
 牡蠣の香味焼きが、「チキンソテー(皮付き)」に。
 玉子豆腐が、「カフェオレ(砂糖なし)」と解析され、私も娘もお腹を抱えて笑った。
「焼き茄子はわかるかな」
 娘が料理にカメラを向ける。グリルで茄子を焼いて皮を剥き、そばつゆでいただく料理なのだが、決して美しいとはいえない。見苦しい点はお許しいただきたい。



「きのこ料理だって~!」
「あははは」
 うーむ、ヘタがないと、茄子とはわからないか……。
 正しいメニューに修正し、一日の食事を点数化してみる。
「83点!」
「まあまあだね」
 たびたび同じ料理を作るのだから、一度おぼえてしまえば入力の手間が省けるはず。AIをどんどん教育していこう。
 今日のランチはビーフシチューにした。AIは「インドカレー(ナンなし)」と表示したので、これまた修正。
 クロワッサンは「フランスパン」。しいたけのキッシュは「卵焼き」。ピンクグレープフルーツは「バレンシアオレンジ」。
 すべてが微妙にズレている……。
 しかも、鉄不足で脂質過剰の60点と評価された。
「うわ、60点! くやし~」
 思うような結果は出なかったけれど、健康に関心を持つのはいいことだ。
 次の土日は90点を目指します。


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初Zoom

2021年03月07日 21時36分30秒 | エッセイ
 毎年、3月に昔の仲間と会って宴会をしていたが、さすがに昨年は中止だった。今年は緊急事態宣言のさなかとなってしまい、まず無理だろうと思っていたら、いつも幹事を引き受けてくれる遥香さんが「オンラインで会いませんか」と企画してくれた。
 オンライン会議で利用するのはスカイプだ。でも遥香さんのおススメはZoom。やったことはないけれど、これを機におぼえようと気合いを入れた。
「パソコンにカメラがついていないのなら、スマホかタブレットがいいと思います」
 遥香さんにアドバイスをいただきながら準備をする。今回はスマホを使うことにして、Zoomをダウンロード。ホーム画面で存在が確認できると、ちょっぴり安心した。



 オンライン宴会の開始は21時。いつもなら化粧を落とす時間だが、この日ばかりはそうもいかない。
「ミーティングに参加」ボタンを押してから大事なことに気がついた。服が部屋着のままではないか。いかにも「ダラダラしていました」という感じの、丸首のトレーナーであることに青ざめる。手遅れだからいっか~と諦めて画面を覗くと、都合よく首から上しか映っていない。
 なーんだ、これでよかったんだと笑みがもれた。
「お久しぶりです」
 遥香さんの姿が見えたときは感動した。今は親御さんの介護で、ご実家と自宅を行き来していると聞いている。距離的にだいぶ離れているのに、この時間は我が家に来てくれたのだ。
「こんばんは」
 画面が切り替わり、菜穂さんが映った。マイクに反応して画面が切り替わるのだろうか。終始笑顔で、よくしゃべり、次々に話題を提供してくれた。
「笹木さん、この前は失礼しました」
 お次は、落ち着いた雰囲気の藍子さん。すでに退職されているので、長期の休みに入った職員の代わりに授業をしてもらえないかと頼んだことがあった。結局、実現しなかったため、お詫びから会話が始まったのだけれど、私自身は言われるまで忘れていた。
 もう一人、画面と音声がつながらず、チャットで参加してきた梨花さんもいた。私以外の4人はみんなパソコンだったらしく、チャットも会話も両方楽しんでいたが、スマホでチャット? どうやるの? 私はついつい尻ごみをした。
 他のメンバー同士のやりとりは見ているだけで面白い。誰と誰が何して、私はこんな、と近況報告が続く。昔と変わらぬ表情に、途切れない笑い声。まるで動画のようで、画面に見入ってしまった。
「笹木さん、今の職場はお近くなんですか」
 菜穂さんが話しかけてきた。私が視聴者になっていると察したのだろう。いかんいかん、私も参加しないと。でも、話すタイミングがスムーズにいかない。誰かとかぶってしまったり、空白の時間ができてしまったりで、ある程度の経験が必要と感じた。
 楽しい時間はあっという間に過ぎる。おそらく、誰もが「話し足りない」と思っていたけれど、1時間以上経ったところでお開きとなった。
「次は来年といわず、夏にしましょうか」
「いいですね」
「ぜひ」
 退出ボタンを押したところで、現実に戻る。画面にはもう誰もいない。つかの間の、ほんのつかの間の、夢のようなひとときだった。
 スマホのバッテリーを確認すると、100%だったはずが45%に減っている。
「うーん、結構がんばったな」
 パソコンだけでなくスマホも古いので、Zoom用のものがあると便利かもしれない。
 これはハマる予感がする……。


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