これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

写経用紙難民

2022年11月27日 21時43分51秒 | エッセイ
 11月、久しぶりに写経を再開している。
「あっ、もう用紙がないや。買ってこないと」
 最後に写経用紙を買ったのはいつだろう。2019年の春だったのではないか。その後、職場を異動したため、秩父の霊場巡りをしなくなり、20枚近く余らせたままだった。
 勤務校には、10月から病気になり、休みをとっている職員がいる。すでに1カ月が過ぎたが、ほとんど回復しておらず、復帰のめどが立っていない。彼が早く元気になり、戻って来られるために、何かできることはないかと考えていた。
「そうだ、写経」
 我ながら、いいアイデアだと思った。たまっていた写経用紙は減るし、病気の職員が完治するよう願うこともできる。あわただしい毎日でも自分に向き合い、心を落ち着ける時間が確保できる。汚い字がキレイになるよう練習もできる。
 昨日、ラストの一枚を書き上げ、スーパーに向かった。写経用紙は、いつも2階の文具売り場で買っているのだ。少し前に商品の入れ替えをしたようで、文具は奥の方に追いやられていた。
「あれ? どこに行ったんだろう」
 以前は履歴書と同じ棚に並んでいた。だが、履歴書が4種類ぐらいに増えていて、写経用紙は影も形もなくなっていた。売り切れなのか、扱いをやめたのかはわからなかったが、買えないことに違いはない。
「しょうがないなぁ」
 あきらめて代わりのものを探す。半紙はどうだろう。でもちょっと、サイズが小さくない? もっと長くないと、書ききれないんじゃないかしら。
 半紙の隣の、書き初め用紙に目がとまる。幅などはかなりイメージに近い。
「これを半分に切ると、ちょうどいいような気がする」
 直感で即買いした。
 なが~い書き初め用紙はこれ。



 写経のお手本はこれ。



 半分に切った書き初め用紙を重ねると……ほうら、いい線いってる!



 一気に2枚書き上げた。時間はさほど短縮できないが、誤字が減る効果は期待できそうだ。問題は、書き初め用紙が年間を通じて売られているか、わからないことだろうか。
「年の瀬が近いから置いてあるだけで、季節商品じゃないの?」
 ということは、また写経用紙難民になってしまうかもしれない。
 そういえば、職場の近くに蔦屋書店があった。1階には文具コーナーがあるようなので、仕事帰りに寄るのもいいだろう。その辺の店では買えないような、洒落たノートやボールペンには目もくれず、「写経用紙ありますか」なんて聞いちゃったりして!
 ひとまず、書き初め用紙20枚入り、2つに切って40枚を書き上げてからね。

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昔の知り合い

2022年11月20日 22時15分46秒 | エッセイ
 ときどき、近隣の中学校から「高校の体験授業をしに来てほしい」と頼まれることがある。可能な限り引き受け、中高の交流を図るのだが、その日は波乱があった。
「笹木先生、ちょっといいですか」
 声を掛けられ、顔を上げると、若手のホープ・高田先生が困惑顔で立っていた。
「何かありました?」
「はい。明後日の○○中の体験授業なんですけど」
「ああ、午後の」
「自分が行くことになっているんですが、先ほど、叔父が亡くなりまして」
「えっ」
「葬儀とかぶっちゃいました。どうしましょう」
「なーんだ、じゃあ私が行きますよ。葬儀を優先してください」
「いいですか。助かります」
 高田先生はホッとした表情で頭を下げた。
「何時にどこに行けばいいのかしら」
「ちょっと待ってください」
 彼は自分の机に戻り、中学校からの依頼文を持ってきた。なるほど、13:10までに来いってか。30分ぐらいで行かれる場所だから近くていいやと思ったが、差出人の名を見て凍り付いた。
「なに、校長 杉本孝輔(仮名)って。もしや、アイツでは……」
 さかのぼること30ウン年。まだ私が大学生だった頃、教職課程で顔を合わせるイヤな奴がいた。偉そうに上からものを言うと思えば、くだらないダジャレを飛ばして一人で笑い、常にすべっている男であった。もちろん彼女はいない。
「同じ名前ってことは、奴なのかしら。まさかねぇ」
 そのまさかであった。高田先生が先方に電話を掛け、別の教員が伺うと連絡したところ、どういうわけか杉本校長に私の名前が伝わり、「大学時代の知り合いです」と驚いていたという。
「仰天したのはこっちの方よ。変なの引き受けちゃったな、バカバカ」
 だいぶ後悔したが、高田先生のためだ。気持ちを切り替えて頑張ろうと決めた。
「やあ、久しぶりですね! 今日はよろしくお願いします」
 30ウン年ぶりに会った杉本さんは髪が薄くなり、年齢以上に老けて見えたが、学生時代の面影は残っていた。きっと、あちらも同じように「オバさんになったな」と思ったことだろう。
「ホント、久しぶりですね。お元気そうで何よりです」
 まずは無難に挨拶を交わす。さすがに学生時代とは異なり、お互いに大人のやりとりができた。
「まだ時間があるからコーヒーをいれますよ」
「いえいえ、お気遣いなく」
「すぐですから。あちっ!」
 落ち着きのない様子は相変わらずだが、精一杯もてなそうとする姿が新鮮だった。社会の波にもまれ、人づきあいがうまくなったのだろう。
「ああ、美味しい」
「よかった!」
 コーヒーをいただきながら、高校のことをあれこれ聞かれる。生徒の進学先になるのだから当然か。話しが途切れたところで、杉本さんは上目遣いにボソッと言った。
「あんまり、昔の話はしないでね」
「あははははは」
 そうか、これが言いたかったのかと納得した。彼は校長なのだから、こちらも心得ている。株を下げるようなことを言うつもりは毛頭なかった。
 時間が来て、体育館で生徒に授業をする。どの生徒もワークシートにメモを取り、熱心に聞いてくれた。杉本校長もウンウンと頷きながら参加していた。学生時代にはまったく予想もしていない光景であった。
「ありがとうございました。またコーヒーをいれますよ」
 終了後、再び校長室に戻った。担当の教員も挨拶に来てくれて、満足している様子に安堵した。
「荷物になっちゃうけど、よかったら召し上がってください」
 杉本さんが小さな包みを差し出した。わざわざ用意してくれたのだ。
 辞去してしみじみと思う。
「大人になるってすごい……」
 30ウン年の歳月とともに、あの杉本さんが、礼儀正しい紳士に成長していたことに感動した。包みの中には地元の和菓子が入っていたが、地域がバレてしまうので、こちらの画像に置き換えたい。



 どうなるかと思ったけれど、行ってよかった。

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鈴鹿愛(2)

2022年11月13日 20時07分44秒 | エッセイ
 鈴鹿訪問の際、先方からいただいた和菓子がこれである。



「丸川菓子舗の鈴鹿抹茶饅頭です。どうぞ」
 もちろん遠慮なんぞするはずがない。がっついているとバレぬよう、はやる心を抑えて、品よく見えるよう饅頭に手を伸ばした。
「こっこれは!」
 ほどよいふんわり感と適度なモチモチ感が同居した生地の奥には、香り豊かな抹茶餡が待っている。たったひと口で、舌先に甘味と苦味のバランスの取れた香ばしさが広がった。
「うわあ、すごく美味しい~!」
「はい。まあまあ人気です」
 まあまあどころか相当な人気に違いない。すぐ売り切れてしまうようなので、帰る頃には残っていないと予想し、おみやげにはできなかった。
 代わりに買ったのがこちら。
 鈴鹿抹茶ラングドシャと




 
 鈴鹿抹茶のリーフパイ。





 どちらにも抹茶がたっぷり使われており、饅頭に近い香りがした。鈴鹿の抹茶はグレードが高い。
 リーフパイの箱には、鈴鹿抹茶の購入先が書かれた紙が入っていて、「こっちだよ」と手招きされた気がした。



「よお~し」
 早速QRコードを読み込み、鈴鹿山麓うまいもん館にアクセスする。でも、1個だけ買うのってどうなの? と疑問も生まれてきた。
「じゃあじゃあ、茶道部にプレゼントするのはどうよ」
 そういえば、担当教員からお点前の抹茶が足りないと嘆きの声を聞いたではないか。1個はうちに、2個は茶道部にと考え、3個注文した。部員の生徒たちにもこの美味しさを味わってもらいたい。



 届いた抹茶でラテをいれる。
 先月末から教員が一人、病気で休んでいる。代わりの先生を手配する作業に追われて、帰宅後も寝るまで仕事をしていた。
 嵐のような一週間を振り返り、ホッとひと息つく。



 抹茶に含まれるテアニンには、リラックス効果があり、安眠できる成分も含まれているのだとか。抹茶パワーをあらためて実感した。
 ぐっすり眠って、明日からまた頑張ろう。

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鈴鹿愛(1)

2022年11月06日 21時45分34秒 | エッセイ
 三重県まで出かけた話の続編です。
(関連記事「2022誕生日 プレゼントは仕事でした」はこちらから)

 今回、出張の本来の目的は、伊勢ではなく鈴鹿にあった。



 伊勢鉄道「鈴鹿」駅。快速みえは気動車で乗り心地がよい。



 ほら、「キハ」って書いてあるでしょ?



 まずは鈴鹿市役所へ。



 鈴鹿茶をいただき、テンションが上がった。販売者はJA鈴鹿となっている。鈴鹿はサーキットが有名だが、お茶の産地でもあるらしい。



 話すこと小一時間。用事が終わり、勧められた展望室へ向かう。
「おおっ、街が一望できるじゃないっ」
「ホントだ、すごい!」
 3人の職員と窓に貼りつき、しばし鈴鹿の景色を楽しんだ。







 この階には売店がある。みやげとして、鈴鹿抹茶を使ったラングドシャや、リーフパイを購入した。
「いえいえ、僕は赤福を買って帰らないと」
「アタシも。やっぱり三重といったら赤福ですよね」
 他の3名は何が何でも赤福でないといけないらしく、ここでは何も買わなかった。私は10月2日に赤福を食べているので、むしろ他のみやげにしたかったのだけれども。
 市役所を出て、街中を歩く。
 マンホールにも「すずかし」と書いてある。



 鐘楼もレトロで素敵。



 あちらこちらに歴史が感じられ、まったく飽きない眺めであった。
「そろそろ、お昼にしませんか」
「そうねえ、もうそんな時間かぁ」
 地元の方のおススメで、Moguというお店に入った。「ちょっと量が多いけど、美味しいですよ」と言われていたので、欲張らないようにしようと警戒する。
「は~い、クリームコロッケです。お待たせしました」



 感じのよいウエイターさんが持ってきてくれたのは、けん玉ぐらいのサイズの、大きなコロッケが3個も載ったお皿であった。



「…………」
 思わず言葉を失った。
「あっはっは」
「すごい! デカッ」
 見ていた職員たちはゲラゲラ笑い、私もつられて苦笑いした。結局、自称「フードファイター」の職員がコロッケ1つを引き取ってくれたので、何とか完食できた。自家製とおぼしき濃厚なホワイトソースにキノコが絡み、口当たりのよいコロッケであった。
 ふー。
「おかわりくださーい」
 耳を疑う言葉を聞いた。向かい合わせに座ったフードファイターの彼が、空の茶碗を手にして、ウエイターさんを呼ぶではないか。
「さっきと同じくらいでいいですか」
「はい」
 人は見かけによらない。この彼は非常にインテリなので、大食いのイメージとは真逆である。一緒に鈴鹿に来なければ、ずっと知らないままだったろう。
 同行した職員に、もう一人男性がいた。ウエイターさんは、フードファイターの隣のこの若手を見て「おかわりはどうですか」と声をかけてきた。
「えっえっ、僕はいいです……」
「そんな~。食べて下さいよ」
「えっえっ、じゃ、じゃあ……」
 つき合いがいいというか、断り切れないというか、結局男性陣は大量の料理に加えて、2杯のご飯を平らげたのであった。
 スゴッ!
「たくさん食べるときは、リズムが大事なんですよ」とフードファイターの解説が入る。
 そういうもんかぁ~。
 お腹がズシッと重くなり、よろよろしながら店を出た。外には順番待ちの人たちが並んでいたので、結構な人気店のようだ。
 楽しい鈴鹿のエピソードはまだ終わらない。
 続きは来週~。

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