角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

人はひとりでは…。

2008年04月28日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
深緑基調の唐辛子ブリントをベースに、合わせは同系の深緑です。ベース生地は五足分しかありませんでしたから、うちの四足をこの配色で編みました。それが編み終わるとことごとく予約が入り、結局「今日の草履」でご紹介する今日現在、すでにひとつもありません。
「緑好き」、おそるべしですなぁ。

ゴールデンウィーク三日目の角館、天候の不安定に加え気温が低いです。今日も実演席前のストーブはフル稼働、散策のお客様も『あぁ~、火が恋しい…』。
それでも依然として桜目当てのお客様が後を絶ちません。『調べてくれば良かったぁ』とおっしゃる方や、『去年で的を絞ったのよねぇ』なんていうお客様もいます。確かにその選択は間違っていませんよ、ちょうど一年前のブログでは「いよいよ見頃…」とありますからねぇ。

朝一番にお越しは、東京からひとり旅を愉しんでおられるおばさま。ウォーキングがご趣味で、新幹線で青森まで行き、そのあとは気ままに電車とウォーキングで南下していらしたとのこと。いかにもお元気そうなおばさま、『私の分と、そうねぇ、息子の分も買ってあげようかしらっ』と二足お買い上げです。

最近まで建築関係の仕事をされていたおばさまは、思うところがあって廃業を決意したんだそうです。その「思うところ…」というのは、二年前に56歳で先立たれたご主人とおっしゃいます。ご主人を亡くしたショックに負けまいと働きながらも、やがて『そろそろいいかな』と思い始めたとのこと。
今では『楽しく生きなきゃと思ってねっ』と心が晴れ、好きなウォーキングで行きたいところへ出かけているんだそうです。

おばさまをここまで元気にさせた理由までは分かりませんが、おそらくそういう気持ちにさせる手伝いをした「人」がいるような気がします。息子さんがお父上の他界を機に実家へ戻られた話を聞くと、そのひとりは息子さんなのかも知れません。
いずれにしても、人はひとりでは生きられないのでしょう。

京都市からお越しのおばさまふたり旅、『角館が小京都っていうから来たくてねぇ』。桜は遅かったですが、それなりには楽しんでいただけたようです。それぞれに草履もお買い上げくださり、『エエもんに出逢って良かったわぁ』。

ふたつの分身(似顔絵)を見つけたひとりのおばさま、『まぁ、よお描けてるぅ』。簡単にこの似顔絵をご説明し、『私の宝物なんですよっ』と言うと、『うん、エエ話やっ、人はひとりでは生きられんからなぁ』。
お帰り際のお言葉は『お励みなさいなっ!』、しかと心に刻みました。

埼玉県さいたま市からお越しのお若いご夫婦。昨日一度お見えになり、『ホームページを見て来ましたぁ』。角館を旅するに当たってネットで調べたところ、私のホームページと巡り会ったそうです。『明日帰る前にまた寄りますぅ』とおっしゃり、今日の夕方再度お越しくださいました。
ご夫婦共にお気に入りを見つけてくださったほかに、それぞれのご両親へプレゼント用をオーダーくださいました。
ご主人のご両親は間もなく結婚記念日を迎えられるとのこと、息子さん夫婦からの結婚記念日プレゼント、さぞお喜びになることでしょう。

こちらのお若いご夫婦は、一見して優しい人柄が分かりました。推測ですが、今を生きる自分たちが誰のおかげで成長したのかを理解しているんでしょう。親への感謝はもちろん、ご夫婦お互いがそれぞれに感謝している気がします。
お帰り際の堅い握手で、私も少し見習いたいと思いましたよ。またきっと遊びに来てくださいねっ!

連日多くのお客様とのおしゃべりが続いています。少々の疲れは否めませんが、桜はなくとも充実感のあるゴールデンウィークです。

コメント
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