ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 




銀座東邦生命ビル。中央区銀座3-3。1986(昭和61)年5月11日

第一徴兵保険(戦後の東邦生命)という会社が本社として建てたビルである。設計:徳永庸、施工:清水組、竣工:1931(昭和6)年8月(着工は1930年1月)。当時の名称は「銀座ビルヂング」。マロニエ通り(古くは「大倉通り」といったらしい)に向いた正面にコリント式オーダーを並べた本格的な古典様式のビルだ。
設計者の徳永庸は、ぼくは初めて聞く名前だ。早稲田大学建築科の出身らしい。JR神田駅近くの山梨中央銀行東京支店の建物が徳永の設計である。
2003年に解体されて、2005(平成17)年3月に「ZOE銀座」というガラス張りのレストランと婦人服のビルが開業した。銀座の格式を利用して金を持つ女性を呼び込もうというわけで、金のないおじさんなどは来なくてもいいのである。それは仕方ないとしても、東邦生命ビルのような建物の消失は、長期的には銀座の格を引き下げることにならないだろうか。


左:1986(昭和61)年1月19日、右:1988(昭和63)年3月6日

『震災復興〈大銀座〉の街並みから』(銀座文化史学会編、1995年)という本は清水組が手がけた銀座の建物の竣工時の写真を集めたものである。そこに銀座東邦生命ビルの屋内の写真もあって、どんな部屋があったかが分かる。
1階に営業室、5階に蓬莱生命(第一徴兵保険の姉妹会社)営業室、7階に社長室や社長応接室、8階に250人収容の集合室、地下1階に小ホールと大食堂と役員用の中食堂、地下2階に倉庫と荷造り場と更衣室、となっている。

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コメント
 
 
 
エントランスホール (山田 勇)
2013-03-24 22:27:32
ビルのテナントであります銀行の副支店長として一年余(1994~5年)をこのビルの中で過ごしました。エントランスには小ホールがあり中世の良き世を彷彿とさせる佇まいがありました。石段から古風なガラス扉を開ける度に心が踊ったのを思い出します。山田 勇
 
 
 
>山田勇様 (流一)
2013-03-25 10:56:14
昭和の初期にこういう本格的で贅沢な建物が建てられているのが不思議ですね。どこにそんな金があったのだろう、と思ってしまいますが、70年も使えば元が取れるのでしょうか。
山田さんがこのビルにお勤めしたのは「バブル崩壊期」のようですが、忙しい業務も、昭和初期の本建築に入ってしまえば、しばし忘れることができたのかと想像します。
 
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