ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 



喜久屋ビル。中央区新富2-4。1987(昭和62)年5月3日(3枚とも)

平成通りの新富町郵便局交差点の角にあったビルで、ぼくは新富町といえばまずこのビルを思い浮かべた。ランドマークである。1階の玄関と窓につけられた赤い日除けが、なんとなくレストランかホテルのようにも見えた。
『総覧』では「全国石油会館、建築年=昭和7年?、構造=RC5、全国石油連盟所有」とあるが、現在は回効散という鎮痛薬を売り出していた森田製薬の本社ビルとして建てられ、1928(昭和3)年の竣工、施工は竹田組(現・竹田土地建物)と判っている。それに気がついたのが回効散本舗(森田製薬所)の創業者のお孫さんである。その森田氏は『ヒーリングタイム』というブログに書いておられるが、森田家に伝わる「回効散ビル」の竣工式の写真とネットで見られる喜久屋ビルとが同じであることに気がついたのが始まりである。ビルが取り壊される前で、森田氏にとっても幸運だったろう。その後の調査の結果は『Web新富座』の第95回から103回までにまとめられている。


ビルの施工者である竹田組は新富町の有力企業だった、と『Web新富座』にある。壁面のツートンカラーを目にすると、竹田組は建物にカラーリングをほどこすのが好きだったのではないかという妄想におちいる。竹田組の施工と判っているのは新富橋際にあった竹田組のビル(竹田ビル)だけなのだが、こちらはモルタルの地肌のほうが勝っていた建物だった。それでも窓を縁取っていた茶色のタイルや壁面のタイルの飾りがあった。竹田組は他にも新富町周辺にいくつも建物を建てていると思われる。そして新富町に特有なきれいな壁面の商店建築が思い浮かぶのである。今はそのほとんどが建て替わっている。

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コメント
 
 
 
ありがとうございます (ヒーリングタイム)
2010-12-25 05:09:39
コメント、リンク、ありがとうございます。
実は、こちらのブログは、以前、拝見させていただき、私の、お気に入り登録もしております。
貴重なお写真、ありがとうございます。
「旧回効散ビル(喜久屋ビル)」については、ご存知かもしれませんが、ファサードの一部などを「積水ハウス」様のご好意で、渋谷区松涛の高級マンション「グランメゾン松濤」の中庭や1階壁麺に飾っていただけました。
ただ、その後、変えられてしまったかも知れません。
街路灯やタイルの一部などは、私も、いただきました。
壊されてから、3年。跡地には、普通のビルが建てられ、ちょっと残念な思いです。 
それでも、この建物に関しては、最低限の記録保存等は、出来ました。
なにも、残らないよりは、祖父の供養になったと思っております。
これからも、よろしく、お願い致します。
ありがとうございました。
 
 
 
>ヒーリングタイム様 (流一)
2010-12-25 17:27:53
以前から当ブログをご覧頂いていたとは! どうもありがとうございます。
貴兄の発見がなしにこのビルが取り壊されていたら、なんの記録も残らずに消えてしまったかもしれません。地元の年配者には回効散のビルとして知られてはいたようですが、そんな記憶もいつのまにか消失していくでしょうし。
跡地に建ったビルは確かに普通すぎますね。そのうちまた建て替わりそうな感じも……
 
 
 
回効散ビル (pulin)
2011-05-27 04:27:02
こんにちは。

今また昔の建物の写真の整理をしているので貴サイトが大変参考になります。
この建物のことも詳しく分りました。

そして、昔の場所をさぐったり現状を確認するのにはGoogleのストリートビューが非常に強力な道具になりますね。
 
 
 
>pulin様 (流一)
2011-05-27 20:29:43
『御光堂世界』の喜久屋ビルと竹田ビルの写真を拝見しました。素晴しい写真ですね。ビル上部がすぼまらずに垂直になっているのは特別なカメラを使用しているのでしょうか?
私のブログの文章はネットや書籍からの引用はそのむね断っていますが、そうでないものは憶測や空想も含まれます。自己責任で読んでくださいね。
ストリートビューは私も現状確認のためよく見ています。たまに撮った写真の場所を探すのにも。
 
 
 
Unknown (pulin)
2011-05-28 06:00:03
わたしが、回効散ビルを撮った時に使ったのはPC(パースペクティブコントロール)レンズ・シフトレンズなどと呼ばれる、蛇腹式カメラのようにレンズを平行移動させて「あおり」撮影ができるレンズです。
これにより細長い建物でも垂直を保ったまま写せます(限度はありますが)。
現在のデジタル一眼用にもNikonやCanonから同種のレンズが発売されていますが、デジタル対応で複雑化したのかかなり高価になってしまいました。
昔の銀塩一眼の交換レンズではわりと手ごろに買えたのですが。
 
 
 
お久しぶりです (ヒーリングタイム)
2018-02-01 10:09:22
回効散本舗創業者の孫です。
今回、創業者の祖父「森田米治」の事を「ウィキペディア」に書いてみました。
ご高覧いただけば幸甚です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E7%94%B0%E7%B1%B3%E6%B2%BB
 
 
 
>ヒーリングタイム様 (流一)
2018-02-02 10:38:15
ウィキペディアへのアップ、おめでとうございます。
読む方はすらすらと読んでしまいますが、書式通りにまとめるのは面倒な作業だったのではないでしょうか。
個人で新薬を開発できる時代ではなくなったのでは、森田製薬の廃業も致し方なかったということだと思います。
 
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