ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 




東京銀行協会。千代田区丸の内1-3。1986(昭和61)年1月

1916(大正5)年に、横河工務所の設計・施工で竣工した煉瓦造2階建ての洋館である。設計は横河工務所のチーフ・デザイナー松井貴太郎が担当した。当初の名称は「東京銀行集会所」で、『 全国銀行協会』によれば、1916年9月25日が落成式。また、1945(昭和20)年9月25日に「社団法人東京銀行協会(東銀協)設立」である。
『建築探偵術入門』(文春文庫、1986年、480円)の構造の解説では、「主体構造は確かに赤煉瓦ではあるが、・・・壁には縦横に鉄筋が入れられ、さらに鉄筋コンクリートの帯をまわしてコンクリートの床を支えるなど、耐震、耐火に対する周到な配慮」をしているという。
外観の特徴を『近代建築ガイドブック[関東編]』(鹿島出版会、昭和57年、2300円)から引用すると、「濃いあずき色の施釉煉瓦と御影石のにぎやかな配色といい、鋳鉄製の車寄せといい、充実した細部意匠を誇っている。明治期のような過剰な装飾や威圧感がなく、よく抑制された全体としてしゃれた細部の組合せは、やはり大正期ならではの上品さおだやかさをしめしている。見せ場の一つであった内部は改修をうけ、当初のセセッション様式の面影はうすれているが、上品さはあいかわらずである」。なるほど、もしかしたらこの建物は大正ロマンの反映?
『建築探偵術入門』には、「戦後の米軍接収中に火災によって上階を焼失し、昭和32年に復旧工事が行われたものの、当時の面影はやや失われている」という記述がある。接収期間は昭和20年9月から31年7月6日で、わりと長期にわたった。「American Red Cross Club(バンカーズ兵員クラブ)」という名称の米軍将校クラブとして使われたという。



左:1983(昭和58)年11月。右:1986(昭和61)年1月

建て替わった東京銀行協会ビルの「ファサード保存」は評判が悪い。建物をそのまま保存することと比較してしまうからだろうか。一方で、ビルの建替えに最も熱心なのが銀行で、建設費用を貸し付けることで、銀行の経営が成り立っているようなところがある。他人の建物は建替えさせて、この建物は保存するというのも変かもしれない。




上:1983(昭和58)年11月
左:建物の東面
1986(昭和61)年6月1日

東京銀行協会の旧ビルの写真をネットで探してみたが、あまり出てこない。『散歩やせんとて>昭和戦前古建築散歩 東京銀行集会所(2009.09.30)』を見つけた。

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