ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 



出久根達郎の『笑い絵』という小説を紹介する。文春文庫で1998年11月に出ている。742円。単行本は1995年の出版。

二笑亭という建築ファンには知られた建物が登場するので当ブログのテーマにも関連する。「笑い絵+二笑亭」でネット検索したが、両方のキーワードが出てくるサイトはないようだ。文庫の倉本四郎の解説では二笑亭(小説では「可笑亭」)に言及されていて式場隆三郎― 式場病院本館 式場邸―の名前も出ている。ただしなぜか、「参考文献」には『二笑亭綺譚』は載っていない。可笑亭のなかを探検する場面で内部の様子が書かれているが二笑亭とどのくらい一致するのかは知らない。

「笑い絵」とは春画のこと。小説の時代は昭和6~8年で主に東京の本所・深川が舞台である。小学校の教師を首になって紙芝居屋になった男が主人公で、正体不明の富豪に頼まれて春本を書くことになる、というストーリー。ミステリーの範疇に入ると思う。
舞台がぼくには割りと把握しやすい地域なのがうれしい。筋書きとは直接関連するわけではないが、会話などに出てくる事件が当時の世相を映し出して興味を引かれる。黄金バット、煙突男、坂田山心中、大杉栄(小説では大松盛)虐殺事件―8年前の事件だが可笑亭に隠れ住んでいる男が目撃する―、玉ノ井バラバラ死体事件、白木屋デパートの大火。 丸の内ホテルで食事をする場面がある。人形町の ユニオンダンスホールが会話の中で出てくる。
小説は主人公が乗った日満連絡線の新造船うすりい丸が大連に着く前で唐突に終わっている。そんな小説は困ると言われるかもしれないが、読みの足りないぼくが感じただけだ。こういう小説をもっと読みたい。

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