お嫁ちゃんの 婆ちゃんが亡くなった
齢98歳 数えで 99歳=白寿だった
『今年は お祝いだわねぇ』と お正月に
みんなで話したばかりだった
この半年は 施設でお世話になっていたようだ
初めはショートステイだったらしいが
母上が腰を痛めてから 子供たちも同居してないしで
施設のお世話に なることになったとか
車椅子でも ず~っとお元気だったらしいが
この寒さのせいか 風邪から肺炎になって
3日ほど 別病院に入院してたらしいのだが
あっけなく身罷られた
大往生といってもいいくらいである
それを聞いた亭主 お祭りオトコならぬ 葬礼オトコなもんで
「挨拶しに行こう」と言いだした
「え?なんでさ?」
「親戚になったんだから 挨拶はしないと・・」
「はぁ? あちらメインのことで 今はバタバタしてて
挨拶だけに駆けつけても 却ってメイワクなだけなんちゃう?
お通夜には行くんだし 挨拶は電話で済む話でしょ?」
「・・・・・」
あちらに どなたも身内がいないと言うならともかく
ワンサと親戚がいるのに 何を采配振ろうとしている?
でしゃばる気満々じゃないか
しかもあちらまでは 車で小一時間はかかる
それよかムスコの顔をつぶさないよう おとなしく振舞う方が
いいんじゃないの?
その後 ムスコに お式の詳細を聞く時に そんな話をしたら
案の定 電話の向こうで ため息ついてるし。。。
ったく 自分しかない人間はこういう時困るんだよね
自分だけ 恥をかくならいいけれど その被害が こっちまで
及ぶのは ご免蒙りたいもんだ
通夜は 一緒に出かけた
お葬式の一連のセレモニーも ところ変わればいろいろと違う
うちあたりは 葬式組があって 近所5.6軒が
いろんな手伝いをする
そもそも大昔は 土葬だったので 男手が大いに必要だった(墓掘りに)
オンナも 遺族や弔問客への食事の世話などで 包丁やまな板持参で
100人ぐらいの食事を作ったものだった
越してきた当時も 立て続けに2軒もお手伝いするハメになって
その確率の高いことに 驚いたもんだ
えらいとこに 帰ってきたんやな
周り中 葬式予備軍ばっかりやん
以来 何軒お手伝いしたか 歌じゃないが両手でも足りない
今は斎場でするのが当たり前になって 場所によっては
斎場のスタッフが 世話をしてくれる
もっとも その旨を申し出しとかないといけない時もあるが
遺族には申し訳ないが 手伝う方は随分ラクになった
それでも 通夜 告別式の受付は オトコの役目で
オンナは 遺族たちの食事のお給仕とか 式に参列するだけで
済む場合が多いので オトコ共が文句を垂れる
「オンナはヒマ過ぎる なんか させること考えんとな」
元々 男尊女卑な土地柄だから オンナがラクをするのは
許せないらしいが 今までどんなにオンナが大変だったか
思い出せっちゅうの 無礼者め
ところが お嫁ちゃんの実家あたりは 斎場では受け付けも
身内がしていて驚いた
喪主の父上が 受付に座っておられたし 母上も そばにおられた
お嫁ちゃんの弟も そこにいた
後で お嫁ちゃんに聞いたら この辺りはみんなそうらしい
たった一時間しかかからないところなのに 地域性の違いがあって
妙な感心をしてしまった
お通夜だから 席はどこでもいいと言うので お嫁ちゃん共々
親戚縁者が座る席の後ろの方に座った
下の孫が まだ2才前で 寝ぐずりしたりするので
ムスコ夫婦が交代で 抱っこしては席を立つので
みんなのジャマにならないようにと思ったのだ
上の孫は いつになくコーフン気味で おしゃべりも止まらないし
目を離すと広い斎場を 走り回っている
なんせ どっちのジジババが一堂に会するのは 彼にとっては
初めてのこと そこで ヒマなジジィの亭主に 即子守りを言いつけて
孫の制御をさせた
「オボウさんてダレ?」に始まり
「ナニするの?」
「おわったら ごはん食べるの?」
「ジイチャンも食べる?」
「なんで帰るの?」
「どこに帰るの?」
「○○ちゃんちに帰る?」○○ちゃんとは うちのワンコのこと
さすがに亭主は苦笑した
「○○ちゃんちじゃなくて あそこはジイちゃんちなの」
「なんで?」
「なんでって・・・」
エンドレスに続く孫との会話に 疲れ気味の亭主だった
通夜の読経中 孫は亭主の膝の上で ずっと座っておとなしくしていた
一度 隣りに下したら「(前が)見えない」とまた膝に乗って
至極 満足していた
孫にとっては初めてずくめのイベントだったから興味津々だった
しかもその間中 しきりに咳をしていたら 数日後 亭主も咳をし出した
可愛い孫からもらったんだから 仕方ないやね
その帰り道 亭主の母方の出身地あたりを通りかかった
街灯もないイナカ道だが 亭主にっては懐かしいのか
曲がりくねった 先の見えづらい暗い道を スピードも落とさずに
「ここは どこそこ あそこはダレんち」と嬉し気に説明して
爆走するので気が気じゃない
大体知ってるし。。
時たま 行き交う車は きちんとアップライトしてるではないか
もちろん 車がすれ違う前には ダウンしてくれるが
それが 普通の運転だろうが亭主はダウンのまま走る
いくら知った道路だからって アンタの運転技術なんて
ちっとも信用してないんだから 一緒に事故るのは
まっぴらごめんだよ
しばらくは付き合ってやったが 道路の白線しか見えないので
「前照らしてよ(アップライト)」と催促する
それでも亭主は 聞こえないフリ?(隣りで言ってるし)
アップライトにしないで ばく進する
それも地域の説明付きで。。。。
ムカついたので 言い放ってやった
「わかったから 早く照らして」
やっとワタシの剣幕に気づいたのか アップライトし始めた
翌日の告別式は 亭主だけ参列した
ひとりだと またまた調子に乗りかねないので クギを刺しておいた
「仕事中なんだから 終わったらお膳頂かないで帰って来てな」
「・・・・アンタも来れば? よそはみんなそうしてる」
いや ちゃんとムスコたちには了承してもらってるし
第一 仕事日でんがな
イタチの最後っ屁みたいに 文句を垂れるのは不満なのだ
この後は 仕事しないでお食事でも頂きながら
親戚づきあいを密にしようと企んでるのだ
こんな慌ただしい時には 血縁のある親族だけにさせてやんなさいよ
アンタは 自分で気遣うよりも あちらの気遣いを待ってて
いつものように甘えるだけでしょうが
アンタは ムコの父親ってことだけなんだから
一歩も二歩も退いてるのがムスコのためなんだからさ
昼時なのはわかってるから お昼は早めに用意したからさ
さっさと召し上がれ
数日後 気疲れした あちらの母上が体調を崩されて
入院したとムスコから知らせが入った
幸いにも 数日で済むようだったが
やっぱり 亭主を遠のかせてて正解だったわさ
入院のことは まだ亭主の耳には入れていない
亭主も自分の風邪気に集中して 朝餉は要らないと自室に
こもったままなんで 丁度いい
元気だとまたまた『それ!見舞いじゃ』と大騒ぎするからである
ムスコも 母上は人一倍気遣いし過ぎて体調崩すタイプだから
退院後に電話で十分だとのことだった
お悔みも お見舞いも 相手を労わってこそ意味がある
気持ちの押し売りは 百害あって一利なしだ
どうしたら この亭主が そこに気づくのか不明である
ず~~っと 見張ってなきゃいけないんかねぇ ウザっ