DC:ニューフロンティア 上

1950年代。
第2次大戦・太平洋戦争での勝利、そして繁栄を享受するアメリカは
その内側にさまざまな病巣を抱えていました。
冷戦からの、アメリカ国内の「共産主義者」を探し出す目的で行われた
言論・思想弾圧の「赤狩り」、
冷戦の代理戦争となった「朝鮮戦争」、
有色人種への公民権が与えられない時代の人種差別主義者たち「KKK」・・・

一方、アメリカンコミック最初の黄金時代『ゴールデンエイジ』が終わり、
急速に冷え込み始めるアメコミ業界。
多くのヒーロー物コミックが終わり、戦記ものや探偵ものなどの
さまざまなジャンルのコミックがこの50年代には刊行されつつも
その中でフラッシュ、グリーンランタンなどのさまざまなヒーローが
新時代に沿った形でリメイクされていきました。

この作品は、そんな現実の50年代のアメリカと、コミックの刊行年に合わせた
時代設定を結び付けて、アメリカ、そしてコミックの「新時代」の訪れを描く
そんな作品となっております。

どことなく「ウォッチメン」を思い起こさせる作品でありますが
作者のダーウィン・クックは「ビフォア・ウォッチメン」の
今作と時代背景が重なるミニッツメン編を担当しており
マッカーシズム吹き荒れ、常に全面核戦争の危険があり、
内面には多くの問題を抱えながらも表面上は「繁栄」を迎えていたこの時代のゆがみを
政府に従うことしかできないスーパーマン、
政府公認でありながらも政府の思惑とずれ始めるワンダーウーマン、
政府に従わず、自警団活動を続けるバットマン・・・
そして新たなヒーロー、火星からやってきたマンハンター・フロム・マーズや
事故で超能力を身に着けた2代目フラッシュ、
そしてまだ指輪を手に入れていない2代目グリーンランタンことハル・ジョーダンや
「常人ヒーロー」であるチャレンジャー・オブ・ジ・アンノウンたち・・・
そんなキャラクターたちで描く、という物語。

宇宙開発競争、そしてベトナム戦争へと繋がり、
その一方でコミック界も新ヒーローたちの時代、『シルバーエイジ』へ向かう
下巻もいまから楽しみになる1冊です。

DC:ニューフロンティア　上
DC:ニューフロンティア　下