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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「ウール(上)(下)」(著:ヒュー・ハウイー/訳:雨海 弘美)

2014-07-03 22:29:12 | 【書物】1点集中型
 有害物質に汚染された地表を逃れ、地下144階建ての「サイロ」に暮らす人類。サイロの「掟」に背いた者は、僅かな時間しか生き延びることができない防護服を着せられ、サイロから外を見るレンズを磨く「清掃」の刑を科せられ、サイロから追放される――。ちょっとSF風味でありつつ、前時代的でもある不思議な設定に惹かれて借りてみた。

 ジュリエットが全体の主人公と言えるのであろうが、物語の中で彼女が動き出すまでにえらい時間がかかるので(笑)、上巻は話がなかなか本題まで進まないなぁという印象。サイロの社会の全容を語ったところで上巻が終わったというか。しかし、ジュリエットがいよいよ閉鎖された空間から外に出て、それを知ったサイロの「市長代理」バーナードの尋常ではない慌てぶりを見るにつけ、このあとどう展開するのかな? と、期待しつつ下巻に進む。ジュリエットが出会った星探しの青年ルーカスの父親にも秘密がありそうなところが気になる。
 で、その下巻であるが、ジュリエットとサイロ18号がずっと離れた状況で、かつルーカスはひたすら勉強中(笑)なので、話が進まない感は最後まであんまり変わらなかった。いや本当は動いてるんだけど、全体的に一本調子な雰囲気。終わりは予想できた話ではあるけど、ちょっとあっけなかったかな。そして17・18号以外の世界の全体像も、ルーカスの「勉強」を通しての断片的な言葉以外ほとんど見えてこない。だから余計、あっけなさが強調されたという感じかな。

 でも解説見たら実は3部作だそうで! ああ、だからこんなわからないままなんだ~と納得。今作はあくまで序章と思うことにする。全体の世界観、ディストピアものは嫌いじゃないので続編も気にならないわけではないが、もう少し意外性とか勢いがほしいかも。けど、次回作は「ウール」より前の時代の話なんだよね(笑)。
 そんで映画化もされそうな勢いだが、しかもそれがリドリー・スコットの手になりそうだということで、そーなると今まさに(今さら)「NUMBERS」を面白く観ている私としては俄然興味が出てくる。このディテールのわからなさ加減をうまくまとめてより面白くしてくれればいいなぁ。

 それにしても大森望氏の解説って(翻訳もか)わかりやすいな~。すごくありがたい。そういえば解説に出てきてる「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」って、読みたいと思っていながら忘れてしまってた! 読もう! ……と思ったものの、これが「トワイライト」のファン・フィクションだと言われるとそこからさかのぼって読まないとならないのか? ドラマだけでも見ておけばよかったか(笑)。


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