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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「零號琴」(著:飛 浩隆)

2019-10-20 23:41:53 | 【書物】1点集中型
 飛浩隆作品を読むのは2作目。前回(最初)が「象られた力」だったので、タイトルも重厚だし、そういう温度感を想定していた。……んだけど、いかにもアニメっぽいシェリュバンの容姿から入って、これはどういう方向かなーと思いつつ巻末のノートも読んでみると、これは「象られた力」とはだいぶカラーが違うかもという感じに。

 「フリギア」なんて名前からしてそれ以外ないだろうというくらい、あれこれのアニメ作品のパロディ要素が満載らしいのはなんとなくわかる。ただ、観たことのある元ネタは私には少ない。だからといって読めないわけでは全然ないが、そのせいかノリが部分的にラノベ風なのはちょっと微妙だったな。とはいえ世界観はさすがのスケールと独創性で、これは「象られた力」を読んだときと同様の印象。漢字が多いからか、そのぶん逆にファンタジー寄りのSFみたいな雰囲気もあって、その点はしいて言えば、「華竜の宮」のイメージに近いかな(読んだことのあるものの中では)。
 結局この物語世界はどうやって成り立っているものなのかが肝になっているわけだけど、その種明かしが最後の最後で待っている。それこそ世界を根底から覆す「零號琴」そのものだ。なるほどそうきたか、と思わされるそれも、やっぱりこの唯一無二の世界観の賜物。假劇も音楽も戦闘も一つ一つの表現から想像するだに荘厳で華麗で、それこそ映像化(アニメに限りたい)できたら素晴らしいだろうな。

 というわけで、この作品に限って言えばノリ的には若干自分の好みとは合わないところはあったけど。ただ前述の通り、世界観の独創性の高さはきっと飛作品ならではだろうとは思える。「廃園の天使」シリーズがまだ手つかずなので、いずれ一度そっちも読んでみようとは思っている。