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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「無限記憶」(著:ロバート・チャールズ・ウィルスン/訳:茂木 健)

2014-12-15 22:32:42 | 【書物】1点集中型
 「時間封鎖」の続編。「アーチ」の向こうの「新世界」とこちらの世界を行き来することが当たり前になった時代である。そうか、イクウェイトリアって地球のパラレルワールドとかじゃなくて、どこか別の惑星上の場所なんだなと読み始めて今さら気づいた次第(笑)。

 火星のテクノロジーによる延命処置を受けた「第四期」の人々と、彼らとともにいる少年アイザック。父の死に関する疑惑を探るべく彼らと接触することになる女性、リーサ。そして一般に知られている火星人とは違う、きわめて地球人に近い容貌を持つ女性、スリーン。それぞれがそれぞれの思惑を胸に出会い、行動をともにすることになる。
 アイザックが法の目を逃れて密かに暮らす「第四期」たちと暮らしているのには理由がある。火星の技術を究極的に地球人に活かそうとした成果が、彼自身である。生まれながらに仮定体と意思を通じあうことが可能な人間として、彼は「創られた」。そして彼は確かにその能力を持つに至り、仮定体が蓄積する死者の「記憶」を読み取り、時にはまるで彼ら彼女らが生き続けているかのように、その意思を伝えることができる。
 人の記憶は仮定体に記憶され、さらに集積され、蓄積されていく。ある意味、「魂の不滅」に近い状態であるともいえる、それがスリーンの言うように、本当に「第五期」と崇め奉られるようなことがあれば――その先にあるのは、肉体からの脱出をめざす人類の姿かもしれない。と考えると、やっぱりSFって最後はそこに行き着くものなのかなとも思うわけだが、果たして第3部では人類のどんな未来が描かれるのか。

 どうしても3部作の真ん中って、「つなぎ」感が強くなる作品が多いような傾向があるんだけども、この作品もご多分に漏れず……な雰囲気はある。クライマックスに持っていく前だから少し抑え目になってしまうのかな。でもその分、第3部でどういう落としどころを見せてくれるのかが楽しみではある。


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